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二つの世界  作者: rara3
3/6

甘い香 1

二つの世界の番外編。妖精王セスナの従者リンツと人間の王子レオンの従者ザットの話になります。


人間の王子が我が妖精王の元に頻繁にみえるようになってから

私の受難は始まったのだ。


「なあ、ちょっとは相手してくれよ。」


この無粋な物言いな男はレオン王子の従者、ザット。

最初に会った時から気に入らない男だった。


「リンツくんさあ。聞いてる?」


「仕事が忙しいので。」


「また飛んで行ったりしないでよ。俺飛べないから。

 仕事なんて妖精王の警護だろ?いいじゃん。」


「あなたはレオン王子の従者ですよね?

 遊びでここに来てる訳じゃないでしょう?」


「そりゃあそうだけど。お前に会いに来てるって事もある。」


駄目だ。毎回こんな不毛な会話ばかりしてる。

私の何を気に入ったか分からないが、このしつこさは困る。

男だと言っても、迷惑だと言っても、無視をしても、

何も動じない。疲れる。



「今日もまた愛されてたな。」


にやりとシュースが私の肩に手を置いたので、

払いのけてやる。


「愛されてるとか汚らわしい!彼は私をからかって遊んでいるだけだ。」


「へえ、毎回来てはお前にちょっかい出して、あいつ健気だと思うけど。」


「やっと帰ってこっちはせいせいしています。可愛げもない人間の男だ。」


男らしい鍛え上げられた身体、妖精の男達とは違う、女達が騒ぎたてるのも

無理はない。ならばこんな男の私より、美しい妖精の女達を口説くべきだと思う。


妖精王のセスナ様が人間の王子レオン様と仲が良くなられ、少し経った後、

ご病気が治られた弟君のサイ様がみえて、妖精王の妹君リリア様と親しくなられたのは、

大変喜ばしい事だ。でもあの男だけはどうしても気に入らない。

私の心に入り込んでくるような男は。


あの時期だけには絶対に会いたくない。



「リンツは最近機嫌が良くないようだな。」


セスナ様が突然私に問いかけてきた。


「そんな事はありません。私はいつもこんな感じです。」


「レオンの従者に気に入られているんだろ?お前ああいう男が好きでは

 なさそうだな。でもそう邪険に扱うなよ。あれはきっといい男だ。

 女達は紳士的でお優しい方だと言っていたぞ。レオンもそうとう

 信頼しているようだしな。」


「はあ・・、はい!」


危ないついつい気の抜けた返事をしてしまった。

どうやら私に対してだけああいう横柄な態度なのだな。

セスナ様にも分かるような感じでは示しがつかない。

しっかりしないとな。




今日は珍しくザットの姿がみえない。

ほっとしているのだが、ついついキョロキョロ探してしまうのは

どうしてだろうか。駄目だなにしてるんだ私は。

そう思っていると、後ろから子供たちとザットの声がした。


「おじさん、俺も持ち上げて。」

「私が先よ!」


「待て待て、順番な。」


後ろを振り返ると、大勢の子供たちに囲まれているザットがいた。

子供を抱え上げて遊んでいるようだ。


「ほら高いだろ。でもお前たち飛べるんだったな。」

「でもおじさんに持ち上げてもらうの楽しい。」

「おじさんって言うなよ、まだ若いんだからな。」


何故だか私は足が勝手にそちらに向かっていた。


「お前たちこのおじさんは仕事中だから、無理な事言ってはダメだぞ。」


遊んでいる子供たちを注意した。シュンとしてしまったが、

仕方がない。


「リンツ様、ごめんなさい。おじさん楽しかったよじゃあね。」

「またな。」


子供たちは手を振りながら飛んで行った。


「お前までおじさんはひどいな、リンツ。

 子供と遊んでて相手しなかったから怒ってんのか?」


「違います。本当に仕事してなかったから、注意しにきたんです。」


「だから王子を警護するだけだし、ここはなんせ安全だろ?」


「そうですかね。また前みたいに魔物が入ってくるかもしれませんし。」


「固いな。やっぱり固い。お前笑った事あんまりないだろ。

 俺は見たいなあ、笑った顔。美人なんだしさ。」


「男に美人とか、やめて下さい!」


「ははは。」


笑ってごまかすのか。なんでこんなに心を乱されなきゃいけないのか。

この男はなんでここまで私に気をかけるのか。分からない。


続く

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