行間 「モモのきもち」
今回はモモ視点で、話を進めてみました!
どうぞお楽しみください!
どこにでもありそうな公園―。
砂場で仲良く遊んでいる幼馴染の三人がいた。この三人が仲良くなったのはいつだろうか。母親曰く、カズくんのお父さんが元気な頃だと言っていたような気がする。
その時はカズの母親もものすごく優しかった。だが、三年前父親が過労で倒れて以来、段々母親もおかしくなっていった―。
カズくんのお父さんが亡くなる半年前には、カズくんのお母さんは、麻雀やギャンブルにのめり込んでいった―。
カズくんには、家がある―。
ただそれは家族がいつも待っている、温かい家ではない。
ただそれは家に帰っても誰もいない、冷たい家。
ただ寝泊まりするためにある家。
ただ一人でご飯を作って一人で食べる家。
私は、父親が亡くなってから、家族でご飯なんて食べていないだろうからカズくんを家に誘い、お家でご飯をたべることにした。
「今日は、カズくんもいるんだな、モモ。」
パパだ。『カズくんを一緒に食べてもいい?』と訊いたら快くOKを出してくれた。
「うん!久しぶりにいっぱい食べよう、カズくん!」
私はカズくんに話題を振ってみる。
「うん、いいの?僕なんかがここにいて。」
今では考えられないだろうが、カズくんは自分のことを『オレ』と言い出したのは、小学四年生になってからだった。
「いいのよ~カズくん。夕食は人がたくさんいたほうが美味しいんだから!おばちゃんの天才的料理センスを発揮させてみせるわ!!」
お母さんだ。『カズくんパパにはお世話になっていたから』と言って、お母さんも快くカズくんを受け入れてくれた。
「母さん、程々にしといてくれよ。あんまり頑張り過ぎちゃうと食べきれないからな」
お父さんは冗談半分で言ったのだが気に障ったのか、お母さんが『もしかして、お父さんは私の作ったご飯が食べきれないっていうのかしら...。』といい、顔が青ざめていく。
しばらくして...。
「よし、食べよっか。」
父親は言動に細心の注意を払って言った。
「「いただきます!」」
その日はシチューだった。冷めきった心を温めるというそんな思いもあったのだろう。食器同士がぶつかりあう音と「おいしいね!」というとみんなで話していた。
ただ、カズくんは違っていた。泣いていたのだ。私には分かった。これまでお父さんが亡くなって、誰にも頼ることなく生きていた。悩んでいたこともたくさんあったのだろう。
そういうところも、カズくんらしいのだが...。
それから度々カズくんはうちに来るようになった。
そんな時だった。ゲンちゃんがやってきたのだ。引っ越してきたばかりで、友達もいなくて何もできないゲンちゃんに手を差し伸べたのはカズくんだったのだ。それを遠くから見ていると、ユウくんが私の近くに来て、
「なあ、モモ。カズを見守ってくれてありがとな。」
といってくれた。ユウくんはいつも影からみんなを見て支えてくれる。一番この中でオトナなのは、ユウくんかもしれない。
「うん!」
私は大きな声で返事をしたのだった。
六年後。
小学六年生になった、そんな時、私たちにはある事件が起きた。カズくんが学年模試で一位を取ったのだ。そして、一点差でゲンちゃん。三位以降の私立小学校の生徒と4点差という記録を打ち出したのだ。
ただ、学年一位となると何かと疎まれることも多いようでカズくんとゲンちゃんは段々いじめの対象になっていった。
「おい、学年一位。オレ頭悪いから、これ持っていってくれない?」
誰でもできるような雑用も段々カズくんがやるようになっていった。喧嘩を恐れているのか、何かを守ろうをしているのかわからなかったが、カズくんは文句一つ言わずにこなしていった。
そんな中。クラスメイトの男子が私の前に出てきて私にある質問をした。
「なあ沢波、なんでお前はいっつもカズの近くにいるのに、頭良くないの?」
「別に、関係ないでしょ。カズくんと一緒にいれば頭が良くなるってわけじゃないんだから。」
私は軽く受け流したつもりだったのだが...。
「わかった!沢波は出来損ないなんだ!だからカズに勉強を教えてもらおうとしてんだろ!」
ありもしないことをでっち上げた男子の悪口はまだ続く。
「沢波の出来損ない!沢波のバーカ!アーホ!」
周りの目も段々“えっモモちゃんって、頭悪いから、河合君を利用してるの?”という冷たい視線を感じた。もう正直、泣きそうだった。
その時だった。目の前にカズくんが出てきたのは。男子生徒を思いっきり殴り飛ばしたのだ。
カズくんが文句一つ漏らさずに雑用をやっていた理由。それは、嫉妬の矛先を自分だけに向け、私達全員を守っていたのだった。
私は何故か嬉しさのあまり、カズくんに抱きついて泣いていたのだった。でも、カズくんは恥ずかしがって、顔を真っ赤にしていた。
ちなみに、私は((カズくん、カワイイ!))そんなことを考えながらカズくんを下から、眺めていました。
その後カズくんに対して悪戯をするような児童はいなくなりました。
その日のお昼休みにユウくんを呼び出して訊いてみたのでした。
「で、モモがオレを誘うなんて珍しいじゃん。」
「うん、あのね...。今日の休み時間からなんだけど、カズくんを見るとなんか胸がドキドキしてくるの。もしかして、『せいかんせんしょう』ってやつ?」
自分の症状を伝えてみることにした。何か病気なのではないのか?そういえば母親から最近若者に性感染症が増えていると訊いたことがある。もしかして性感染症とはこんなことなのか。
「ああ、それはただの恋だよ。」
ユウくんにはっきり言われてしまって反応ができない。
「いや、まさかモモが性感染症を知ってたとは。まあ、全く意味は違うんだけどねw。」
段々私の顔が赤くなっていくのがわかる。
「まあ、あんなこと言われたら、惚れちゃうわなw。」
完全にバカにされた。
「違うもん!恋なんかじゃないもん!カズくんを見るとドキドキするだけだもん!恋じゃないもん!きっと何かの病気だもん!カズくんは恋愛対象じゃないもん!」
顔を真っ赤にして全否定する。
「モモ、それは恋ですよ。」
ユウくんはニヤニヤしながら教えてくれたのだった。
「もう!ユウくんに相談するんじゃなかった~!」
そして、ゲンちゃんが亡くなる前日、昼休みにユウくんに呼び出されたのだった―。
「で、お前はまだカズに告白してないのかよ。」
ユウくんに言われてしまい戸惑いながらも、
「だって~。告白って言われても...。やったことないし...。恥ずかしいし...。」
「そんなこと言ってるとゲンちゃんに取られちゃったりしてなw」
ゆうちゃんに言われた瞬間ゲンちゃんとカズくんがデートしてる姿を思い浮かべながら、
ないないない。と全否定したのだが、
「わかんないよ。今は性転換手術とかもあるし、カズみたいな天才だったら、彼女もすぐ作れそうだし。」
ユウくんは肝心のことをなかなか言わない。からかっているのだ。私は少しぽっぺたを膨らませながら、
「も~っ!何が言いたいの?」
私は思い切って訊いてみた。
「もし、本当に好きなら、はっきり言った方がいいぞ。」
ユウくんにはっきり、言われてしまった。
その後、教室に行くと男子児童とカズくんが、言い争っていた。
結局、カズくんが殴って終わらせてしまった。
周りからは「やばい、河合に惚れちやうかも。」と言われていたのだ。
帰りのときに遅れているみんなを待っていた。男子だけで話し合い的なのをやっているらしい。
その時、カズくんの下駄箱を見てみるとカズくんの靴の中に手紙が入っていた。
私は、その手紙の中身も見ないで手紙を隠してしまった―。
帰り道。みんなで遊んている時。朝の登校時。全てカズくんに思いを打ち明けることができなかった。
結局、カズくんと話すのはお昼休みになってしまった。
学校裏。私がカズくんを連れて行って、
「あのね、カズ...。」
私の声は一瞬にしてかき消された。
そう、あの悲劇が起きてしまったのだ―。
どうも、西田東吾です。今回はモモ視点で話を進めていたのですが、何しろ話が幼稚園生の部分から始まっていたので、細かいところまで書き足すことができませんでした。( ;∀;)
またの機会があったらモモ視点の話を書いてみたいなと思っています。今回はやっとユウマが、モモのアドバイサーとして登場しましたね。本編ではユウマが....。そして、やっと次回からこの作品のキーワードである、『動画投稿者』がメインになっていきます。
では、また次回お逢いしましょう!
そして今日はクリスマスイブ...。