小弥の熱烈実況
雷が落ちた。
いや、正確には――落ちようとした。
曹操の剣と、信長の太刀と、趙雲の槍が、三つ巴のように突き立てられたその瞬間、空から伸びた白熱の稲妻は、まるで迷ったかのように三つの尖端の間で分裂し、蜘蛛の巣状に広がった。
その光のネットワークの中心に、羅夢が掲げた携帯があった。
【充電開始!】
システムの声が、雷鳴にかき消されそうな轟音の中で、なぜか鮮明に脳内に響いた。
【充電率:0.1%...0.2%...】
「動いている!」羅夢が叫んだ。手に伝わる微かな振動。充電器を繋いだ時の、あの感触だ。
【曹操の剣が優れた避雷針として機能しています!導電効率+20%!】
【織田信長の太刀が革新的な雷吸引技術を発動!充電速度+15%!】
【趙雲の槍が精妙な雷分散制御を達成!安全性+30%!】
【現在の充電率:1%!順調です!(๑•̀ㅂ•́)و✧】
「はっ!わしの刀が『革新的』だと!?」信長が轟音の中でも大笑いした。「当然だ!」
曹操は眉一つ動かさず、剣をしっかりと握りしめていた。「雷の力……思ったより……穏やかだな……」
趙雲は真剣な表情で槍を制御している。「雷の流れを……分散させねば……」
彼らの周囲には、雷のエネルギーが青白い光の網目を作り、地面を這っていた。草は焦げ、土は黒く変色する。しかし不思議と、四人の立っている中心部は無傷だった。
【充電率:5%!】
【バッテリー残量:15% → 20%!】
「上がってる!」羅夢は声を震わせた。「本当に上がってる!」
【ただし、雷エネルギーは不安定です!】
【周囲に歴史修正者の反応を検知!】
【どうやら雷活動を『異常データ』として感知したようです!】
【新しい敵がやってきます!戦闘準備をお願いします!】
「またか!」信長が咂舌した。「ちょうど良い!雷を浴びながらの戦いなど、初めてだ!」
曹操は冷静に状況を把握した。「趙雲、羅夢を護れ。我らが前を遮る」
「承知!」
趙雲が槍を構え、羅夢の前に立った。その槍の先端からは、まだ青白い雷の残光がちらついている。
雷雲がまだ去らない空から、新たな影が降りてきた。今回は、さっきの無貌の兵士たちとは違う。
【新たな敵性データ生命体を検知!】
【名称:歴史修正者・雷撃対応型「霹靂兵」】
【特徴:雷属性ダメージに耐性があります!普通の攻撃が通りにくい!】
【弱点:雷以外の属性……ですが今そんなものありません!】
【戦闘提案:とにかく頑張ってください!】
「雷以外の属性……」羅夢は絶望的に呟いた。「今ここに、雷しかないのに!」
「ならば!」信長が叫んだ。「雷を以て雷を制すのだ!」
彼は太刀を振るい、まだ刀身にまとわりつく雷光を、敵の群れに放った。
青白い閃光が走り、数体の霹靂兵を貫いた。しかし、倒れたのはその数体だけだった。残りはむしろ、雷光を吸収するように体を輝かせた。
【ダメージ軽減!敵は雷属性攻撃をある程度吸収します!】
【提案:物理攻撃が効果的かもしれません!】
「物理攻撃だと!」曹操が剣を構えた。「ならば、雷など関係ない!」
彼は地面を蹴り、敵の群れに突っ込んでいった。剣閃が走り、二体の霹靂兵が切断された。しかし、その傷口からは火花が散るだけで、血は流れない。
趙雲も槍を突き出し、一体を貫いた。敵は倒れたが、すぐにまた起き上がろうとする。
「倒れぬ!?」趙雲の目が見開かれた。
【データ生命体は物理ダメージでも完全には消滅しません!】
【核心となるデータブロックを破壊する必要があります!】
【核心の位置:胸部中央に光る核!】
「核か!」信長が叫んだ。「ならば、そこを狙うだけだ!」
戦闘が再開された。
曹操と信長、趙雲の三人が、霹靂兵の群れに囲まれながら戦う。雷はまだ落ち続けており、彼らの武器は常に青白い光を帯びている。
羅夢はその中心で、携帯を掲げ続けていた。充電率はゆっくりと、しかし確実に上がっている。
【充電率:15%!バッテリー残量:35%!】
【しかし、敵の数が増えています!】
「増えてる……」羅夢は震える声で言った。
確かに、周囲にはさらに多くの霹靂兵が現れていた。数十体?いや、百体近くかもしれない。
曹操たちは善戦していたが、無限に増える敵には限界がある。
「こうは問屋が卸さぬ!」信長が笑いながら叫んだ。「いくらでも来い!」
しかし、彼の呼吸も乱れ始めていた。雷を浴び続けているせいか、それとも敵の数が多すぎるせいか。
【危機的状況!ユーザー羅夢の戦闘参加を提案します!】
【提案:『Plants vs. Zombies』を再起動し、戦闘支援を行ってください!】
【バッテリー消費は大きいですが、今は充電中です!】
「またあのゲーム!?」羅夢は叫んだ。「でも、今携帯を動かしたら、充電が……」
【充電とゲームの同時実行は可能です!】
【ただし、発熱量が増大し、感電リスクが上昇します!】
【あなたの選択は?】
羅夢は一瞬、逡巡した。
目の前で、曹操の剣が敵の攻撃をかろうじて防いだ。信長の陣羽織に、焦げた跡ができた。趙雲の槍の動きが、ほんの少し鈍っている。
「……やる!」彼女は決断した。
片手で携帯を掲げ続け、もう片方の手で画面を操作する。難しいが、不可能ではない。
『Plants vs. Zombies』を再起動。
ゲーム画面が立ち上がる。前回の続きから――次のレベルだ。
【レベル2開始!】
【新たな敵:コンペイトウを食べたゾンビ(強化版)】
【提案:サンフラワーを植えて太陽を集め、早急に防御ラインを構築してください!】
「今そんなこと言ってる場合じゃない!」羅夢は心の中で叫びながら、必死に画面をタップした。
サンフラワーを植える。太陽を集める。エンドウ射手を植える。
現実の戦場では、曹操たちが必死に戦っている。
「左!」羅夢が叫んだ。「左からたくさん来てます!」
曹操が即座に左を向き、剣を振るった。三体の敵が倒れる。
「右の隙間!」今度は趙雲が動き、槍で敵を押し返す。
信長が大笑いした。「おお、娘!其れは良い目だ!」
【小弥の実況モード、起動!】
【さあ、熱い実況で戦闘を盛り上げましょう!(ノ◕ヮ◕)ノ:・゜✧】*
「え、今から実況!?」羅夢は驚いたが、もう止められない。
【さあ、見てください!曹操将軍の見事な剣捌き!】
【一閃!二閃!三閃!三人の敵が同時にデータ分解!】
【これぞ覇者の気迫!攻撃力+10%のボーナスを発動中!】
曹操の剣が、確かに一瞬青白く輝いた。次の一撃で、敵の鎧を軽々と切り裂いた。
「……何だ、この力は」彼は一瞬、剣を見つめた。
【続いては織田将軍!革新の意志が攻撃速度を加速させます!】
【太刀の軌跡、目にも留まらぬ速さ!攻速+15%!】
信長の太刀が、確かにさっきより速く動いている。残像が描かれ、五体の敵が一度に倒された。
「はは!確かに速くなった!」
【そして趙雲!彼の冷静な戦場分析が、チーム全体の防御力を向上させています!】
【槍の範囲が広がり、羅夢さんを守る壁がさらに固く!】
趙雲の槍が、円を描くように振るわれ、周囲の敵を一掃した。その動きは、確かにさっきより洗練されている。
「……なるほど」趙雲は呟いた。「戦いながら、状況を分析する……それが力になるのか」
【さあ、羅夢さん!あなたの番です!】
【画面をタップ!サンフラワーを植えて!太陽を集めて!】
【エンドウ射手、発射!命中!】
羅夢は必死に画面をタップし続けた。ゲーム内では、ゾンビの群れが迫っている。
現実では、霹靂兵の群れが迫っている。
【見てください!ゲーム内の敵が倒されるたび、現実の敵の動きが鈍くなります!】
【データ対データの干渉が、最大効率で発揮されています!】
【これは科学的というより、魔法です!いや、データマジックです!】
確かに、羅夢がゲーム内でゾンビを倒すたび、現実の霹靂兵の動きが一瞬止まる。隙が生まれる。
曹操たちはその隙を逃さない。
「今だ!」曹操が叫び、剣を突き出す。五体の敵が貫かれる。
「面白い!」信長が笑いながら太刀を振るう。「ゲームと現実が響き合うとは!」
趙雲は一言も発さず、しかし確実に敵を倒し続ける。彼の槍には、雷の光がまだまとわりついている。
【充電率:25%!バッテリー残量:45%!】
【順調です!しかし敵の数はまだ増え続けています!】
「増え続けてる……」羅夢の手が震えていた。疲れている。片手で携帯を掲げ続けるのは、想像以上に筋肉にくる。
【大丈夫!ローマは一日にして成らず!充電も一瞬にして成らず!】
【諺を間違えてる?気にしない気にしない!】
「間違ってるし!」羅夢はツッコミを入れながら、それでもタップを続けた。
ゲーム内では、ゾンビが庭の半分まで迫っている。彼女は慌ててチェリーボムを設置する。
現実では、霹靂兵の群れが、彼らを取り囲む輪を狭めてきている。
「これでは……囲まれてしまう」曹操が冷静に分析した。「突破点を作らねば」
「では!」信長が叫んだ。「一点集中だ!」
三人は同時に、一方向に攻撃を集中させた。
剣、太刀、槍。三つの武器が一点に集まる。
轟音とともに、敵の壁に穴が開いた。
「行くぞ!」曹操が先頭に立ち、その穴を突き進んだ。
信長と趙雲がそれに続き、羅夢を護りながら。
【充電率:40%!バッテリー残量:60%!】
【半分まで回復!しかし雷活動が弱まっています!】
空を見上げると、確かに雷雲が薄れ始めている。雷の間隔も長くなった。
「雷が……止みつつある」趙雲が指摘した。
「ならば、急がねば!」信長が叫んだ。
彼らは穴をくぐり抜け、より開けた場所へと移動した。雷が落ちやすい、高い場所へ。
しかし、霹靂兵たちも追ってくる。そして、新たな敵が現れた。
【警告:新たな敵性データ生命体を検知!】
【名称:歴史修正者・分析型「記録官」】
【特徴:戦闘力は低いが、周囲のデータを収集・分析します!】
【危険度:中(分析が完了すると、より強い敵が送り込まれる可能性があります)】
【優先的に倒してください!】
「分析型……」曹操が呟いた。「我々の戦い方を学ばせてはならぬ」
「ならば、先に倒すだけだ!」信長が太刀を構えた。
だが、記録官たちは後方に位置し、霹靂兵たちに守られている。
「届かぬ」趙雲が歯ぎしりした。
羅夢が画面を見つめた。ゲーム内では、新たなゾンビが現れていた――新聞紙を読むゾンビだ。動きは遅いが、新聞紙が壊れると狂暴化する。
「……新聞紙?」彼女は思わず声に出した。
【ゲーム内の敵と現実の敵が同期しています!】
【新聞紙紙ゾンビ = 記録官】
【新聞紙が壊れる = 分析完了】
【つまり、新聞紙を破壊する前に倒せば良いのです!】
「わかった!」羅夢は必死にエンドウ射手を配置した。新聞紙紙ゾンビに向かって、エンドウを発射する。
ポン、ポン。
現実では、記録官の周囲にデータの壁が現れ、エンドウの攻撃を防いでいる。
「効かない!」羅夢は焦った。
【通常攻撃ではダメージが通りません!特別な植物が必要です!】
【提案:『ジャラ豆』を使用してください!貫通攻撃が有効です!】
「ジャラ豆……あれ、高いんだよな!」羅夢は太陽の残量を見た。ぎりぎり足りる。
彼女はジャラ豆を選択し、新聞紙紙ゾンビの前に配置した。
ジャラ豆が発射され、新聞紙を貫通する。
現実では、記録官のデータ壁が砕け散った。
「今だ!」曹操が叫んだ。
三人の攻撃が、一斉に記録官たちに向かう。
剣閃、太刀の一撃、槍の突き。
記録官たちはデータに分解され、消えていった。
【記録官群、撃破!】
【分析中断!より強い敵の出現を阻止しました!】
【充電率:60%!バッテリー残量:80%!】
「80%!」羅夢は歓声を上げそうになった。
雷雲はさらに薄れている。雷の間隔は、もう十秒に一度ほどだ。
「あと少し……」彼女は空を見上げた。
【あと少しです!ラストスパート!】
【しかし、最後の試練が待ち構えています!】
【最終警告:歴史修正者・最終防衛プログラムが起動しました!】
地面が震えた。
空気が歪む。
そして、彼らの前に、一つだけ――巨大な影が現れた。
【最終ボス登場!】
【名称:歴史修正者・統合型「正史の守護者」】
【特徴:すべての時代の兵士のデータを統合した、究極の歴史修正ユニット!】
【戦闘力:極めて高い(多分勝てません)】
【提案:逃げましょう!】
「逃げろだと!」信長が怒鳴った。「もう目の前だ!」
曹操は冷静に影を見つめた。「……確かに、強そうだ」
趙雲が槍をしっかりと握りしめた。「しかし、退くわけにはいきません」
影の姿がはっきりしてきた。それは、三国時代の鎧と戦国時代の具足が融合し、さらに他の時代の武装も加わった、奇怪で巨大な人型だった。顔はやはり無貌で、ただ一つの目――光る赤い一点が、そこにあった。
「我は……正史の守護者」その声は、複数の声が重なったように響いた。「汝ら、異常データ……消去する」
「消去されぬ前に、我らが消してやる!」信長が太刀を構えて突進した。
しかし、守護者はただ腕を上げただけだ。
信長の太刀が、その腕に当たる。金属音が響く――だが、傷一つつかない。
「何……!?」信長の目が見開かれた。
「硬い……」曹操も眉をひそめた。
守護者の目が光った。
次の瞬間、その腕からエネルギーの奔流が放出され、信長を吹き飛ばした。
「うわっ!?」
信長は地面を転がり、ようやく態勢を立て直した。
「効かぬ……まったく効かぬ!」
【物理攻撃がほとんど通じません!】
【データ密度が高すぎて、通常の攻撃では傷つかないようです!】
【提案:データ対データの攻撃が必要です!】
「データ対データ……」羅夢はゲーム画面を見た。「でも、あのジャラ豆でもダメだった……」
【最終手段です!】
【バッテリー残量が90%を超えました!】
【特別機能『データ分解砲』を一時的にアンロックします!】
【使用方法:携帯のカメラを敵に向け、シャッターボタンを押すだけ!】
【効果:敵のデータ構造を一時的に分解します!】
【注意:一度しか使えません!バッテリーをほぼすべて消費します!】
「一度だけ……」羅夢は呟いた。
守護者がゆっくりと近づいてくる。その一歩一歩で、地面が震える。
曹操と趙雲が必死に攻撃するが、刃は弾かれるばかりだ。
「羅夢!」曹操が叫んだ。「何か策はあるのか!?」
「あります!でも、一度だけです!」
「ならば、今使う時だ!」
羅夢は深く息を吸い込んだ。
携帯を掲げる手を、守護者に向ける。
カメラアプリが自動的に起動する。画面には、巨大な守護者の姿が映る。
【照準を合わせてください!】
【自動追尾機能を起動します!】
画面に照準が現れ、守護者にロックオンされる。
「さあ、来い!」信長が叫んだ。「我らが盾となろう!」
曹操と趙雲が羅夢の前に立ちはだかる。守護者の攻撃から彼女を守るため。
守護者の腕が光る。エネルギーの奔流が、二人に向かって放たれる。
曹操の剣と趙雲の槍が、それをかろうじて防ぐ。しかし、二人の足は地面に食い込む。
「今だ!」曹操の声が響く。
羅夢は、シャッターボタンを押した。
音はしなかった。
光もなかった。
ただ、携帯の画面が一瞬真っ白になり――
守護者の動きが、突然止まった。
その巨大な体に、亀裂が走る。
小さな亀裂から始まり、次第に広がり――
【データ分解、成功!】
【正史の守護者、一時的に機能停止!】
【バッテリー消費:90% → 5%!】
携帯の画面が暗くなった。バッテリー表示が赤く点滅し始める。
5%
守護者は、その場に凍りついたまま、動かない。
雷雲が、完全に晴れ始めた。
一筋の陽光が、雲の隙間から差し込む。
静寂が訪れた。
【充電完了!】
【最終充電率:95%!】
【バッテリー残量:5%(一時的に低下しましたが、充電は成功です)】
【おめでとうございます!あなたは歴史修正者の最終防衛プログラムを撃破しました!】
【報酬:バッテリー残量+50%(回復に時間がかかります)、新機能『オフライン翻訳』をアンロック!】
羅夢はその場に崩れ落ちそうになった。が、趙雲が素早く支えた。
「……よくやった」曹操が息を整えながら言った。
信長は大笑いした。「ははは!見事だった!あの一撃、何だった!」
「データ分解砲です……」羅夢は疲れ切った声で答えた。「でも、もう使えません……」
彼女は携帯を見た。画面は暗いが、まだかすかに光っている。5%だけど、生きている。
そして、現実世界の時間――
【現実世界時刻:午後3時01分】
【緊急協議:開始から1分経過】
【結果:まだ出ていません】
【あなたには、まだ時間が残されています】
羅夢はほっと息をついた。
間に合った。
少なくとも、今は。
守護者の凍った巨体が、ゆっくりとデータの光の粒に分解され、消えていった。
周囲の霹靂兵たちも、同じように消えていく。
雷のエネルギーは完全に止み、空は晴れ始めていた。
「終わった……のか?」趙雲が呟いた。
「どうやらな」曹操は剣を鞘に収めた。
信長はまだ笑っている。「面白かった!またあんな敵が現れると良いな!」
「現れないでほしいです……」羅夢は弱々しく言った。
彼女は立ち上がり、揺らめく足で一歩を踏み出した。
目の前に、システムの新たな通知が表示された。
【新機能『オフライン翻訳』がアンロックされました!】
【機能:異なる時代・言語の話者同士の会話を、ほぼリアルタイムで翻訳します!】
【ただし、ベータ版のため、たまに誤訳があります!】
【例:『敵を討つ』が『敵と踊る』と翻訳される可能性が0.3%あります!】
【ご了承ください!】
羅夢はその通知を見て、少しだけ笑った。
これで、少しは楽になるかもしれない。
彼女は顔を上げ、三人の英雄を見た。
曹操は相変わらず冷静な面持ちで、剣の手入れをしている。
信長は戦いの余韻に浸りながら、太刀を振るっている。
趙雲は槍を立て、遠くを見つめている。
そして彼女は、思った。
まだ終わっていない。
現実世界の協議は始まったばかりだ。
歴史修正者は、また来るだろう。
でも――
彼女は携帯をしっかりと握りしめた。
バッテリーは5%だけど、充電は成功した。
新機能も手に入れた。
そして何より、彼女には――この時代を超えた、頼もしい味方が三人もいる。
「さあ」羅夢は声を上げた。「次に向かいましょう」
曹操が顔を上げた。「次?」
「ええ」彼女は笑った。「まだ、やるべきことがありますから」
信長が大きな笑い声を上げた。
「そうだな!まだまだ先は長い!」
趙雲は静かに頷いた。
四人は、晴れ上がった空の下、新たな道を歩き始めた。
背後には、雷に焼かれた大地と、崩れ落ちた橋が残されていた。
そして、現実世界では――
研究室で、緊急協議が続いていた。
モニターに映る脳波は、依然として異常なパターンを示している。
しかし、そのパターンの中に、新たな安定性――まるで、何かが確立されたような、落ち着きが見え始めていた。
教授が眉をひそめて記録を見つめている。
彼にはわからない。
その脳波が、たった今、雷の中で歴史修正者と戦い、勝利したものだとは。




