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なぞなぞ大会

「温めても、かき回してもとけない、頭を使ってとく(・・)モノはなーんだ?」


「「「なぞなぞ!」」」


お祭り広場の一画にある舞台の前には、かなりの人が詰めかけていた。

舞台上の一人のお姉さんがメガホンを使って呼びかけと、集まっている人たちが一斉答える。

このなぞなぞ大会定番の始まり方だ。


「はい、正解です。ということで司会進行はわたくし、リドラが務めさせていただきます。みなさん、なぞなぞに自信はありますかー?」


「おお!」

「もちろんだ!」

「まかせろー!」


いろいろな声がそこかしこから上がる。

ちょうど会場に到着した私たちは、その光景を一番後ろで見ていた。


「間に合ったわね。それじゃあ準備いい?」


「当ったり前じゃん。オレにぬかりはない」


「なあノイン、なぞなぞってなんだ?」


ジルバーの問いかけに、ディールがずっこけた。


「お前なぞなぞ知らないのかよ。いいか、なぞなぞってのはだな。一人が問題を出して、みんなでその答えが何か考えるんだよ。今、始まる時にやってたみたいにな」


「なぞなぞって、形があるのか?」


「ねえよ!さっきの温めるとかかき回すってのは言葉のあや(・・・・・)だ。そんなこともわからないんじゃ、オレには勝てないぞ」


「言葉の、あや?なるほど、難しいな」


「難しく考えんな。これはジョークみたいに考える方がいいぞ」


大真面目なジルバーに、ディールがしたり顔で解説している。

思いもよらない光景に、なんだか嬉しくなってくる。


「んだよノイン。なに笑ってんだよ」


「んー、ディールも成長したんだなあって思ってね」


「はあ?オレはいつも成長してるっての。それよりもジルバーだ、なぞなぞを知らないってどういう生活してきたんだよ」


「どういうもなにも、森の中で狩りをして生活してただけよ。私が行くまではほとんど一人で、ときどき魔女様に合うだけだったみたいだから、なぞなぞを出してくれる人もいなかったでしょうね」


「へえ、本当に森の中で一人で暮らしてたのか。オレには絶対にマネできないな」


ディールはしみじみとうなずいる。確かにみんなで騒ぐのが好きなディールでは、誰にも合わない生活なんてすぐに()を上げてしまうだろう。

私でもずっとは無理だけど。


「そんなことより、今はなぞなぞだ。勝負の方法は、どっちがたくさん正解できるかでいいんだよな?」


「そうね。みんなで答えを地面に書いて、答え合わせで一斉に見せ合うようにしましょう」


「いいぜ。なぞなぞも知らない素人だからって、オレは容赦しないからな」


ディールの挑戦的な微笑みに、ジルバーは真面目な顔で応じた。


「俺は負けない。……ところで、ジョークとはなんだ?」


ディールがずっこけた。


「お前、ジョークもわからないのかよ!」


「いや、今のはジョークだ」


「……!てめえ!!」


「ほら、遊んでないの。始まるわよ」


舞台上、お姉さんの横に一人の人が上がってきた。

村の外から来た観光客だろうか、オシャレな服を着た軽そうな若者。

彼はお姉さんからメガホンを受け取ってからおじぎをした。


「ワタシは行商人のアベーレ。名誉ある最初のなぞなぞを出すことができて幸運に思っています。ワタシは行商人という職業がてらいろいろな土地をまわるので、そこで色々な話を聞くことができるのです。例えば西の街では羽の生えた大きなトカゲがいて……」


「お前の話はどうでもいい!」


「早く問題を出せ!」


若者が話しを始めると、参加者からは罵声が上がる。

それを聞いた彼はあわてて話を中断し、小さな紙を取り出して読み上げた。


「失礼しました。では問題です。ワタシは行商人なので様々なものを売っていますが、その中で一つ、直さなければ使えないようなものがあります。ですがこれがなかなか人気の商品で、主に食べ物を扱うところを中心によく売れているのです。さてそれはいったい何でしょうか?」


問題が出されると、会場がわずかにざわめく。

若者は舞台の上からその様子を見て、自信ありげに微笑んでいる。

もう答えがわかったのか、数人が舞台へ上がっていく。

お姉さんへメガホン越しに内緒話をして、自分の答えが正解か不正解かを聞くのだ。


私にはこの問題はなかなか難しくて、考えているけどすぐには答えは出てこない。

ジルバーも首をかしげて悩んでいる。


「直さなければいけないのに、売れるのか?」


「そこはなぞなぞだから、本当に壊れているわけじゃないのよ」


「そうか、つまり壊れていないけど、壊れているみたいな名なんだな?」


「そうね。たぶんそうなのよ」


「それで食べ物を扱うところっていうと、食堂とかかな」


「お料理の道具とかじゃなくて?でもそうか、食材かもしれないのね。包丁の一種かと思ってたわ」


「だとすると……これでいいのかな?」


「あ、ちょっと待って。私も書くわ」


ジルバーが木の枝で地面に答えを書いていく。私もジルバーの隣にしゃがんで、小石で地面に答えを書いた。


「お前らもうわかったのかよ。くそ、オレだってこのくらいすぐに解ける!」


ディールも地面に木の枝で書き始めたが、ブツブツ言いながら消した書いたりを繰り返していた。


「はい、正解者が10人を超えました。ここで終了です!」


お姉さんがメガホンで叫んだ。


「それではアベーレさん、正解をどうぞ」


「はい、答えは【コショウ】です。故障(コショウ)だから直さなければ使えませんが、料理ではとても重要な調味料です。そして……」


正解が発表されると、歓声と罵声が飛び交った。

アベーレさんがまだ話をしているが、それを聞いている人はいない。


私たちもそんな人たちの後ろで、答え合わせをしていた。


「じゃあいい?せーのっ!」


私の答えはコショウ。ジルバーの答えもコショウ。そしてディールの答えは落花生だった。


「やった!私とジルバー正解だ」


「だな。よかった」


「いや違うんだよ。ほら落花生って殻を割らなきゃ食べれないじゃないか。だから手を加えるってことで、……ああくそっ!」


後ろで騒いでいる間に、いつの間にかアベーレさんは舞台を降りていた。

続いて舞台に上がったのは、たまに村で見かけるおじさんだった。


「あー、ワシはハンターをやっとるオットーちゅうもんじゃ。あー、話すこともないんで、早速なぞなぞにいくぞ。太陽の沈んだ夜にそいつは現れる。逃げても逃げても追ってきて、逆に追おうとすると逃げていく。つかず離れずワシらを見下ろす、そいつはいったい何者だ?」


オットーさんの言葉が終わった瞬間、舞台に数人が駆け上がる。それに続いてさらに何人かが舞台に上がり、階段に列ができた。


この問題、私もすぐにわかった。

横を見ればジルバーは難しい顔をして悩んでいる。

しかし今度はディールの方が先にわかったようだ。ニヤリと笑うとすぐに答えを書き始めた。


私も書き終わったところで、回答時間の終了が告げられる。


「今回はちょっと早かったですね。ではオットーさん、答えをどうぞ」


「あー、答えは【月】じゃ。せっかくいい問題を思いついたのにのう」


舞台上でハンターのおじさんが残念そうにしている。

私たちの答えは、私とディールが正解。ジルバーは答えナシで不正解だ。


「よっしゃ、一問ゲット!」


「くう。次こそ答えるぞ」


「そうそう。まだまだ時間はあるし、頑張ろう」


ジルバーはかなりやる気になってるようだ。これは私も余裕でいられないかもしれない。

舞台はハンターのおじさんが降りていくところだった。


「それではオットーさんに大きな拍手を!では次の出題者さん、どうぞ!」


そんな風にして、なぞなぞ大会は順調に進んでいった。


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