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スマホを充電するために、曹操と織田信長が異世界で奮闘します  作者: 「大和 尚羅夢」小花羅夢一生推し


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9/30

勝利の代償

データ分解砲の一撃は、確かに「正史の守護者」を機能停止させた。

だが、その代償は大きかった。

【警告:バッテリー残量、急低下中!】

【5%...4%...3%...】

携帯の画面が、赤く、危険な速さで点滅し始める。

「あ、ちょっと、待って……」羅夢は慌てて画面をタップしようとしたが、指が触れる前に――

【2%...1%...】

【エネルギー枯渇。緊急シャットダウンを開始します。】

小弥シャオミーの声が、いつもの陽気さを失い、機械的な単調な響きに変わった。

【ユーザー羅夢さん。】

【本機は、一時的に機能を停止します。】

【再起動には、新たなエネルギー補充が必要です。】

【それまで、お元気で。】

そして、最後の通知が表示された。

【0%】

画面の光が、スーッと消えた。

真っ暗。何の反応もない。

「……天機匣?」曹操が眉をひそめて近づいた。

信長も覗き込んだ。「動かぬのか?」

羅夢は、冷たくなった携帯の画面を、呆然と見つめていた。

「……ダメだ」彼女の声は震えていた。「バッテリーが……切れた」

「切れた?」趙雲が首を傾げた。「紐が切れた、というのか?」

「違う!エネルギーが!もう動かないってこと!」

羅夢は頭を抱えた。ああ、もう。充電したばかりなのに!95%まで回復したのに!あのデータ分解砲で、一気にゼロまで持っていかれた!

曹操は慎重に携帯を取り上げ、揺らしてみた。反応なし。叩いてみた。反応なし。

「……力尽きて、眠りに就いたのか」彼は深く頷いた。「激戦の後、休息が必要なのは、人も神器も同じであろう」

「いや、それはスリープモードじゃなくて――」

信長も納得したようにうなずいた。「なるほど、ならば、そっとしておいてやるべきだな。いつか再び目覚める時を待つ」

「目覚めないよ!充電しないと!」

「充電?」趙雲が聞き返した。「先程の、雷のようなものを、再び?」

「そうです!でも雷はもう止んだし、あんな危険なこと二度とできません!」

三人の英雄は、羅夢のパニック状態を、少し困惑しながら見ていた。

曹操が冷静に分析した。「では、雷以外の方法で、此の『天機匣』を目覚めさせねばならぬ」

「でも、どうやって!?ここにコンセントも充電器もないんです!」

「落ち着け」信長が大きな手を羅夢の肩に置いた。「必ず方法はある。我等が考える」

趙雲は優しく言った。「確かに、此の天機匣が無ければ、我々は困る。あなたの世界との繋がりも、断たれてしまう」

その言葉で、羅夢ははっとした。

現実世界との繋がり。

携帯が使えなければ、メッセージも来ない。状況もわからない。

彼女は顔を上げ、三人を見た。

曹操は冷静だが、目には何かを考えている光があった。信長は相変わらず楽観的で、しかし真剣だ。趙雲は心配そうにこちらを見ている。

彼らは、本当に彼女を仲間と思っている。この異常な世界で、共に生き延びようとしている。

「……ありがとう」羅夢は小さく言った。「でも、充電の方法、本当に思いつきません」

「ならば、探せば良い」曹操が言った。「此の世界は、我々の知る世界ではない。ならば、我々の知らぬ『エネルギー』があるかもしれぬ」

信長が笑った。「そうだ!探索だ!新たな地を踏破し、新たな物を見つける!これこそ、我が生き甲斐というもの!」

趙雲は槍を握り直した。「では、どこへ向かえば良いでしょうか」

その時、暗くなった携帯の画面が、かすかに一瞬、青白く光った。

そして、一行の文字が浮かび上がった。

【緊急バックアップ起動。最終メッセージを表示します。】

【座標:北北西、約二十里。古代遺跡『時空の釜』の痕跡を検知。】

【推定:地熱エネルギーを利用した充電が可能かもしれません。】

【危険度:高い。歴史修正者の監視が強まっています。】

【選択はあなたに委ねます。】

【……では、また。】

文字は消えた。

再び真っ暗。

四人は、その一瞬の光と言葉を、静かに見つめていた。

「……声がしたな」信長が呟いた。

「文字だった」曹操は目を細めた。「『時空の釜』……か」

「地熱エネルギー……」羅夢は考えた。温泉?火山?「それで、充電できるかもしれない……」

趙雲が真っ先に立ち上がった。「では、行きましょう。北北西、二十里」

「待て」曹操が手を上げた。「『危険度高し』とも書いてあった。歴史修正者の監視が強まっている」

「ならば、尚更急がねば」信長は逆にやる気を見せた。「奴らが何かを隠している証拠だ!」

羅夢は、暗い携帯を見つめた。小弥は、最後の力を振り絞って、この情報を残してくれたのか。

「……行きます」彼女は言った。「ここでじっとしてても、何も始まらない」

曹操は少し間を置き、そして頷いた。「よかろう。だが、慎重にだ」

彼は暗い携帯を、自分の懐にしまった。

「曹公?」羅夢は目を見開いた。

「預かる」曹操は淡々と言った。「汝の手なら、戦闘中に失う恐れがある。我が方が安全だ」

「でも――」

「文句があるか?」

その威圧感のある目に、羅夢は言葉を飲み込んだ。

「……いえ、お願いします」

信長が大笑いした。「はは!曹公、随分と気に入ったようだな、此の天機匣!」

「道具は、適切に扱わねばならぬ」曹操は平静を保った。「では、北北西へ向かうぞ」

四人は、再び歩き始めた。

雷雨の後の空気は清々しく、地面は濡れていた。遠くには、奇妙に混ざり合った山並みが続いている。

彼らは、暗くなった携帯と、わずかな希望を胸に、新たな目的地へと向かった。


現実世界・東京・羅夢のアパート

鍵の音がして、ドアが開いた。

「ただいまー……あれ?」

入ってきたのは、羅夢のルームメイト、小林ゆりだった。十九歳、専門学校生。今日は学校が早く終わり、久しぶりに昼間からアパートに戻ってきた。

「羅夢さん?いるー?」

応答がない。

ゆりはリビングに入り、電気をつけた。

「あれ?まだバイト?」

彼女はキッチンに向かい、水を飲んだ。そして、羅夢の部屋の前を通りかかる時、ドアが少し開いているのに気づいた。

「ん?開いてる……」

ゆりはそっとドアを押し開けた。

部屋の中は、整頓されていた。ベッドはきちんと整えられている。

しかし、ベッドの上に、人が横たわっていた。

「羅夢さん?寝てるの?今日、バイトじゃないの?」

ゆりは近づいた。

羅夢は、目を閉じて横たわっていた。顔色は悪くない。まるで、深い眠りについているようだ。

「羅夢さん?起きてー、もう三時だよ?」

揺すってみる。反応なし。

「……え?」ゆりは眉をひそめた。「羅夢さん?大丈夫?」

頬を軽く叩いてみる。まだ反応なし。

呼吸はある。脈もある。ただ、目を覚まさない。

「ね、ねえ……冗談でしょ?」ゆりの声が少し震えた。「羅夢さん?起きてよ!」

だが、羅夢は動かない。

ゆりは慌ててポケットから自分の携帯を取り出そうとした。その時、彼女は気づいた。

ベッドの傍らに、携帯の充電器が転がっている。コードは伸びきって、コンセントに繋がっている。しかし、その先端――携帯をつなぐ部分が、空だ。

「あれ?携帯は?」

ゆりは周囲を見回した。机の上、ベッドの下、カバンの中。携帯がない。

充電器はあるのに、携帯がない。

「おかしい……羅夢さん、携帯どこにもない……」

彼女は自分の携帯で、まず羅夢の番号にかけてみた。

呼び出し音が鳴る――が、部屋のどこからも着信音が聞こえない。圏外にもならない。ただ、鳴り続ける。

「つながらない……部屋にない……」

ゆりの心拍数が上がった。変だ。おかしい。

彼女はもう一度、羅夢の様子を確認した。深い眠り。いや、意識不明だ。

そして、充電器だけがある。携帯はない。

「もしかして……」ゆりは恐る恐る考えた。「誰かが……部屋に入って……羅夢さんを襲って……携帯を奪って……」

そんな可能性が頭をよぎった。

彼女は慌てて、110番を押そうとした。

その時、携帯が震えた。メッセージが来た。

差出人は――羅夢がバイトしているコンビニの店長だ。

『小林さん?羅さんと連絡取れてますか?今日も無断欠勤で、本当に困ってるんですけど』

ゆりはそのメッセージを見て、少し躊躇った。

店長に、今の状況を伝えるべきか?

でも、この店長、羅夢さんが嫌がってたし……あのハゲの痴漢まがい……

彼女は決断した。

まず、救急車だ。そして警察。

彼女は110番を押した。

「もしもし、救急車と警察をお願いします。友達が意識不明で、携帯もなくなっています」

オペレーターの落ち着いた声が返ってくる。住所を聞かれ、状況を説明する。

その間も、彼女は羅夢の顔を見つめていた。

「大丈夫、羅夢さん。すぐ助けが来るから」

しかし、彼女にはわからなかった。

この意識不明の友達が、今、異世界で、歴史的な英雄たちと冒険しているなんて。


異世界・北北西への道中

「あくしょ!」

羅夢は突然、くしゃみをした。

「風邪か?」趙雲が心配そうに聞いた。

「いえ、なんか……急に寒気が」羅夢は腕をさすった。現実世界の身体が、冷たい床に横たわっているとは知らずに。

曹操が空を見上げた。「確かに、風が冷たくなってきた。季節がおかしいのか、それとも此の地の気候か」

「どちらにせよ、早く進まねば」信長が先頭を歩きながら言った。「日が暮れる前に、適当な野営地を見つけよう」

彼らは森の中を進んでいた。木々は、針葉樹と広葉樹が不自然に混ざり合い、時折、石柱のような遺跡の一部が顔を出す。

「此の辺り、何だか様子が違うな」趙雲が警戒しながら言った。「空気が重い」

「同感だ」曹操も周囲を観察している。「生き物の気配が少ない」

羅夢は、ふと、自分の体の感覚に気づいた。少し、だるい。まるで、長時間寝た後のような、重い感じ。

もしかして、現実世界の身体が……?

彼は首を振った。今、そんなこと考えてる場合じゃない。

「曹公」信長が呼びかけた。「そ此れ、天機匣、少しでも反応はあるか?」

曹操は懐から携帯を取り出し、様子を見た。相変わらず真っ暗だ。

「無い」

「くっ……困ったものだ」

その時、趙雲が突然立ち止まった。

「何か来る」

四人は瞬間的に身を潜めた。

道の向こうから、奇妙な行列が近づいてくる。

人間ではあるが、その動きがぎこちない。服装は、三国時代の庶民のものから、戦国時代の農民のものまで、ばらばらだ。

そして、彼らの顔は――ぼんやりとしていて、特徴がない。まるで、未完成の絵のようだ。

「……あれは、何だ?」羅夢が小声で言った。

【知識:データ残留体】

突然、脳内にシステムの声が聞こえた。いや、声ではない。文字が浮かぶような感覚だ。

【説明:時空融合により、不完全に複製された一般人のデータ。自我は薄く、目的もなく彷徨っている。】

【危険度:低い(通常は無害)。ただし、大量に集まると、データの渦を起こす可能性がある)。】

「小弥?」羅夢は思わず声に出した。

しかし、返答はない。ただ、説明が続く。

【注意:彼らに触れると、一時的に記憶が混ざる可能性があります。お勧めしません。】

説明が終わると、また静寂が戻った。

「……さっきのは?」羅夢は呟いた。

「何か聞こえたのか?」曹操が聞いた。

「ええ、でも……声じゃなくて、文字が……頭に浮かんだ」

信長が興味深そうに眉を上げた。「天機匣が、直接に語りかけたのか?」

「多分……オフライン翻訳とか、そういう機能が、まだ少し残ってるのかも……」

趙雲が行列を観察している。「彼らは、我々に気づいていないようだ。このまま通り過ぎるのを待とう」

四人は息を潜め、奇妙な行列が通り過ぎるのを待った。

データ残留体たちは、無表情で、無言で、ただ前へ前へと歩いていく。その数、五十人以上はいるだろう。

羅夢はその中の一人――若い女性のデータ残留体を見つめていた。彼女の服装は、現代のジーンズとTシャツに似ているが、所々が古代風の布で補われている。

その女性が、ふと、羅夢の隠れている方を見た。

目が合った。

一瞬、女性のぼんやりとした顔に、かすかな表情――驚きのようなものが浮かんだ。

そして、彼女の口が動いた。

声は聞こえないが、唇の動きで、何かを言っているのがわかる。

『助けて』

そう、読めた。

次の瞬間、女性は行列に押し流されるように、前へと進んでいった。

羅夢は凍りついた。

「……今の、見た?」彼女は声を震わせて聞いた。

「何が?」曹操は鋭い目で行列を見つめていた。

「あの女性が……『助けて』って……」

信長が眉をひそめた。「我々に?」

「そう……みたい」

趙雲が厳しい表情を浮かべた。「彼らは、囚われているのか?」

「データ残留体……」羅夢はシステムの説明を思い出した。「不完全に複製された……つまり、本来の人間じゃなくて、コピー?幽霊みたいなもの?」

曹操が深く考え込んだ。「時空融合の犠牲者……か」

行列は遠ざかっていった。森の中に消えていく。

再び静寂が訪れた。

しかし、重い空気が残った。

「此の世界は」信長が低く言った。「思った以上に、歪んでいるようだな」

「同意だ」曹操は立ち上がった。「早く『時空の釜』を見つけ、天機匣を目覚めさせねばならぬ。此の世界の真実を知るために」

羅夢も立ち上がり、うなずいた。

彼女はもう、現実世界に戻りたいだけではない。

この世界で、あの女性のような「残留体」が、何なのか知りたい。

歴史修正者とは何か。

時空融合とは何か。

全てを知りたい。

四人は、再び歩き始めた。

太陽は西に傾き始め、長い影を伸ばしていた。

懐には、暗い携帯。

胸には、新たな決意。

そして現実世界では――救急車のサイレンが、アパート街に響き始めていた。


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