表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの世界  作者: rara3
2/6

2 後編

周りを見渡すが見当たらない。近くにいる者に指示をだし探させることにした。

どこに行ったのか。


手当たり次第歩き探していると、水辺に佇んでいるのを見つけた。


「お前何をしている。」


肩を掴み振り向かせようとすると、


バシッ!!!


強烈な勢いで手を払ってきた。


「貴様、何を!!」


『くくくくっ・・・・・』


肩を震わせながらこちらを向かずに笑っている。


この雰囲気はこの男のものではない、何かに憑りつかれているようだ。

人間界から妖精界に入る前にナニカニ魅入られた。


そう考えている内に男はいつにまにか私を凝視していた。

最初見た顔とはまるで別人のような形相をし、なによりも目が赤い。


『妖精界に来れたのはラッキーだ。まさか『鍵』を人間が持ってたなんて

 本当にラッキーだ。戦闘力もなく、欲もなく、弱いお前らは滅びろよ。』


「お前は、何者だ!」


『さあ、何者だろうか?ただ破壊したいだけだ。この薄っぺらい妖精界を。』


―壊したいここを?―


『汚れたくないだけで、勝手に閉じこもった卑怯な妖精。

 呑気に生きて寿命だけ長く、人間を眺めては愚かだと失笑し

 下に見ている。神だと勘違いしていないか、お前ら?』


「なっ・・」


何も言えない、確かに神だとは思ってないが、人間を愚かだと思っている、

妖精は何もせずにただ生きている・・。間違ってはいない。

もう立っていられない、頭を抱えうずくまる。


『なあ、人間をここに入れようぜ。お前らどうなっちまうんだろうな?

 面白いだろ。妖精界がつまらないから人間見てたんだろ?

 それ欲求て言わないか?こいつらよりましだって見ていただけだろ?』


言葉が突き刺さる。頭が痛い。やめてくれ。私は本当に汚れたくなんかない。

妖精界は美しい、守りたいだけだ。人間なんて野蛮で、だから。

怖い。


『まず最初に妖精王、お前を汚してやるよ、手始めに自慢の羽をちぎってやる。』


その言葉が恐ろしい。

とっさに羽を背中に引っ込める。だが、体が動かない、。逃げたいのに逃げれない。

誰か・・・誰か助けてくれ・・・。


ガキッ!!


強い音が聞こえる。何があったのか、顔を上げる。

男が倒れていた。


「大丈夫でしたか?」


声がする方をゆっくり見上げると剣を持ったレオンが立っていた。


「柄の方で殴ったので気絶しているだけですよ。

 魔物が乗り移ってたんですね。」


そう言いながら私に手を差しのべる。


「何を言われたか分かりませんが、あなたはあなたでいればいいのですよ。

 魔物は言葉巧みに弱みに付け込み支配しようとするのです。

 人間はそれなりに免疫がありますが、純粋な妖精はきっとすぐに

 心を支配されてしまいます。」


差しのべられてた手を掴む。


「すまない、助かった。」


正直、心を見透かされたあの魔物の言葉が離れない。

体の震えは止まらず、心臓の音が大きくなっている。

あんなものと人間は同じ世界にいるのか。


グイッッーーーー


掴まれた手を勢いよく引っ張られたと思ったら

レオンの胸に引き寄せられ、抱きしめられていた。


「手が震えていましたね、落ち着いて下さい。」


髪を撫でられて、まるで子供の様な扱いだ。


「あなたは正しい。」


涙が出た。私は人間を魔物が言うように見下していた。

愚かだと、汚いのだと。

その私が正しいはずがないのにこの男は正しいと言うのだ。

優しく抱きしめてくれるのだ。


私はただこの胸で泣いていた。その間もレオンは何も言わずに

落ち着くまで抱きしめていてくれた。



「お前は、私が馬鹿だと思わないのか。」


「思いません。」


「私はお前たちにひどい事を言った。」


「言われて当然です。だから世界が二つになったのです。

 人間は純粋な妖精を傷つけてしまった。

 今もこうして魔物を連れてきてしまい、あなたに辛い思いをさせた。」


この男はどこまでも誠実なのだな。

自分の事よりも他人を思いやる、まさに王に相応しい。


「人間も捨てたもんじゃないな。」


ポツリと口に出した瞬間レオンが私に飛びついてきた。


「なっ!!」


「良かった!嫌われてなくて!!!」


なんか、小動物の様だなあと思いながら、ポンポンと背中を叩く。


「お兄様~~、レオン様~~!」


黄色い花を抱かえながらリリアがこちらに走ってくる。


「レオン様途中でいなくなってしまうからビックリしましたわ。」


「申し訳ありません。少し見て回りたくなってしまいまして。」


「そうでしたの?あら、この方寝ているのかしら?」


そうだった、従者の男が気絶をしていたのを忘れていた。

魔物はどうなったのだろうか?まさかここに・・・・。

そう思っていたら、


《魔物は一緒に気絶しています。ここを出たら彼から引き離します。》


耳元で小さくレオンが教えてくれた。


「何二人でコソコソしているのです?というか仲良くなってませんか?」


「従者は疲れて寝ているのだ。それに妖精界と人間界の話で盛り上がっていた。

 リリアにも後程話してあげるよ。」


「寝てる、すごい寝相ね・・。まあいいわ。それよりも、仲良しになるのは良い事ですわ。」


笑顔のリリアを見て、私も笑っていた。

本当に何か心に引っかかっていたものがとれた気がして、

レオンと目を合わせ、二人でまた笑った。




「それでは、この黄色い花を弟の為に使わせて頂きます。

 本当にありがとうございました。『鍵』をお返しします。」 


分かっているはずなのに、この男は私に言わせようとするのだ。


「また、元気になった弟と来るといい。」


「セスナ様!!」


驚いたリンツが声を上げる。


「人間は全てが絶望すべき存在ではない。そして私達も絶対的な存在でない。

 拒絶してしまっては真実は分からず、思い込みで進んでしまう。

 今一度ここから踏み出す事も大事であると思う。

 だが、世界を一つにすることはない。そうだろ、レオン?」


「そうですね。セスナ。わたしたちはこのくらいの距離が一番いいのです。」


「????」


リンツを含め周りの者は首を捻った。


「ふふっ、また来て下さるなら大歓迎ですわ。レオン様、元気になられた

 弟君を見せて下さい。」


「分かりました。必ず。」


レオンは軽く頭を下げて、感謝の意を示す。

リリアにとって最初から私と違って人間は妖精と同等と思っていたのだ。

我が妹ながら誇りに思う。


気絶した男をもう一人の従者が担いでいた。

リンツがその男を睨みつけ、男の方はニヤニヤしている。

何かあったのかもなと思ったが、そっとしておく事にした。


気絶した男はどうやら最近彼女にこっぴどく振られたらしく、

妖精界に来る前に隙をつかれ、魔物に入り込まれた様だった。


「それでは、またな。」


「あなたに会いにまた来ます。」


私の顔が赤くなったのに気付いたか、気付かなかったか分からないが、

レオンはそう言って人間界に戻っていった。


また妖精界に来るであろう、レオンに私は心躍らせる。

二つにわかれた世界、でも心はつながっていくであろう。


ー私たちのー



後編END


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ