プロローグⅡ 「亀裂」
ガシャンという大きな物音とともに、食器が落ちる
「あ、ワリィな。俺、頭悪いからぶつかっちゃったわ~。」
今は給食の時間が終わり、食器を片付けているところだった。
頭がいいと、なぜか嫌われる兆候があるらしい。
「ごめん、俺も前見えてなかったから。」
ゲンちゃんはあくまで誠実に対応する。ぶつかった男子児童は、まだ何か言って茶化そうとし、口を開く。が、
「いい加減にやめろ馬鹿ども。負け犬は素直に負けを認めろ。」
俺は火種が俺に移るようにあえて罵倒しておいた。
「あ~あ、天才にここまで言われると俺も泣いちゃうかも~。特にこのクラスは全国学年1位と2位がいるもんな~。」
相手も茶化すのだけはやめようとしなかった。これで、俺達が暴力的な手段に出ることでも考えているのだろうか。
そして、周りの見物人もだんだん俺達の悪口を言うようになってきた。
すると、見覚えのある小柄なショートカットの女の子がまだ茶化そうとしている、児童の前に立った。
そして、バチン と先程の女の子が思いっきりビンタした。よく見ると、モモだった。
「おいモモ、せっかく俺が抑えようとしてたのに、なんで...。」
つい、オレは自分の思っていることを大声で言ってしまった。
するとモモが俺の方を向き、
「カズ君だって、一人で抱え込まないでよ!!!」
モモの今にも泣きそうな叫びがクラス中に響き渡る。
「わかるんだよ?小さいときからずっと一緒にいるからカズくんの考えることくらい...。少しは、一人で抱え込まないで、私たちに
相談して..よ...。」
モモが涙をポロポロと流しながら、一生懸命に訴える。
「なあ、ゲン...。小学生ってある程度のことをやっても許されるよな?」
俺は下を向きながら、静かにゲンちゃんに尋ねる。
「ああ、そうだけど..。お手柔らかに..。な。」
ゲンちゃんはこの時点で察しているがここで、飛びかかって止めたところで収まるとは思えない。
「なあ、さすがにお前みたいなゴミにも女子を泣かすと、どうなるかわかるよな!」
気がついたら、俺は拳に力を込めて一発殴っていた。
そしてまだ泣いているモモの前に行き、笑顔で一言添えた。
「悪かったな、お前の気持ちに気が付けなくて。」
その後、いくら茶化しても、まさか本当に殴られるとは思っていなかったのか、男子児童は泣きながら帰ってしまった。
何故か、担任もその事自体を知らないのか、それとも見過ごしたのか知らないが、呼び出されたりはしなかった。
そしてあっという間に学校も終わってしまった。
放課後、下校中。
「いや~カズはやっぱりすごいよ。」
ゲンちゃんはいつもこう言う。俺は普通に流すが、ゲンちゃんはいざという時、なかなか自分の意見が言えないのだ。
「でも、自分のことだけで抱え込まないでよね」
モモは顔を赤くさせて言ったが、モモもさっき心配してくれていなかったら、小6の男子児童のことをビンタしたりなんかしないと思う。
「モモ、なんか顔赤いぞ。風邪でも引いたか?」
熱かもしれないから、声をかけといた。
「べっ別に、大丈夫。」
モモは更に顔を赤くして言った。
まあ、俺はなんで顔が赤いのか全くわからないのだが...。
「ねえ、みんなうちで遊ばない?」
モモが早速家に誘い出す。が実はここ数日モモの家にほぼ毎日お邪魔しているのだ。なのでオレは一応拒否しておくことにした。
「いや、でもさすがに毎日毎日、迷惑...。」
モモが茶化しはじめる。
「なに、カズくん。もしかして、小6にもなって、はつ...。」
「いや、そういうのじゃないから!」
オレも必死に否定する。
すると、ゲンちゃんが、『ごめん。オレちょっと無理。三人で遊んでくれる?』
と言われてしまったので、その日は三人で遊ぶことにした。
今考えてみると、一番一人で抱え込んでいたのは、ゲンちゃんだったのかもしれない。
>>次回へ続く
初めての人は初めまして、前回から見ていただいている方ありがとうございます。
前回の投稿からかなり遅れてしまいました。西田東吾です。
遅れてしまって本当に申し訳ございません。
本来この話は動画投稿をするところから書いていこうと思っていたのですが、キッカケも知りたいかな、と思いましたので、プロローグ編では主人公の過去を書かせていただいております。
ちなみにプロローグ編は次回で終わる予定です。
その後、今回のモモ視点での話を数話出して本編に入っていこうかなと考えております。
まだ拙いところもあると思いますが、楽しんで読んでいただけると幸いです。
ユウマ今回一度も出せなくてごめん...。