第一章 三話 「ドライヤー」
「―で、モモとカズくんはああなったと。」
その後、モモの母親に見つかった、カズとモモは事情聴取をモモの母親から受けていた。
「うん、だからあれは事故であって、決して如何わしいことはなくて...。」
「たまたまブレーカーが落ちて、ああなってしまったんですよ。」
カズもカズなりにモモのフォローに入る。
「なるほど。わかりました。ちゃんと事情があったから、今回は仕方がなかったことにしましょう。ただ...。」
モモの母親が言葉を止める。
「「ただ?」」
モモもカズも二人できょとんとしていると。
「モモ、カズくんを家に呼ぶのはいいけど、こんなかわいいカズくんがお風呂に入ってるのに、戸締りちゃんとしなきゃダメでしょ。」
すかさず、モモの母親はカズの隣に寄り添って頭を撫で始めた。
「え?!ちょっと。そんないきなり?!」
いきなりモモの母親に襲われたカズは顔を真っ赤にしながら、抵抗する。
これが、モモの家に語り継がれるカズとのスキンシップなのである。
「で、冗談はさておき、モモ、戸締りはしっかりしなさいよ。カズくん来てるんだから。」
何かと納得のいかないカズは不服そうにそっぽを向いていた。
「と、建前上叱っといて...ねえカズくん!モモの唇はどうだった?」
興味深そうにモモの母親は二人に質問をする。そう、これが本命なのだ。
カズとモモの顔が真っ赤になる。
「おや~。そんな顔が真っ赤になるってことは、何かやましいことでもあるのかな?」
モモの母親はカズとモモを見てさらに茶化しに入る。まるで、モモとカズを茶化すユウマのように。
「もう、ママのバカ~!!」
モモは近くにあったテレビのリモコンを母親に向かって投げ、カズを引きずりながら逃亡した。
一方、カズは茶化されすぎて、頭から湯気が出ていました。
※ちなみに母親は大丈夫でした。
そして、カズとモモは一時的にモモの部屋に避難することとなった。
「ったく、もう!うちの母親はダメ親なんだから!もう!!」
カズとモモは部屋に備え付けられていたベットに横になっていた。結局、モモの家で晩御飯を食べることになったのだ。
「まあまあ、ユウマと話してるときとあんま変わんないじゃん。」
カズもさすがにモモの母親のフォローに入る。このままだと、ずっとケンカを続けてそうだったからだ。
「でさあ、カズ君はさあ、どうだった?」
モモは頬を赤くしてカズに問いかける。
「どうだったって?何が?」
一方カズも何のことかわからずモモに聞き返した。
「いや、だから、その...。キ......ス...のこと。」
モモの頬がより赤くなる。そして、カズに自分の頬が赤くなっている事に気づかせまいとカズと反対側に顔を向けていた。
そして、モモの言葉を理解したカズも頬を真っ赤にしていた。
「いや、...。その....。」
カズの様子がおかしいのに気づいたのか、モモがカズのほうに顔を向けると―。
そこには、頬を真っ赤にしていたカズがいた。
「いや....。だって...。キス?とか初めてだし...。でも...。なんか...。よかった....。...かも?」
モモはその言葉を聞き、カズを改めて見た。
「いや...。その...。初めてだったん...。だから....。まだ...。実感がない...。っていうか...。その...。」
そこには、頬を真っ赤に染めたカズが恥ずかしい...。と言いながら、布団に包まっていた。
そのカズの姿を見たモモは、まるでハイエナが小さな獲物に襲い掛かりそうな目で、カズへの気持ちを抑えきれていなかった。
(カズ君、かわいい!!カズ君布団に包まってる!!大チャンス!!!)
その気持ちを抑えきれないまま、モモはカズに抱き付いた。
「カズ君!よく言えました!!」
モモはカズに片方の手で前から抱き付き、もう一方の手でカズの頭を撫でるという神業を披露していた。
「ちょ!!モモ!!どうしたの?!ちょ!!モモ、髪型が崩れる!!」
モモはそれでもカズを撫でるのはやめなかった。そう、自分専用のヘアドライヤーがベットから落ちてるのにも気づかずに。
「...。ったく、モモ抱き付きすぎ!髪型ぼさぼさになったじゃん。」
カズは手で髪型を元に戻そうと必死に直している。
「ごめ~んカズ君。カズ君見てると興奮しちゃって...。」
カズは何言ってんだよ。と、呆れ果てたように言っていた。
だが、モモはスタミナが全回復したように、ベットから飛び降りる。そんな矢先だった―。
モモの落下地点でヘヤドライヤーがパキッという音を立てて(表面だけだが)割れてしまったのだ。
「「あっ。」」
この瞬間。ヘヤドライヤーの買い替えが決まった。
その後、カズはモモ一家と一緒に晩御飯を食べ、(カズは、半分くらいしか食べていなかった。)モモからスマホをもらうために、再びモモの部屋に戻った。
「スマホね。ちょっと待ってて。」
モモはスマホをクローゼットの奥で探していた。
一方モモの部屋を改めて見てみると、カズはモモの部屋って意外と女子っぽいなっと改めて思った。
そして、モモがスマホを見つけてくると、どうしたの?と訊いてきた。
「いや~。なんというか、モモの部屋って意外と女子っぽいんだな~と思って。」
カズは率直な感想を述べた。
「カズ君、私は女子だからね?!」
と、意外にも普通に返されたのだが。
「もう、カズ君は私をどう思ってんの?はい。スマホ。」
モモがカズにスマホを差し出すと。
「おう、ありがとう。」
(ちなみに、そのスマホにはモモがこっそりインストールした、モモのスマホに逐一位置情報を知らせるアプリが入っています。)
「....で。モモ、さり気なく人の胸を触ろうとしないでくれない?」
見透かしたようにカズが言うとモモも一時停止してしまった。
「!!」
ちなみに、カズは胸をつかむと、顔を真っ赤にして、頭から湯気を出して一時間以上行動停止に陥るのだ。
モモはカズともっと遊びたいとき、この手法を使ってカズを止める。
「で、どうしたの?ってか、俺を呼び止めたいとき、オレの胸触る癖、いい加減にやめてよ。」
そして、しっかり帰らずにモモの用件を聞くところがカズの優しさというべきなのだろうか。
「あのさ。スケイプ一緒にやろうよ。」
※ちなみにスケイプとは、ビデオ通話アプリのことで、某Mソフトのス●イプとは何の関係もございません。
「ああ、そうだな。ってか、スケイプだったらオレでもできたのにパソコンあるし。」
そう、カズは入学祝いに貰ったノートパソコンが一台あるのだ。そこまでよいスペックとは言えないが。
「えっ?!そうなの?!」
どうやら、モモはカズがパソコンを持っていることは、知らなかったようだ。
「じゃあ、スケイプの入れ方教えてくれるか?」
カズがモモに問いかけると、モモも嬉しそうに、うん、いいよ!!といった。まるで、恋人に今すぐ会いたいと言われた時のように。
―翌日。登校中。
昨日からスマホデビューしたカズは、バスに揺られながら、スケイプの友人を追加するのに昨日からずっと時間を食われている。
モモを友人に追加した途端、モモのスマホを経由して、いろんな人から、友人の申請が来ているのだ。
「ったく、終わらねえ!!」
カズはスマホの画面と睨めっこしている。
「いや、ついにカズもスマホデビューか。」
ユウマとも連絡が取れるようになったので、スマホデビューは待ち合わせなどをする時、大幅な時間短縮を意味する。
「ねえユウ君。酷くない?カズ君パソコン持ってたんだって。私たちに内緒で。」
昨日までカズがパソコンを持ってたことを知らなかったモモは、朝からご機嫌ななめだった。
「え?!カズ。俺たちを裏切ったのか?」
昨日モモにやられたことをそのままユウマは実行する。
「いや、別に裏切ってねーよ。第一、ユウマにはずいぶん前に言っただろ。」
そう、カズはユウマにだけパソコンをもらったことを話していたのだ。
「あれ~そうだっけ?オレ、シラナイナー」
いかにも芝居がかった演技をユウマがいていると、隣からモモが一人だけ俯いて、
「カズ君。ユウ君にだけ教えたんだ。私のことなんてどうでも....。」
相当なショックだった。
そして、危険を察知したカズは、すぐに話題を切り替えることを選んだ。
「で、お前と岡田さんはあの後どうなったんだ?」
カズはスマホをいじりながら、ユウマに尋ねる。
「いや~。あの人は観察眼がホントすごいね。」
そして、なんか裏がありそうな人間だった。とユウマは思った。
「で、全く情報を得られない僕の情報はほっといて、カズ達はどうだったの?昨日なんかあったんじゃない?」
ユウマはいつもの調子で質問したがなぜか二人の様子がおかしい。
一方、二人は昨日の洗面所での出来事を思い出していた。
そして、そのことを思い出すと同時に二人の頬が少し赤くなる。
「もしかして.....キスしちゃったりして!」
ユウマが軽い冗談半分で言ってみると、二人の頬がさらに赤くなる。
「まさか....。カズ。スマホをもらうために自分の体を使ったの?!」
「いや、違うから!!事故だから!!」
「ほう、キスをしたことは認めると。」
迂闊だった。この返事だと自然とキスをしたことを認めてしまっているのだ。
そして、もう隠しきれないと判断したのか。カズは全て、ユウマに話した。
「ほう...。真っ暗な中で、裸で無防備なカズに自分からキスと。中々やるねモモ。」
ユウマは、モモの気持ちを知っている。モモがわざとやったとは思ってもいないが茶化すのには最適だった、
「そんなんじゃないから!!」
バス内にモモの声が響き渡る。
学校―。
バス内でのモモの叫びによってカズとモモの話は一斉にクラス中が知る話となった。
「「恥ずかしい...。」」
朝から昨日の転校生以上に質問にあっているカズとモモは頬を赤く染めながら、質問に答えていた。
それをユウマは遠目で見ていると、後ろから美鈴がやってきた。
「今日の二人は人気があるのね。」
まずは、一定の距離を保とうと考えているのだろうか、美鈴は自分からユウマに近づいて行った。
「そうみたいだな。いろいろあったみたいだしな。」
ユウマもボロを出さなように返事をした。
「モモちゃんが、カズ君にキスをしたらしいわね。高校生なんだから、そんなことくらいあってもいいと思うんだけどね。」
美鈴は観察眼だけではなく情報収集能力も長けているらしく、全て知っているような口で話していた。
(全く、どこのどいつが美鈴に話したんだよ)ユウマはあまりカズとモモの気持ちを美鈴に知られたくなかったので、教えた人をまるで犯罪者のような扱いをした。
二人がまるで、相手がボロを出すのを狙っているような会話をしていると、ようやく解放された、モモとカズが出てきた。
「ゆう~。もうヤダー。逃げたい。」
カズの悲鳴をユウマは軽くあしらっておくと、突然モモが、
「帰ったら、リサイクルセンターに行こう!」
と言い出した。そう、モモはいつも急に予定を入れたがるのだ。
「いいよね、岡田さんも。」
カズが美鈴に確認をすると、美鈴もいいわ。行きましょ。と言って、リサイクルショップに遊びに行くことが決定した。
「な、ユウマもいいよな。」
カズがユウマにも確認をするとユウマは、少し違った返事をした。
「いや、俺はいいや。」
モモもカズもまさかユウマが来ないというとは思ってなかったのか、数秒間、そのまま固まってしまった。
「そう。じゃあ、さん ―。」
カズが言葉をしゃべり終える前に美鈴が待ってとカズを制止した。
「ねえ、ユウマ君も行こうよ~。」
そう言いつつ美鈴は自分の胸をユウマの腕に押し当てる。まさに自分の体を最大限に利用した攻め方だった。
そして、カズとモモがその後に遊ぼうよ~と続く。
ユウマも諦めたのか結局、一緒に来ることになった。
「いや~、岡田さんの今の誘い方すごいね。大人の誘い方って感じ!」
カズが素直に過大評価する。
「これくらいだったら、モモちゃんでもできるんじゃない?」
美鈴は、割とあっさりと返事をした。
「いや~。私には無理だよ~。そういうの苦手だし。」
モモはさすがに無理だと返事をした。
「カズ君でもできんじゃない?猫耳とかつけたらいけそうな気がする。」
なんと美鈴の矛先はカズになった。どうやら、美鈴のかわいいの対象は自分より身長が低いことらしい。実際カズは高校二年生なのに、身長が155センチしかない。
「いや~。俺じゃ無理だよ。そもそも男だし。」
カズもモモと似たような返事をする。
「カズ君なら顔立ちがかわいいから、性別の壁を乗り越えられるよ!」
「だって、カズ君!」
美鈴にお墨付きの評価をもらったが別にうれしくない。というか、悲しい。
「じゃあ、カズ君やってみてよ!カズ君がやったら、私もやる~!」
モモがカズ君やって!!という感じでお願いをする。
「いや、いいよ。俺やりたくないし。」
そうこうしているうちに、一時間目のHRを知らせるチャイムがなる。
(帰りの)HR終了後―。
「よし、じゃあ、早速いこ―!」
「お~!!」
と、美鈴のみが言うと、モモの威勢のいい合図とともに四人(内、二人は、やる気が全くない。)はリサイクルショップに向かう。
―リサイクルショップ
「リサイクルショップ。意外と近かったんだな~。」
ユウマは、リサイクルショップに来る機会がなかったのだ。
「ユウは、まだリサイクルショップ来たことないの?」
カズは、節約するためにリサイクルショップに度々来ている。
来たことないな~とユウマが改めて思い出していると、美鈴が辺りを見回しながら、
「そういえば、モモちゃんどこに行ったの?」
先程から、モモの姿が見当たらない。
「そういえば、一番最初に店に入っていったような....。」
カズはさっきまで、モモと一緒にいた。だが、リサイクルショップを見つけた途端、走り出してしまったのだ。
辺りを回っていると、買い取り専用のレジから、見知った声が聞こえた。
「え~!!まだ使えるのに!!なんでこんなに安くしか買い取ってくれないの~?まだ動くのに~!!」
案の定モモの声だった。どうやら、昨日壊れたドライヤーを売ってみることにしたようだ。
「いや~。そんなこと言われましても、外面が割れていますので、価格が下落してしまいまして...。」
レジの買取金額のところには50円と書かれている。有料買取にならなかっただけでも、得をしていると思うのだが...。
「まーまー、モモ。そう怒らないの。第一それ壊れてんだから。買い取ってくれるだけでも得でしょ?」
結局、カズが仲裁に入ることとなった。結果、舞台は無事収拾がついた。
(モモはとても不機嫌そうだが。)
その後、無事に売却を終えた、カズとモモはリサイクルショップ内を見て回っていた。
「も~!なんでカズ君が店員さんの味方するの?なんで裏切ったの??」
どうやら、予想以上に安く売れたより、カズに裏切られたという精神的なショックのほうが大きいようだ。
「いや、しょうがないだろ。モモがなんか言ったところで、買取金額が跳ね上がるわけじゃないだろ。」
せいぜい上がったとしても、一円か二円くらいだろう。
「そうだけど...。」
モモは、納得のいかない顔をしている。
そうこうしているうちに、二人はビデオカメラの売リ場に辿り着いた。
そう、カズは動画投稿をするために必要な機材を漁りにリサイクルショップ内を回っていた。
「あ、このビデオカメラ1000円か~。少し予算オーバーしてるけど、仕方ないか。」
カズが行おうとしているのは雑談動画がメインなのであまり、カメラにこだわってない。マイクが正常に動作してさえくれればいいのだ。
よって、予算もそこまで高くなかった。
「カズ君、ビデオカメラ買うの?じゃあ、もっといいの買えばいいのに。」
モモも興味深そうにビデオカメラを探している。
「カズく~ん。これとかいいんじゃない?」
モモがカズにカメラを向け、動画を撮影し、このカメラをを進める。
「どれどれ....。1万?!もっと安いのでいいから!!」
有名メーカーのビデオカメラは中古といえどさすがに高かった。
カズは、結局1000円のビデオカメラを購入することにした。
「はあ、今日の晩御飯。こんにゃくだけだな。」
この1000円分は、食事代から差し引かれるようだ。
カズが、一人で落ち込んでいると、ふと あることに気づいた。
―モモがいない。さっきまで、一緒にビデオカメラを探していた、モモがいないのだ。
モモ~!と声を張って探そうと思った矢先、モモのような人影が柱の奥に見えた。
「モモだ。あいつ何してんだろう?」
恐る恐る近づいてみると、そこにはユウマや美鈴もいた。
「何してんの?」
カズが三人に聞いた瞬間、モモがいきなり飛び掛かってきた。
「ていや~!」
咄嗟の攻撃によって、身動きの取れなくなったカズは、地面に尻をついた。
「ったく、危ないだろモモ!」
カズがモモに対して叱ろうとした瞬間、モモが、よし、できた!!と笑顔で言っていた。
「??」
状況が理解できないカズはそのままきょとんとしていると、ユウマと美鈴が懐に隠してあった、スマホを取り出し、カズを連射で撮影する。
スマホには、頭に何かを乗せた、きょとんとしているカズが写っていた。
「「「カズ[君]。かわいい《な》!!」」」
三人にハモって言われたカズは何が何だかわからず、頭に手を乗せる。
「―ん?」
頭の上に何かが乗っている。
「じゃじゃーん!」
モモがユウマから転送されたカズの写真をスマホの画面いっぱいに表示させ、得意げにカズに見せる。
―そこには、猫耳をつけ、一見あどけない表情を浮かべる、カズが写っていた。
その画像を見たカズの頬が熱くなる。
そして、この画像を広められたらまずいと判断したカズは、すぐに猫耳を外すとモモを追いかける。特にモモの母親に見つかると何をされるか分かったものではない。
カズがスマホをポケットから落としたのを知らずにモモを追いかける。
そのスマホをユウマが拾い、ロックを解除する。幸いパスワードは掛かってなかった。操作を終えたユウマはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
ユウマが操作を終えると同時にカズはモモを捕まえ、ユウマとモモのいる場所までモモの首根っこを引っ張るようにして戻ってきた。それを見たユウマは
(カズ、女子にも容赦ないな。モモはなんか嬉しそうだけど。)と、思っていた。
「なあ。オレのスマホ知らない?...モモ、逃げるなよ。」
カズは先程落とした、スマホをどうやら探してるようだった。一方、モモはカズの手から逃げようと一生懸命、動き回っている。
「ああ、それなら俺が持ってるよ。さっき、カズがモモを追いかけた拍子に落としてた。」
ユウマが(ユウマによって、何かいたずらされた)スマホをカズに渡す。
「ああ、ありがt―。」
カズがお礼を言いかけると、カズが固まる。カズの顔から視点を下げていくと...。
カズの胸の位置にモモの手がある。そう、カズから逃れる簡単な手段は、カズを静止させればよいのだ。
モモにカズの胸を触られ、カズの腕の力が抜けていき、カズの顔が真っ赤になる。そして、カズの動きも制止する。
「カズく~ん。せっかく私があげたスマホ、大切にしなきゃダメでしょ~。」
一気に形勢逆転したためモモには余裕があり、笑みを浮かべている。そして、動くことのできない、カズにはモモの笑みが悪魔の笑みに見えていることだろう。
「やられたら~...。やり返すのだ~!!」
そして、カズに襲い掛かる。
「そう簡単には、私は出し抜けないのだよ~!まあ、努力は認めてあげるけどね~!!」
モモがカズに抱き付き、頭を撫でまわす。
それを見ているユウマは、こんなところで何やってるんのだか...。と呆れ果てていて、美鈴は、こんな顔を真っ赤にしてるカズ君、弟みたいでかわいいかも...。とモモと同じ目をしている。
その後、モモ達は店員に店を追い出されたので、やっとモモの動きが止まった。
そして、店を出た。(追い出された)四人は初めて、もう日も沈み、辺りが真っ暗なことに気づく。
まだ、夏の盛りだから、時間は7時前だろうか。
「一輝君、意外と照れ屋さんだね~。モモちゃんに胸掴まれてるとき、顔真っ赤にしてて、かわいかったよ~。」
美鈴が、笑顔で素直な感想を述べると、カズは頬を少し赤くして、かわいいとか、言わないでよ。オレ男の子なんだし...。とぼやいていた。
「でも、カズ君が、そうやって“男の子”って言ってる辺りが、カズ君のかわいいところだよね~。」
モモがまるで、女子高生が好きな男性俳優の話を友達に話すような口調で、カズのかわいいポイントを話していると、
「まあ、カズは、恥ずかしがると、口調がガキっぽくなるからな...。」
と、少し憐れむような目で、ユウマが見ていると。
「カズくん、昔は背、高かくて、みんなからはかわいいとは思われてなかったんだよね...。まあ、私はカズ君のかわいさに5年前から気づいていたんだけど。」
モモが嬉しそうにユウマに自慢をしているが、カズは、オレは小学生の時からそんな目でモモに見られていたのか...。と少し落ち込んでいた。
そう、小学生の時はカズは実際背もそこそこ高く、カズの人柄、いじめの仲裁に入るとクラスの女子に必ずカッコいいと言われていた経緯があったりもする。
「一輝くんが、そんなに背が高かったなんて、意外だわ。でも、照れ屋さんなのは変わってなさそう!」
「そうそう!カズくんは、昔っから照れ屋さんで、照れると直ぐ顔に出ちゃうから、これまたかわいいんだよね!」
モモがカズのかわいいところ(カズにとってはただの欠点)を楽しそうに話していた。
「もうヤダ~!早く帰ろ!!もう!」
カズは照れて、ユウマと先に走り出してしまった。そして、残されたモモと美鈴の中で、モモが小声で。
「でも、カズくんはみんなのためを思って、行動してくれるんだよね。―だから、カズくんがみんなのために、すぐ命を投げ出しそうで...本当は怖いんだよね....。」
その言葉を聞いた美鈴は、笑顔でこう言ったのだった―。
「大丈夫。カズくんには、モモちゃんやユウマ君がいるから。もし、一輝くんが一人で支えきれなくなったら、モモちゃんとユウマ君で一輝くんを支えれば、大丈夫だよ。」
その言葉を聞くと、モモは笑顔になり、そうだよね!と口にしたのだった。
すると、先に走っていった二人が、早くいくぞ~!とモモと美鈴を待っていた。
うん!とモモは大きな返事をし、二人の方へ走っていく。
しかし、誰も気づいていなかった。モモが走っている後ろで、美鈴が不気味な笑みを受けべていたのを。
カズが岡田さんも、早くいこ~よ~!と声をかけると、美鈴も二人のいる方へ走っていった。
「お、なんかモモ元気じゃん。いいことあったの?」
「えへへ、ちょっとね?」
「?」
たわいの無い会話をしつつ、四人は一緒に家に帰っていく。
―モモ宅。夕食中。
モモがご飯を食べながら、スマホを見ていると、隣からお茶が運ばれてきた。
「モモ、それカズ君のアカウント?」
モモの母親が、不思議そうに尋ねる。
「うん。見てカズ君のホーム画像。超かわいくない?」
モモがカズのアカウント情報をスマホに表示させたまま母親に見せる。
「あら、かわいいわね。」
そこには、猫耳を付けた例のカズが写っていた。
一方、カズ宅。夕食中。
今日はこんにゃくと決めているカズはこんにゃくを食べながら、スマホを開いた。
今日はやけに通知が多い。特にリサイクルショップから帰った時からだ。
「―ん。個別メッセージ?」
カズが、スケイプを開くとかわいい!!というコメントがたくさん来ていた。そして、アカウントのホーム画面に目をやると、猫耳カズが写っていた。
「あの野郎....。」
カズのスマホを握る力が強くなった。
お久しぶりです。西田東吾です。
今日は動画投稿までの機材準備のつもりでいたが、脱線してしまいましたね...。
そして、カズの生活の面も実は明らかになっています。
この事からか分かるように、カズは極貧生活を送っており、たった1000円の掘り出し物のカメラのために、食費を犠牲にする。というほどの極貧生活を送っていますね。
世の中では、無料3Gと言うものもあるそうで、試したことはないのですが、どんな感じなん出しょうかねw。
そして、カズも無料3G なんですかねー?
カズの周りの人から見る、カズの姿というのも少し、出てきましたね。これがこの先、吉と出るのか、それとも凶と出るのか...。
そして、最後、美玲による不気味な笑み...。
謎ですな...。
謎に包まれた、今作品ですが、この先は次回へのお楽しみということで、また次回お逢いしましょう。
※勝手に人の写真を撮り、インターネット上にアップロードするのは犯罪です。
この小説は犯罪を促すものではございません。