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スマホを充電するために、曹操と織田信長が異世界で奮闘します  作者: 「大和 尚羅夢」小花羅夢一生推し


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現実の危機、深刻化

現実世界・聖恵医科大学付属病院 会議室

午前10時17分。

冷たい長テーブルを囲み、五人ほどの白衣の医師たちが顔を合わせていた。資料が配られ、パソコンの画面には、羅夢のバイタルデータと、膨大な医療費の明細が映し出されている。

「……というわけで、羅夢さんの状態は、昏睡状態が三週間以上継続しています」

神経内科の森田医師が、プロジェクターの前で説明していた。彼の声には、疲労と焦りが混じっている。

「通常の昏睡と違い、脳波は活発な活動を示しています。が、身体はまったく反応せず、自発呼吸はあるものの、栄養は完全に点滴に依存しています」

一人の年配の医師が眉をひそめた。「医療費は?」

森田は次のスライドに切り替えた。数字がずらりと並ぶ。

「集中治療室使用料、一日十五万円。各種モニタリング、薬剤、検査費用を含めると、一日平均二十五万円。これが三週間ですから、すでに五百万円を超えています」

室内に重い空気が流れた。

「家族の支払い能力は?」

「ご両親は中国から来日されていますが、ごく普通のサラリーマン家庭です。羅夢さん自身は留学生で、アルバイト収入のみ。健康保険はありますが、三割負担でも、月に二百万円以上かかります」

「……つまり、すぐに破綻する」

「はい。ご両親は、すでに貯金を使い果たし、親戚に借金をしている状態です」

沈黙が流れる。

別の医師が口を開いた。「では、予後は? いつ目覚める可能性がある?」

「まったくわかりません」森田は正直に答えた。「脳波は活発ですが、医学的には昏睡状態。過去の類似症例では、数ヶ月から数年、あるいは永遠に目覚めないケースもあります」

「ならば……」

年配の医師が、深くため息をついた。

「我々は慈善団体ではない。病院も経営がある。彼女の状態が改善の見込みがないなら、延命治療の中止を検討すべきだ」

森田の顔が強張った。「しかし、患者はまだ22歳です。脳は活動しています。希望は――」

「希望だけでは医療は成り立たない」年配の医師の声は冷たい。「現実を見ろ。家族は破産寸前だ。病院も、このまま無期限に面倒を見ることはできない」

「では、どうするのですか? 人工呼吸器を外せと?」

「そうだ。自発呼吸はあるのだから、集中治療室から一般病棟に移し、自然経過を見守る。それ以上の積極的治療は、家族の同意があっても、医療資源の無駄遣いだ」

「それは――」

「決まった」年配の医師は書類にサインをした。「72時間後、家族に説明し、集中治療室からの移動を行う。それまでに、状態に変化がなければ、だ」

森田は唇を噛んだ。抗議したい。が、彼にもわかっている。現実は残酷だ。病院は、無限の善意で動いているわけではない。

「……了解しました」

彼の声には、無力感がにじんでいた。

明志大学・第三研究棟B1 Lab-7

同じ時刻、地下実験室では、別の決定が下されようとしていた。

田中教授は、モニターに映る複雑なデータを見つめながら、イヤホンから流れる声にうなずいていた。

『――つまり、プロジェクトの継続が最優先です。被験者の安全は二の次、ということですね?』

「そうではない」田中は冷静に答えた。「被験者の安全は確保したい。だが、プロジェクト自体が危険にさらされている。外部の監視が強まっている。警察も動き始めた」

『被験者#998の脳波データは、極めて貴重です。我々の「文明融合」理論を証明する決定的な証拠になる』

「わかっている。だからこそ、データを完全に回収する必要がある」

モニターに、新しいウィンドウが開いた。そこには、システムのログが表示されている。

【警告:被験者#998 意識固定が不安定化】

【外部干渉の可能性を検知】

【推奨処置:緊急切断とデータバックアップ】

田中はその文字をじっと見つめ、そして決断した。

「72時間後、強制切断を行う」

『それでは、被験者に脳損傷を与える可能性が――』

「承知している」田中の声には、わずかなためらいもなかった。「だが、此のままでは、データ全体が危険にさらされる。プロジェクトが露見すれば、我々は逮捕され、データは没収される。それだけは避けねばならない」

イヤホンからため息が漏れる。

『……了解しました。では、72時間後に。その間、できるだけのデータを収集してください』

「そうする」

通信が切れる。

研究室には、モニターの機械音だけが響く。

田中は、ログを見つめながら、呟いた。

「羅夢……君には悪いが、科学の進歩のためだ」

彼の目には、熱狂的な好奇心の光が宿っている。倫理よりも、真理を知りたいという欲望。

「どんなデータが、君の脳から出てくるのか……楽しみだ」

異世界・時空の接合点

光の爆発が収まり、ゆらゆらと残光が漂う。

中心にあった「目」は、無数に割れた。データの破片が、ゆっくりと落下している。が、完全には消えていない。所々がまだ光り、再生しようと脈動している。

「……効いた、か」曹操が呟いた。彼の剣は折れ、鎧はボロボロだ。

信長は太刀を杖に、ようやく立ち上がる。「はあ……はあ……やったようだな……」

趙雲は倒れたまま動かない。諸葛亮と毛利が、必死に彼を介抱している。

「趙雲! 大丈夫か!」

「……まだ、生きております……」

羅夢は、光の消えた携帯の残骸を握りしめていた。もう、何の力もない。ただの、壊れた機械だ。

その時、壊れた「目」から、機械的な声が響いた。

【フォーマット……一時停止……】

【しかし……完全な破壊には至らず……】

【再生まで……72時間……】

「72時間……」曹操が顔を上げた。「ならば、其れまでに、貴女を戻さねばならぬな」

羅夢はうなずいた。「でも、どうやって?」

【警告……】

突然、別の声が響いた。システムの、緊急通知のようなものだ。

【現実世界からの通信……傍受……】

【内容:医療機関、72時間後に生命維持システム停止を決定】

【VR実験室、72時間後に強制切断を決定】

【ユーザー羅夢、双方の決定により、72時間後に死亡の危機】

「何!?」信長が叫んだ。

「現実で……私の身体が……」羅夢の顔が青ざめた。

曹操は冷静に分析した。「つまり、72時間以内に、貴女を現実に戻さねば、貴女は死ぬ」

「でも、戻る方法が……」

諸葛亮が顔を上げた。「観測者の『目』は、まだ完全には壊れていない。ならば、其れを利用できないか?」

「利用?」毛利が聞き返した。

「此の世界は、データの世界です。ならば、データの流れを逆流させ、羅夢殿の意識を、現実世界に送り返すことはできないでしょうか」

趙雲がかすかな声で言った。「……危険では?」

「危険です」諸葛亮はうなずいた。「が、他に道はありません」

曹操は羅夢を見た。

「決断は、貴女に任せる」

全員の視線が、羅夢に集まる。

現実に戻る。でも、この人たちは? データのコピーだから、此の世界と共に消える?

「みなさんは……どうなるんですか?」

沈黙が流れた。

信長が笑った。

「はは! 心配するな! わしらは、元々データだ! 消えても構わん!」

「でも――」

「羅夢よ」曹操が静かに言った。「我らは、既に死んだ者たちの、影に過ぎぬ。貴女は、まだ生きている。生きるべきだ」

趙雲も、かすかにうなずいた。

「お願いです……生きてください……」

諸葛亮と毛利は、微笑んでいた。

「我らの知恵が、貴女を救えるなら、本望です」

「これも、一種の戦略的勝利だ」

羅夢は、涙をこらえきれなかった。

「みんな……ごめんなさい……私だけ、生き残って……」

「馬鹿を言え」曹操の声には、稀に見る優しさが込められていた。「貴女が生きることで、我らの戦いには意味が生じる」

信長が羅夢の肩を叩いた。

「そうだ! わしらのことを、しっかり現実で語ってくれ! 『織田信長は、かくもカッコ良かった!』とな!」

「はい……必ず……」

羅夢は涙を拭い、顔を上げた。

「では、お願いします。現実に戻りたい」

曹操がうなずく。

「では、作戦開始だ。孔明、毛利、方法を考えよ。信長、趙雲を護れ。我は、此の『目』の動きを監視する」

「了解した!」

「任せておけ!」

皆が動き始める。

72時間。

現実と異世界、二つの世界で、時限爆弾のカウントダウンが始まった。

現実世界・病室

羅夢の母親が、ベッドの傍らで娘の手を握りしめていた。父親は、窓の外をぼんやりと見つめている。

「夢夢……お母さん、どうしたらいいの……」

その時、モニターの脳波が、突然、激しいパターンを示した。

医師たちが駆け寄る。

「また異常波形が!」

「何かの決断をしたような……」

堀内教授は、記録を見つめながら、呟いた。

「……時間との戦いを、始めたのか」

彼にはわからない。

その患者が、千年の時を超えた英雄たちと共に、たった72時間の命をかけた戦いを始めたことなど。

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