第一章 一話 「五年後」
やっと制作が本格的に始まりました!『Try Again』
今回から、登場人物に視点を置いて話を進めていません。
ただ、今回から少しづつ動画投稿が話に入ってきます。
楽しんで読んでいただけると幸いです。
あの悲劇から5年後。
カズ達三人は高校二年生になった。当時は身長が高かったカズもモモより少し背が高いくらいになり、ユウマが身長では186センチという驚異的な高さになっていた。
カズはマンションを借りていた。
マンションといっても、事故物件で格安。カズ以外にだれも住んでいない。しまいには、モモに『事故物件借りるくらいなら、うちにくればいいのに。』と言われたが、
いつもお世話になっていたので、さすがに遠慮しとくことにした。
モモの両親もいつでもいらっしゃいと言ってくれたのだが。
そして、その事故物件にはなぜかモモも来ていた。
「も~、カズくん事故物件なんか借りるから、きっと呪われたんだよ~。別にうちに来てもいいんだよ?」
モモはあきれたように、カズに言った。
「いや、呪われるとか言うなよ、本当に呪い殺されたら困るし...。」
実際、カズが体調を崩したのは呪われたわけではない。
三日前―。
カズは入学祝いにもらった、PCでネットサーフィンをしていた。
その時だった。とある裏サイトで、こんなことが書かれていたのだ。
"もし、動画クリエイターになり、一万人以上のファンを得ることができたなら、一つ願いが叶う”
カズはあの悲劇を回避するため、動画投稿者になるための予算や機材、設備を選んでいた。
そのせいで、徹夜続きなのだ。それなりに性能がよく格安で使えるものを探していた。
「カズくん。なんか無理してるでしょ。」
モモは、まるでガスのことを全て知っているかのような、言葉を放つことがある。
(えっ?!どうしてわかった?モモに心配をかけるわけにもいかないし、誤魔化しとくか。)カズは結局、誤魔化すことにした。
「そんなわけないだろ。ただの風邪だよ。」
カズは頭の後ろを手で掻きながら、言った。
「そう...。」
モモは知っていた―。
(カズくんが何か隠し事をしているとき、頭の後ろを掻く癖があるんだよね。)
ここで訊いても無意味と判断したのか、モモはそれ以上詮索しなかった。
「で、なんでモモは学校終わってうちに来たの?」
カズは素っ気ない気持ちで訊いたのだが、モモは顔を赤くして、
「別にいいじゃん。私だって...その...。」
みるみる顔が赤くなっていく。
「あ、もしかして、モモ、ユウマのことが好きなの?だから相談しに来たとか。」
カズが手をポンと叩く。
(どうして、そうなったー。)
モモの顔が青ざめていく。
(ありえないでしょ。なんでカズ君の家に来て、突然ユウ君が出てきたの??)
誰もがそう思うだろう。
その瞬間、モモは学んだ。カズに向かって、恋愛トークをしてはいけない。と。
カズは自信に満ちた顔で言っているがそんなわけない。
「もう、私帰る!」
モモは拗ねてしまった。
「?」
カズはモモの行動を不思議そうに見ていた。
日も沈み、モモ宅―。
モモは、家の中でベットに横になり、誰かにスマホで電話をかけている。部屋にある時計は二二時五〇分を指している。
「で、ヒドいんだよ。カズくん。私がユウくんなんか好きなわけ無いじゃん!」
会話している相手はユウマのようだ。ユウマも明日の予習をしつつ、モモと通話している。
「まあ、カズは恋愛のレの字も知らないからね。仕方ないんじゃない。」(あと、『なんか』って言わないで『なんか』って!)
一方ユウマは『なんか』と言われたことに関して、怒るべきなのか、少し悩んでいた。
『なんで、カズくんはそんなに恋愛については無知なのかな~。もう!』
電話の向こうでは、モモが怒っていた。
「それでも、モモはそんなカズが好きなんだろ。」
“えっ”という小さい返事だけが帰ってきて、電話の向こうではモモが顔を真っ赤にしているのがわかる。
「図星だ。」
『え...だって..その...。』
「あれから五年間告白しないなんて...
あっ、この答えはax+czだ...。
どんだけ期待させんだよ。」
ユウマは数学の問題を解きながら、通話を続ける。
『期待って、なんの期待してんの、もう!』
「いや、カズが告白されたら、どんな反応をするのかなって...。ん?あれ、もしかして僕が何か、如何わしいことでも考えていると?」
『いや!考えてないから...。考えて...ないから...。』
おい。とツッコミたくなるほどの照れっぷりだ。正直、聞いてて面白い。
「あ、そうそう明日うちのクラスに転校生が来るみたいよ。なんか先生が言ってた。」
何気なく言ったつもりだが、なぜかモモが、
『ユウくん、もしかして私達を捨てて先生と仲良くなろうとしてる?!』
モモの顔が急に青ざめていく。喜怒哀楽の激しすぎる奴だ。
「そうじゃねぇよ。授業でわかんないとこあったから、質問しに行っただけだよ。そのときに教えてくれた。」
『な~んだ。ってきり私達は捨てたれたのかなと。』
相当がっかりしている。先生と仲良くなってほしかったのだろうか。
「なわけないだろ。じゃあ切るぞ。」
『うん、またね。』
...そのまま通話は終了した。
「ったく、モモも早く告白すればいいのに。五年間気づかないカズもカズだけど...。しかも、カズなら別に断ったりしなそうだしな。」
あきれ果てたように、独り言を言った。
(そういえば、転校生どんな人なんだろう...。まっ、明日になったら分かるか。)
ユウマは背伸びをしつつ、時計を見ると時刻は二十三時を指していた。
「今日はもう寝よっかな~。」
と言いつつ、ユウマは勉強を続ける。
どうも、西田東吾です。
冒頭にもお話した通り少しですが動画投稿が話に入ってきました。
動画投稿といえばこの話のメイン!なのですが....。
次回は少し話がそれて、今話中にも少し話が出ていた、転校生の話をしていきます。
なので、次回はこの話は学校が話題になっていくでしょう。
そして、プロローグ中にも書かれていた、モモがカズに抱いている恋心が意外な方向に?!という感じです。
なので、動画投稿の話はもうしばらくお待ちください!
以上、西田東吾でした。
そういえば、もう一年の終わりだ...。