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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

22才フリーター、副業ただの殺人鬼。

作者: NAGI

 間違えて付けてしまった血液を、駅でにこやかなお姉さんが配ってくれたティッシュで拭き取る。確かあのバイト、配った数によってバイト代が代わるんだよななどと、どうでもいい事を考えながら暫くぼんやりしていた。


 自分の前に転がっているのは、先程生命活動を行っていた肉の塊。手足合わせて20本ある指は全て切断され、体と頭を繋ぐ筈の首は骨しか残っていない。周りの肉は全て削ぎ落とした。

 だけどその顔は、苦しみとは程遠く、だけど喜びとも取れぬ、まさに今の今までごく普通に同じ日々を繰り返してきたと言うような、ただの無表情を保っている。それは今の彼女の身体の状況と明らかにミスマッチであり、実にシュールな印象を抱かせた。


 自分はそれを見て、ただ一言「ごちそうさまです」と、気持ちの込もっていない声で呟く。頭の中でぼんやりと、この人は自分が死んだ事にも気づいてないのだろうなとまるで他人事の様に考えていた。



 自分の名前は入水水(いりみずすい)、22才。コンビニの深夜アルバイトをしている、ただのしがない殺人鬼だ。







***







『東京新宿駅で、30代と思われる女性の死体がー』ブツリッ


 面白そうな番組を探していたが、特にこれといったものはなく、すぐにテレビを消す。

 2日前の事件の犯人はまだ捕まっていないらしい。まあ、捕まってたら自分はここに居ないのだけれど、ごくたまに日本の警察もっと頑張れよと言いたくなる時がある。ゴロンとソファーに横たわり、手入れしたばかりの真新しい武器を弄ぶ。


 鈍い鉛色に輝くそれは普段使うナイフとフォークよりも重く、切れ味がある。まだ人一人しか殺していない小さな凶器をお手玉のように空中に放り投げながら、流石特注品ですと心の中で大絶賛した。


 4日前に届いた自分の友達が作ってくれた武器は、一見するとただのナイフとフォークにしか見えない。

 だけどそれは、裏の世界ではとても有名な武器職人が作った武器であり、人殺しを目的とした明確な凶器なのだ。


 彼には本当に感謝している。この言葉をそのまま彼に言ったら、苦虫を噛み潰したような笑みで「この嘘吐き」と言って来るのだろうけど。


 ジャグリングごっこを止めて、ソファーの上で丸くなる。目覚ましは午後9時にセットしておく。今の時間は午前11時。流石に眠くなってきた。武器は机の上に放り投げ、目を瞑る。すぐに睡魔が襲ってきた。


 うとうとと夢と現実を行ったり来たりして、今日も誰か一人殺そうと考えながら意識を手放した。



 おやすみなさい。


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