表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スマホを充電するために、曹操と織田信長が異世界で奮闘します  作者: 「大和 尚羅夢」小花羅夢一生推し


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/30

バッテリー危機ととんでもない任務

外は、まさに「時空が融合した」という言葉がぴったりの光景だった。

左手には、漢代様式の楼閣がそびえ立つ。瓦屋根の曲線が優雅に空を切る。

右手には、白亜の天守閣が威容を誇る。その壁面には、金箔の鯱が輝いている。

道は石板敷きだったり、土だったり、突然現代のアスファルトになったりしている。空の色もおかしい。夕焼けの橙色と、雷雲の灰色が、渦を巻くように混ざり合っている。

「……すごい光景ですね」羅夢は思わず呟いた。

曹操は周囲を鋭く観察しながら、低く答えた。「何もかもが乱れている。天象も、地脈も」

織田信長はというと、むしろ楽しそうに目を輝かせていた。「面白い!此れこそ、新たな天地というものだな!」

彼は腰の太刀を軽く叩きながら、北西の雷雲を見上げた。「雷か……確かに、あの雲は尋常ではないな」

羅夢は携帯の画面を確認した。システムのマップ機能——正確には、バグったナビゲーション機能——が、ざっくりとした方角を示している。

【現在地:時空融合エリア『洛陽-安土 混在区画』】

【目的地:電磁気異常エリア(雷雲発生中)】

【距離:約11.8km】

【推定到達時間:徒歩で約4時間(敵性データ生命体遭遇の可能性を考慮せず)】

【バッテリー残量:70%】

【おすすめ:早く行きましょう!雷が待ってます!( `ー´)ノ】

「敵性データ生命体……」羅夢はげっそりした。「それって……何ですか?」

【説明:時空融合により生じたデータの歪みが具現化した存在です!歴史修正者の下位ユニットや、時代錯誤の兵士、時には神話上の生物が現れる可能性があります!】

【具体例:三国時代の兵士が戦国時代の鎧を着ていたり、忍者が青龍偃月刀を振り回していたりします!】

【戦闘力はピンキリですが、とにかく変なものばかりです!】

「変なものばっかり……」羅夢はため息をついた。「そんなの、避けて通れませんか?」

【可能です!隠密行動スキルがあれば!】

【残念ながら、ユーザー羅夢の隠密行動スキルは現在Lv.0です!】

【曹操の隠密行動スキル:Lv.85(しかし『隠密行動を行う気はほぼ無し』)】

【織田信長の隠密行動スキル:Lv.92(ただし『面白ければ隠密行動を放棄する可能性大』)】

【結論:隠密行動は難しいでしょう!戦闘準備をおすすめします!】

「はあ……」羅夢はもうため息しか出なかった。

曹操が突然足を止めた。

「何か来る」

彼の声は低く、警戒に満ちていた。

信長も同時に太刀の柄に手をかけた。「人数は少ない。四、五人か」

道の向こうから、影が近づいてくる。

そして、その姿が見えた時、羅夢は目を疑った。

来たのは「兵士」だったが——その格好が、まったくもって統一感がない。

一人は、三国時代の鎧をまとっているが、腰には日本刀を差している。

もう一人は、戦国時代の足軽のような装備だが、手に持っているのは中国の戟だ。

さらに、リーダーらしい男は、漢代の冠をかぶりながら、顔に忍者じみた覆面をしている。

「何……あれ……」羅夢は声を詰まらせた。

【敵性データ生命体を検知!】

【名称:時空混成兵士(雑魚)】

【特徴:時代考証がめちゃくちゃです!】

【戦闘力:低い(でも変なので精神的ダメージ大)】

【ドロップアイテム:時空の塵(何に使うかは不明)】

「構うな」信長が笑った。「変であろうが、斬れるものは斬れる!」

彼は太刀を抜いた。その動作は流れるように速く、次の瞬間には、一番前の兵士の前にいた。

「その装備、面白いな!」信長は大笑いしながら、太刀を振るった。

兵士はぎこちなく戟を構えたが、信長の太刀の一撃にかろうじて防いだだけだった。

曹操は動かない。ただ、観察している。

「動きが鈍い」彼は低く言った。「統合されたデータに矛盾があるのだろう。意思と身体が噛み合っていない」

信長は三人の兵士を相手に、軽々と戦っていた。まるで大人が子供を相手にしているようだ。

「つまらん!もっと強く来い!」

彼の叫びに応えるように、また別の方向から影が現れた。

今度は、もっと大きな影だ。

【警告:中型敵性データ生命体を検知!】

【名称:鎧武者(魏軍スタイル)】

【特徴:魏軍の鎧をまとった日本の武者!文化的混淆の極み!】

【戦闘力:中(見た目以上に動きます!)】

「おお!」信長の目が輝いた。「こいつは良い!」

鎧武者は、中国風の長戟を振り回しながら襲いかかってきた。その動きは、先ほどの雑魚兵よりもはるかに速く、力強い。

信長は太刀で受け止め、火花を散らした。

「良い腕前だ!だが——」

彼の太刀が弧を描き、鎧武者の戟を弾き飛ばした。

「——まだ足りん!」

曹操がようやく動いた。彼は剣を抜かず、ただ、地面から石を一つ拾い、指で弾いた。

石は鋭い音を立てて飛び、鎧武者の顔面——正確には、面の部分——を直撃した。

鎧武者はバランスを崩し、信長の太刀がその隙をついた。

一刀。鎧武者はデータの光の粒子に分解され、消えていった。

【敵性データ生命体『鎧武者(魏軍スタイル)』を撃破!】

【獲得:時空の塵 x3】

【ユーザー羅夢の戦闘観測経験値が少し上がりました!】

【現在の戦闘力:雑草レベル(踏まれても泣かない程度)】

「踏まれても泣かない程度って……」羅夢はげんなりした。

戦闘はあっという間に終わった。残りの雑魚兵も、曹操の投石と信長の太刀で片付けられた。

信長は心地よさそうに太刀を振り、血振いをした——実際には血は出ない。敵はデータだからだ。

「はっ!腕がなまったな、久しぶりに斬り合いをしたわ!」

曹操は冷静に袖を整えた。「無駄な戦いは避けるべきだ。エネルギーを消耗する」

「はは!曹公は慎重すぎる!たまには、こういうのも良いだろう?」

二人が話している間、羅夢は携帯の画面を見ていた。バッテリー残量が、69%に減っていた。

「あ……戦ってる間に、1%減ってます……」

【戦闘中のシステム補助機能作動により、バッテリー消費が加速しました!】

【現在のペースでは、目的地到達前にバッテリー切れの可能性が87%!】

【緊急対策:バッテリー節約モードを有効にしました!】

【ただし、節約モードでは、一部機能が制限されます!】

「機能制限?」羅夢は不安になった。

【具体的には:】

【・マップの更新間隔が延長】

【・敵検知の精度が低下】

【・システムのユーモア機能が一部オフ(悲しい)】

【・新規任務の報酬が減少】

「ユーモア機能って……」羅夢はツッコミを入れたいのをこらえた。

その時、システムの声が再び響いた。

【ピピッ!新規任務を検知!】

【任務名:『歴史的名言を収集せよ!』】

【内容:特定の歴史的人物に、特定の台詞を言わせ、録音すること!】

【第一目標:曹操に『天下の英雄は、君と操だけだ』(原文:天下英雄唯使君与操耳)と言わせる!】

【達成条件:明確に録音され、システムが認識可能な状態!】

【制限時間:次の敵遭遇まで!】

【成功報酬:バッテリー残量+1%!】

【失敗ペナルティ:システムが強制的に『恋愛循環』(『恋爱循环』、初音ミクの有名曲)を最大音量で1時間流し続けます!】

【補足:ペナルティ実行中は、隠密行動が不可能になります!敵が集まってくるかもしれません!】

【挑戦してみてね!(๑•̀ㅂ•́)و✧】

羅夢はその任務内容を見て、目が点になった。

「は?なにそれ?そんな任務……」

曹操に「天下の英雄は、君と操だけだ」と言わせる?

しかも録音?

失敗したら『恋愛循環』を1時間も流す?

「無理無理無理!絶対無理!」彼女は小声で叫んだ。

【挑戦しなければ、ペナルティは発生しません!】

【ただし、1%のバッテリーは大きいですよ?】

【現在残量69%!あと1%で70%!人間だって、69より70のほうが気分が良いでしょう?】

システムは正論をついてきた。

羅夢は絶望的に曹操を見た。

曹操は今、遠くの地形を観察している。その側面は、確かに『三国志演義』で見た、煮酒論英雄の時の姿に重なる——しかし、ずっとリアルで、ずっと威圧的だ。

どうやって、こんな人物に、あの台詞を言わせるのか?

「あの……曹公?」

羅夢はおずおずと声をかけた。

曹操が振り向いた。鋭い目が、彼女を見た。

「何事だ」

「えっと……」羅夢は頭をフル回転させた。「さっき、『三国志演義』を見ましたよね?あの、煮酒論英雄のシーンで……」

「うむ」

「あの……あのシーン、曹公ご自身は、どう思われますか?」

曹操は少し間を置いて、答えた。「演じた者は、予の風貌には似ていないが……言動は、ある程度は似せてあった」

「そ、そうですか……」羅夢は汗をかき始めた。「で、その……『天下の英雄は、君と操だけだ』というセリフですが……」

彼女は必死に言葉を探した。

「あの……もし、今、劉備様がここにいらしたら……曹公は、同じことをおっしゃいますか?」

一瞬、空気が凍りついた。

信長が興味深そうにこっちを見ている。

曹操の目が、微かに細くなった。

「……汝」彼はゆっくりと言った。「何を企んでいる?」

「いえ!何も企んでません!ただ、興味があって……」

「興味、か」曹操は一歩、羅夢に近づいた。その視線は、人の心を見透かすようだった。「その台詞を、予の口から聞きたいのか?」

「で、でも……」羅夢は後ずさりした。「劉備様は、確かに英雄ですよね?だって、後で蜀漢の皇帝に……」

「皇帝に、か」曹操は低く笑った。「それも、『物語』の中の話であろう?」

「でも、実際の歴史でも……」

「実際の歴史では」曹操は彼女の言葉を遮った。「劉備は、確かに人物ではあった。然れど……」

彼は遠くを見つめた。

「英雄かどうかは、後世が決めることだ。予が決めることではない」

信長が笑い声を上げた。「はは!確かに!わしだって、『第六天魔王』などと呼ばれようとは思わなかったぞ!」

曹操は信長を一瞥し、そして再び羅夢を見た。

「その台詞を、何故聞きたい?此の『天機匣』のためか?」

バレてる!

羅夢の心臓が跳ね上がった。

「で、でも、バッテリーが……1%でも増えれば……」

「ふむ」曹操は深く頷いた。「つまり、此の『天機匣』の力を維持するために、予を使おうというわけだな」

「使おうって……そんな……」

【警告:ユーザーの嘘の発見率が高まっています!】

【曹操の疑心度:70% → 85%!】

【このままでは任務失敗です!】

【提案:正直に話した方が良いかもしれません!】

システムの警告が表示された。

羅夢は覚悟を決めた。

「……はい」彼女はうつむいた。「バッテリーを1%増やすための任務です。曹公に、あの台詞を言っていただかないと……システムが、罰則を実行します」

「罰則?」信長が興味深そうに聞いた。「どんな罰則だ?」

「『恋愛循環』という曲を、1時間、最大音量で流し続けるそうです……」

信長は眉を上げた。「『恋愛循環』?何だ、それは?」

「えっと……とても……元気な……歌です……」

「歌か!」信長の目が輝いた。「ならば、聞いてみたいものだな!」

「ダメです!」羅夢は必死に首を振った。「最大音量で1時間ですよ!敵がみんな集まってきちゃいます!」

曹操は静かに考え込んでいた。

「……その歌は、敵を引き寄せるのか」

「はい!多分!」

「ならば」曹操はゆっくりと言った。「避けるべきだな」

彼は羅夢を見た。

「では、此の任務は、成さねばならぬと?」

「……できれば、お願いしたいです」

長い沈黙が流れた。

風が、奇妙に混ざり合った建物の間を吹き抜ける。

そして、曹操が口を開いた。

「『天下の英雄は、君と操だけだ』」

羅夢は目を見開いた。

【録音中……】

【音声認識中……】

【確認:曹操の声紋を検出!】

【文言一致度:100%!】

【任務『歴史的名言を収集せよ!』第一目標、達成!】

【おめでとうございます!報酬を発行します!】

【バッテリー残量:69% → 70%!】

【やったね!(ノ◕ヮ◕)ノ:・゜✧】*

「え?ま、まさか……」羅夢は信じられなかった。「そんなに簡単に……」

曹操は淡々と袖を整えた。「任務と言うなら、それで良いであろう。些細なことだ」

信長が大笑いした。「ははは!曹公、随分と素直になったな!」

「必要あれば、言葉一つ使うことなど、造作もない」曹操は冷静に言った。「それよりも」

彼は北西の空を見上げた。

「雷雲が近づいている。早く行くぞ」

羅夢はまだぼんやりしていた。え?これで終わり?1%増えた?

彼女は携帯の画面を見た。確かに、バッテリー表示が70%になっている。

「あ……ありがとうございます……」

「感謝は必要ない」曹操は歩き出しながら言った。「次からは、策略を使おうなどと思わぬことだ。正直に話せ」

「は、はい……」

羅夢は慌てて二人の後を追った。

信長が彼女の横に並び、楽しそうに言った。「なあ、娘。其の『恋愛循環』とやら、本当に聞いてみたいものだな。一度で良い、流してみないか?」

「絶対にダメです!」羅夢は必死に首を振った。「敵が集まってきます!」

「敵が集まるなら、それもまた良かろう!」信長は目を輝かせた。「戦いができる!」

「バッテリーの無駄遣いです!」

二人の会話を聞きながら、曹操は微かにため息をついた。

そして、彼はふと、立ち止まった。

「……来た」

彼の声は低く、警戒に満ちていた。

道の前方に、新たな影が見えてきた。

しかも、今回はさっきよりも多い。十人以上だ。

【警告:敵性データ生命体の群れを検知!】

【名称:時代錯誤の山賊集団】

【特徴:三国時代の山賊と戦国時代の野武士が混ざり合っています!】

【戦闘力:中(数が多い!)】

【注意:こちらの会話の声を察知して集まってきた可能性があります!】

「ちっ」信長は舌打ちした。「話の途中で邪魔が入るとはな」

曹操は剣を抜いた。今度は、石ころでは済まされない数だ。

「羅夢、後ろに退け」

「は、はい!」

羅夢は慌てて二人の後ろに隠れた。

戦闘が始まる。

信長の太刀が閃き、曹操の剣が渦を巻く。

データの山賊たちは、統合されていない服装や武器で襲いかかってくるが、二人の前ではなす術もない。

羅夢は携帯をしっかりと握りしめ、息を殺して見守った。

バッテリーは70%。

雷雲までの距離は、まだ10km以上。

そして、現実世界では——彼女の意識のない身体が、VRラボで横たわっている。

そして、ラボのモニターには、彼女の脳波が、通常とは全く異なるパターンを示している。

担当の研究員が、記録を見て眉をひそめた。

「……異常値が持続している」

彼はメモを取った。

「被験者#998、意識不明のまま。脳波パターン、未確認の波形を継続して示す」

「プロジェクトリーダーに報告する必要があるかもしれない」

モニターの上に、小さな赤いランプが点滅し始めた。

【警告:被験者#998、神経負荷が限界値に近づいています】

【推奨処置:直ちに接続を切断し、医学的検査を実施してください】

研究員は躊躇った。

プロトコルでは、被験者の安全が最優先だ。

しかし、プロジェクトリーダーの田中教授は明確に言っていた。

「どんなデータでも、貴重なサンプルだ。可能な限り、記録を続けろ」

彼は決断した。

記録を続ける。

もう少しだけ。

モニターの脳波は、激しく乱れている。

まるで、彼女が——何かと、激しく戦っているかのように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ