主様は電波がお嫌い。
アップ。
凄く殺気だっている主様。片頬を引き攣らせている主様のご友人のお一人。
まぁ、仕方がないといえば仕方がないかもしれません。あの一件から調べてみれば出る出る。
「それで、他には何かあるのかな?」
まるで確信したようなセリフに私は、さらに念話で説明をしました。主様は、さすがというか私がいる位置を正確に把握しているようです。眼がバッチリと合いました。誤魔化しはきかないようです。私も自分が可愛いですし、彼女の場合は自業自得でしょう。助けません。
とはいえ、主様は規格外とは知っていますが、こうも簡単に見破られると影として役立っているかは謎です。まぁ、ご友人殿は私の位置を正確には把握できていないようですので、やはり主様が規格外なのでしょう。
『なんというか、まるで主役ですね』
「主役?」
自分は世界に愛されているだの。自分の為の世界だの。少々、いやかなり恥ずかしいセリフを吐いていました。こちらの監視にも気がつかないとは、本当に王家が支援している魔法学園に特別枠で入ったとは思えないほどの無能っぷりでした。いえ、あれは権力でねじ込んだ結果で間違いないと思います。さすがは異界の巫女様(笑
そういった個人的な見解も述べれば、それはもう大層綺麗な笑みを浮かべていました。ハッキリ言って恐いです。後ろに死神がいても不思議ではありません。
なまじ、主様は顔立ちが綺麗に整っている為、恐さが倍増です。
「ふーん、で、レイに近づいた理由は?」
『顔・権力・能力がある殿方には近づいているので詳しい理由は』
「そう。だからライにも来たのかな?」
『おそらくは』
ちなみにレイ様とは、私が使えている主様の異母弟様――末っ子です――の愛称で、ライ様は同じく異母弟――レイ様との母親とは違い側室様の子です――であります。
主様はとても弟様達を可愛がっております。私――王族とはもっとドロドログチャグチャだと思っていました。いえ、主様方は変わっているのだと思います。
側室様は王妃様を敬愛しており、協力の姿勢を崩しませんし――そもそも洗脳のごとく他の妃さまの良いところをひたすら息子達に自慢げに語った結果ともいえるのか皆さま大変仲がよろしいです。
その為「レイに近づく勘違い野郎――女だが野郎で十分だ――を駆除するぞ大作戦」というモノが兄弟様方の間で盛り上がっている議題です。少し覗きましたが、とても口に出すのは恐ろしい。まるで戦場に立つ武神の如く――顔立ちが違いました――話していました。ちなみにこのバカバカしい作戦命名はリュウ様――同じく主様の弟君の第5王子様――が命名されたそうです。
「クロ――少し確認したい事が出来たんだけど」
『御意』
主様の言葉は絶対です。そもそも主様のお手を煩わせる――客人は退場してもらわないといけません。
転生者の存在なら探すのは一苦労ですが、生憎と彼女は違います。勝手な事で、主様が好きな空間をあらされては困ります。
さぁ、後悔してもらいましょうか。巫女様。
登場人物(簡単に)
・クロ
転生者。親に捨てられ、暗殺者として育てられ、捨て駒にされ死にかけたところを救われる。
それ以来、ジェラールを唯一絶対の主様としてみている。
クロというのはジェラールが付けた名であり、昔飼っていた黒猫の名。
普通は「え?」となるのだが、クロは大切な名を下さり感謝している。