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片思いの彼女に告白しようと思ったら告白されてしまったシリーズ

片思いの彼女に告白しようと思ったら告白されてしまったPART2

作者: 神村 律子

 名留なる志須人しすとはこの春、私立の天翔学園高等部に入学した。中学時代から女子にモテモテだった志須人は入学式の日に何人もの女子に告白された。しかし、彼には心に決めた人がいた。三年生の輝木かがやきひかる。六月まで生徒会長を務めていた才色兼備を具現化したような存在である。

(同級生の女子にはない気品と色気がある。必ず彼女にしてみせる)

 今まで告白してふられた事がない志須人はすでに光を落としたつもりでいた。


 それから数日後。志須人はいつものように数多くの女子達に囲まれて登校していた。志須人は微笑みながら女子達と話していたが、街路樹の陰から顔を覗かせている光に気づき、女子の輪を抜け出して駆け寄った。女子達からは悲鳴にも似た声が上がったが、相手が光では太刀打ちできないと思ったのか、追いかける者はいなかった。

「輝木先輩、おはようございます」

 志須人は絶好のチャンスだと考え、たくさんの女子を落としてきた会心の笑顔で光を見た。

「ああ、信じられないわ。名留君から私に声をかけてくれるなんて」

 光は頬を朱に染めて俯き、囁くような声で告げた。その言葉に志須人は驚いた。

(輝木さんには恋人がいるっていう噂だったけど、違うのか?)

 光の潤んだ瞳に吸い込まれそうになりながら、志須人は考えた。

「入学式の時に見かけてから、ずっと頭から離れないほど、貴方に惹かれていました。よかったら、お付き合いしてくれませんか?」

 光は更に顔を赤くして言った。光の告白を聞きつけた女子達が今度は正真正銘の悲鳴を上げた。

(告白する前に告白されたぞ)

 志須人はちょっとだけ動揺した。

(まあ、告白させたんだから、僕の勝ちという事か)

 志須人は光に見えないようにニヤリとしてから、

「僕の方こそ、輝木先輩にそんな事を言ってもらえるなんて思っていませんでした。こちらこそ、よろしくお願いします」

 そう言って、優雅にお辞儀をした。また女子達の悲鳴が聞こえた。

「嬉しい、名留君!」

 余程感情がたかぶったのか、光が志須人に抱きついた。

(うわ!)

 女子の扱いには慣れている志須人も、この光の行動には目を見開いてしまった。

(輝木さん、見た目より胸が大きいな……)

 光の柔らかい膨らみを感じて、志須人は恍惚とした。女子達の悲鳴はすでに絶叫に変わっていた。


 こうして、志須人と光は全校公認のカップルとなり、交際を始めた。光が想像以上に積極的で、志須人は面食らってしまう事がしばしばあった。付き合い始めて一ヶ月で、キスは数えきれないほどした。そして、その先も。だが、最後までは志須人がどれ程望んでもさせてくれなかった。

(早急に過ぎたか)

 今までの女子達はキスまで行かないうちに志須人の方で飽きてしまい、別れていた。だから、キスより先に進んだのは光が初めてだった。そのせいでもっと先までいけると思い、焦ってしまったのだと判断した。


 それから更に一ヶ月が過ぎた。志須人は自分がすっかり光に溺れているのに気づいていた。キスを拒んだ女子とはその瞬間に別れるくらいだったのだが、光に最後までをいくら拒まれても別れようと思わない自分に驚いていた。

(落としたつもりが落とされていたのか)

 光の部屋で睦み合った後で志須人は苦笑いした。

「ねえ、志須人、お願いがあるの」

 光が甘えた声で志須人の背中に抱きついて来る。志須人は光の手を握り、

「何?」

 優しく微笑んで尋ねた。すると光は顔を赤らめ、

「しばらく会えなくなるの。二人の関係をより深くするために」

 志須人は意味がわからなかったのでキョトンとした。

「やっと全てを任せられるお医者様が見つかったの。ようやく私も、心身ともに女の子になれるわ」

 光がギュウッと志須人を抱きしめていなければ、彼はそのまま倒れていたかも知れない。

「次に会った時は、最後までさせてあげるね、志須人」

 光のその言葉は志須人には届いていなかった。

ということでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 志須人、うぬぼれすぎだぞ! 光がそこまでしてくれると言うのなら、最後まで責任を取るべきだね。 一度好きになってしまったらたとえ相手が幽霊だったとしても好きでいられる自身があるボクでもこれは…
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