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第1夜 『DARK』

「今宵の月はなんと美しい…」


高層ビルの屋上、高さおよそ200メートルはあろう所に、一人の男がいた。


全身真っ黒な衣装に身を包み、目は鋭く、左目が赤い。髪は黒い短髪で、体は細く長身。

その不気味な姿は、まるで闇から来た悪魔のようだ。


200メートル下の騒音などは耳にも入らない様子で、細い目をさらに細めながら月を見上げる。


バサッ、バサッ


何かが男の回りを旋回し始めた。……黒いコウモリだ。


「うむ。やっと見つけたか。」

男は月から目を離し、手を伸ばした。そして、その先にコウモリがとまる。

「さて…そろそろ行くとしよう。そやつに会わなければなるまい。」


男は伸ばした手を上に上げ、パチンと指を鳴らした。

そして、それと同時に…一一一闇の中へと消えた。










一一一一一一一一一一一一一

「今日の月は綺麗だな…。」


僕は窓辺に座り、月を見ていた。こうやって月を見るのが、毎日の日課だった。


僕の名前は霧神 慎。中学2年生だ。


ふと、窓の近くを何かが飛んでいった。


「またコウモリだ…。」

ここ最近コウモリをよく見る。

なんか、不気味だな。


少し部屋が暑かったので、窓を開けた。


風が入ってくる。冷たくて、気持ちがいい。


時計はすでに2時を回っていた。

そろそろ寝ないと…。


ベットに行こうと窓に背を向けた時、床に人影が写った。


「……!?」

慌てて振り向くと、一一そこには全身真っ黒の衣装に身を包んだ男が立っていた一一。


「…?!」

    ・・

男は窓をすり抜けて、僕の前に立った。


僕の身長よりもはるかに高い。


「なっ……お前…誰だ?!」

僕が言うと、男は静かに僕を見つめた。

ゾクッとするような目だ。

左目だけが……赤い。


「うむ…。やはり。」

男が呟いた。


「?」


「貴様、名は?」


威厳のある口調に、少し怯んだ。


「霧神……慎。お前は何者なんだ?!一体ここへ何しに来た……?」


「うむ…。貴様は多分、自分を受け入れる。いいだろう。全て話そう。」


そう言って、男は話し始めた。


「お前は《DARK》と言う生き物を知っているか?」


「い、いや……。」


「DARKは闇の生き物だ。」


「闇の…生き物?じゃあ、バンパイアとか、狼男とかの仲間ってこと?」


「それは違う。バンパイアも狼男も闇の生き物とはいえ実在し、現に皆に知られている。だが、DARKは闇そのものだ。闇によって創造され、闇と共に生きる。」


「……。僕に…関係ある?」


「最後まで聞け、少年。DARKを普通の人間が見ることはできない。が、ある能力を持つ一族には奴が見える。そして奴を殺すことができる。率直に言えば、お前はその一族の血を引く。つまりDARKが見える者だ。」


「ちょっ、ちょっと待て!DARKとか一族とか何か知らないけど、僕がその一族の血を引いているわけないだろ!?」


僕が猛反論すると、男は長い黒のコートポケットから、何か取り出した。


ザッ、と床に広げる。


「……これは?」


「代々の家系図だ。お前はここに、我輩はここにいる。」


紙の端を指さして言った。



確かに僕の名前が載っている。

父さんの名前もだ。

家系図は縦に長く、霧神きりがみ家、やなぎ家、八丈はちじょう家に別れている。

ふと見ると、男の名前も書いてあった。……柳 龍一。


昔、聞いたことのあるような名前だ。…どこだっけ…?


「理解したか。」

龍が言った。


「あ、あぁ。でも何で今なんだ?父さんは普通の仕事してるし、特に何も…。」


「DARKが、復活したからだ。DARKは人型の化け物で、人間を片っ端から食いつくす。我輩たちが止めねば、やがて世界は闇となる。」


「そんな…。」


「ただ、DARKは一日に一人しか襲わない。だが、これは統率者が現れる前までの事だがな。もう時間の問題だ。」


龍は家系図を片付けながら言った。


「統率者は…人間?」


「だろうな。我輩が思うに統率者は地位と名声の為に人を殺すことができる人間…だ。

DARKを倒すには旅に出なければならん。」


「僕に、旅に出ろと?」


「そうだ。お前は我輩が思っている以上に力があるだろうからな。」


「もし、…無理と言ったら…?」

「世界が、闇になると言ったろう?お前も、お前の家族、友、全てがDARKに支配される。光の届かない、密閉された闇の地獄になる。」


信じられなかった。

いや、まさか一一一一。

でも、本当に……?


「でも、そんなこと急に言われても……。さっき、ある能力って言ったよな?それって……」


「『神』の事か?」


「じん……?」


「一族特有の能力のことだ。一人一人が持つ力は違うが…。我輩は《重力》を操る事ができる。」


「重力っ!?」


僕が驚いて声を出すと、龍は片手を前に出した。


「重力を曲げる力。ようは、……こういう事だ。」

龍は前に出した手を上に挙げた。


と、同時に僕の身体が床から離れる。


一一なっ、何だこれっ?!


「なっ、おい!降ろせ!!」


龍は、分かったか、と言わんばかりの顔をしていた。


「わ、分かったよ!分かったから、降ろせ!」


スッと、手が降りる。


「ふぅ……。」


床に付いた僕は龍を見つめた。

一一龍が言ってること…本当かもな…。

僕は一度深呼吸し、落ち着いて言った。

「僕がその一族ってことで…、旅に出ろっていうのも理解した。でも、どうやって旅に出るんだ?世界を旅したって何にもならないんじや……。」


「いや。世界も旅するが…、主には闇の世界に行く。DARKが住むと言われ、人間界と同じ時空に存在するもう一つの世界だ。」

「……。」


頭がごちゃごちゃだ。


とにかく、頭の中を整理しよう。


僕が今、ここで決断をしなければこの先の未来が闇となる。

それは確かなようだ。


………僕の意思次第ってことか。



ふと、思った。


一一…僕の…家族はどうなる…?


「家族は………。」


「辛いが、別れだ。……いや、上手くいけば2、3ヶ月の行方不明で大丈夫かもしれん…。」


「どういう事?」


「闇の世界は時の流れが違う。ここでの1日が、あっちでの100年ということもある。我輩はそこで約4万年生きてきた。」


「よ、4万年!?」


どうりで言葉が古臭いわけだ。


「話はこれで終わりだ。お前の返答は何だ?」


「………。」


思わず口を閉じる。

悪いことばかり頭をよぎる。

でも、一一一…。


いや、もういい。

決めた。


僕は龍を見上げ、ゆっくり呟いた。

「分かった。お前に、付いていく。」


一これが、僕の答えだ。一一



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