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スマホを充電するために、曹操と織田信長が異世界で奮闘します  作者: 「大和 尚羅夢」小花羅夢一生推し


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18/30

信長の配信野望

その夜も、一行は洞窟で野営した。

次の目的地「時空の接合点」まで、あと一日の行程だという。だが、道中の危険は増すばかりで、夜間の移動は避けるべきだと、諸葛亮と毛利が判断した。

「ならば、今夜はゆっくり休むとしよう」曹操が言った。

「つまらん!」信長は不満そうだった。「もっと急ぐべきだ!」

「無理な行軍で疲れれば、戦えるものも戦えぬ」趙雲が諫めた。

信長はしぶしながらも納得した。「……わかった。では、其の代わりに――」

彼の目が、羅夢の手にある携帯に釘付けになった。

「――其の匣で、何か面白いことをしようではないか!」

「え? でも、もうドラマは見たし、ゲームもしたし……」

「他に何かあるだろう!」

羅夢は仕方なく、アプリ一覧を見せた。「ゲーム、カメラ、電卓、コンパス、メモ帳、動画……」

「カメラ!」信長の目が輝いた。「前に、己を映したあの機能か!」

「はい、でも、ただ映るだけですから……」

「いや、待て」信長は突然、何かを思いついた表情をした。「此のカメラ、己の姿を映せる。ならば、其の姿を、多くの者に見せられるのではないか?」

「多くの者に?」羅夢は理解できなかった。「どうやって?」

「例えば――」信長は大きく手を広げた。「戦場で、味方の兵士たちに、我が姿を見せ、鼓舞する! あるいは、敵に、我が威容を見せつけ、脅す!」

「それは……ライブ配信みたいなものですか」

「配信?」信長は聞き慣れない言葉を繰り返した。

【オフライン翻訳、作動!】

【『配信』→『影像を多数に送り届けること』】

【現代では『ライブ配信』が一般的です!】

【おすすめアプリ:カメラアプリ内の『ライブ配信モード』!】

「ライブ配信モード……」羅夢はアプリを開き、確かにその機能があるのを確認した。が、もちろん、圏外なので使えない。

「ありますけど、ネットがないから使えません」

「ネット?」

「電波です。此の匣が、遠くの者と繋がるための……」

「ならば、電波を受信すれば良いだけではないか!」信長はますます興奮していた。「前に、雷の力を受信したではないか! 同じように!」

「雷と電波は違います……」

「構わん! 試してみよう!」

羅夢は諦めて、ライブ配信モードを起動した。

画面が変わり、カメラの映像が表示される。下部には、『配信開始』ボタン。その横に、小さく表示されている。

視聴者:0人

「ほら、誰も見てません」

「0人?」信長は首を傾げた。「何故だ?」

「ネットに繋がってないから、此の匣から外に映像が送れないんです」

「ふむ……」信長は少し考え、そして言った。「ならば、仮想的にでも良い。練習として、我が演説を録ってみようではないか!」

「演説?」

「そうだ! 『天下布武2.0』についての!」

「2.0……」羅夢はため息をついた。「わかりました。でも、録画だけですからね」

「よし! では、始めよう!」

信長は洞窟の少し開けた場所に立ち、姿勢を正した。陣羽織を翻し、手は腰に当てる。

羅夢は携帯を構え、録画を開始した。

「うむ、では――」

信長はカメラを見据え、力強い声で話し始めた。

「諸君、聞け!」

洞窟の中に、彼の声が響き渡る。曹操や趙雲、諸葛亮、毛利も、興味深そうに見ている。

「我は織田信長! 此の乱れた時空に、新たな秩序をもたらす者!」

「天下布武――其れは、武力で天下を統一することではない! 秩序と革新によって、此の世界を正すことだ!」

彼の目は、カメラのレンズをしっかりと見つめている。まるで、本当に大勢の観客に向かって話しているかのようだ。

「我らは今、幾つもの時代が歪んで融合した、異常な世界にいる! 其れを正すには、力だけでは足りぬ! 知恵も、技術も、団結も必要だ!」

「見よ! 我が仲間たちを!」

彼は手を広げ、周囲の者たちを指さす。

「曹操――乱世を生き抜いた覇者! 趙雲――忠義に厚き勇将! 諸葛亮――天知るる知謀の士! 毛利元就――調略に長けた智将!」

「そして、羅夢――此の不思議な匣を使い、我らを導く者!」

羅夢は、カメラの後ろで顔を赤らめた。

「此の様な者たちが集い、共に戦う! 此れこそ、真の『天下布武』ではないか!」

信長の声は、さらに力強くなる。

「我は宣言する! 此の歪んだ時空を正し、それぞれの時代を、それぞれの場所に戻す!」

「歴史修正者とやらが、其れを阻むなら――我らが、打破してみせる!」

「新たな秩序を! 新たな世界を!」

「我らと共に戦いたい者は、集え! 我が元へ!」

最後の一声が、洞窟に響き渡る。

静寂。

信長は、少し息を切らしている。が、目は輝いたままだ。

「……如何だった?」彼は羅夢に聞いた。

「はい、とても……力強い演説でした」羅夢は正直に答えた。

「ふむ! では、其の映像、多くの者に見せられるか?」

「それが……やっぱり、ネットがないから……」

その時、小弥の声が響いた。

【録画完了!】

【ファイル名:『天下布武2.0_演説.mp4』】

【視聴者数:0人】

【いいね数:0】

【コメント:なし】

【提案:ネットワークに接続するか、有料広告で視聴者を増やしましょう!】

画面に、奇妙な広告が表示された。

『視聴者を増やそう! 1000人パック:5000円!』

『有料配信で収入アップ!』

『バーチャルギフトを受け取ろう!』

「おお!」信長の目が輝いた。「視聴者を増やせるではないか! 此の『有料広告』とやらを使えば!」

「ダメです!」羅夢は慌てて否定した。「お金かかりますし、そもそもネットないし!」

「ならば、此の『ネット』とやらを、何とかすれば良いだけだ!」

「何とかできません!」

曹操が冷静に割り込んできた。「織田殿、其れは現実的ではない。我々には、其の『ネット』を作る技術も、時間もない」

「ならば、どうすれば良い!」信長は不満そうだった。「せっかくの演説、此の匣の中に眠らせておくのか?」

「今は、それで良い」曹操はうなずいた。「いつか、本当に多くの者に見せられる時が来るかもしれぬ。其の時のための、練習だと思え」

信長は少し不満そうだったが、やがて笑った。

「はは! そうだな! では、もっと練習を重ねよう! 娘、また録ってくれ!」

「え? また?」

「そうだ! 今度は、もっと激しい演説を!」

羅夢は絶望的に天井を見上げた。

バッテリーは230%。録画だけで1%消費した。

この調子で、信長の「配信練習」が続いたら……

「曹公、助けてください」彼女は小声で頼んだ。

曹操は微かに笑みを浮かべ、首を振った。

「我にも、彼を止めることはできぬ」

その時、諸葛亮が提案した。

「織田殿。其の方の演説、確かに力強い。ならば、其れを実際の戦いに活かしてみてはどうか?」

「どういうことだ?」信長が興味深そうに聞いた。

「次に歴史修正者と戦う時、其の方の演説を、敵に向かって流すのだ」

「敵に?」

「そうです」諸葛亮は扇をあおぎながら説明した。「敵の多くは、データ生命体です。ならば、データ的な『音声攻撃』が効くかもしれない。其の方の力強い声で、敵のデータを乱すのです」

信長の目が、大きく見開かれた。

「……なるほど! 面白い! 声で敵を倒すとは!」

彼はすぐにやる気になった。

「では、敵を倒すための演説を考えねば! 娘、メモを取れ!」

「え? 私が?」

「そうだ! 我が言葉を、全て記録せよ!」

羅夢は仕方なく、メモ帳アプリを開いた。

信長は、再び演説の練習を始める。

「歴史修正者よ、聞け! お前たちのしていることは、歴史の冒涜だ! 我こそが、真の革新をもたらす者――」

彼の声が、洞窟に響き渡る。

曹操は苦笑いしながら、洞窟の奥へと去っていった。

趙雲は警戒任務に戻った。

諸葛亮と毛利は、何やら相談を始めている。

羅夢は、信長の演説をメモを取りながら、ふと、携帯の画面を見た。

視聴者:0人

いいね数:0

でも、信長はまったく気にしていない。彼は、ただ話すことを楽しんでいる。

「……彼、本当に配信者に向いてるかも」

彼女はふと、そう思った。

現代のネット配信。視聴者数、いいね、コメント、収益化……

その全てから切り離された、純粋な「話す喜び」。

信長は、まさにその境地にいる。

「もっと右を向け! 角度が悪い!」

「はいはい……」

羅夢はカメラの角度を調整した。

バッテリーは229%。

夜は、まだ長い。

そして現実世界では――

病院のモニターに、新たな脳波パターンが記録されていた。

「演説」のような、リズミカルで力強い波形。

医師たちは、また首をひねる。

「今度は……何かを訴えているような……」

彼らにはわからない。

その患者が、千年の時を隔てた戦国武将の、熱い演説を記録していることなど。


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