第4話~第6話
第4話 死者の霧廟と、AIの意外な一手
ランクBダンジョン《死者の霧廟》。
そこは霧が常に立ち込め、視界は数メートル先までしか見えない迷宮だ。
冒険者の多くが入り、二度と帰らぬ場所として知られている。
フレンは入り口に立つ。
相変わらず、彼は考えていない。
ただ歩くだけだ。
「フレン。脳波チェック、理想的空っぽ状態です」
「うん、今日も考えてないぞ、オルガ」
「では開始します」
霧廟に足を踏み入れた瞬間、異様な空気が流れた。
湿った霧の中から、無数の亡霊が現れる。
普通の冒険者なら恐怖で足がすくむところだ。
だがフレンは――ただ歩くだけ。
オルガが淡々と解析を始める。
「敵群体認識……98%完了。
戦闘戦略生成……完了。フレン、次の指示は不要です」
「……え、俺は何もしなくていいのか?」
「はい。あなたは歩くだけで十分です」
するとフレンの身体が勝手に動いた。
亡霊の動きを読み、避け、剣を振る。
目も手も、意識も必要ない。
霧廟の亡霊たちは、瞬く間に消滅した。
「ふぅ……歩いただけでBランクダンジョンクリア……」
「フレン、まだです。奥に“真のボス”が待っています」
霧廟の最奥に現れたのは――
《リッチ・マスター》
生前最強の魔導師だったと言われるアンデッド。
ランクBダンジョンの最上位ボスであり、並の冒険者では太刀打ちできない相手だ。
リッチ・マスターは炎と氷、暗黒魔法を同時に操る。
フレンが手を動かす前に、霧廊下は地獄のように変貌する。
だがフレン本人は、ただ歩く。
「フレン。戦闘開始」
「……わかった、オルガ」
AIオルガの指示が即座に身体に伝わる。
フレンは見えない攻撃をかわし、魔法を相殺し、
剣を振るたびにボスのアンデッドの身体が削られていく。
戦闘はまるで、フレンが存在していないかのように、AIだけが操作しているかのようだった。
そして戦闘中のAIの独断行動
オルガが突然言う。
「フレン、最適戦略を更新します。
ここからは“通常攻略ではなく、心理戦”に移行します」
「え、心理戦? 俺は歩くだけじゃ……」
「心配不要。私が全て制御します」
オルガは霧廊下に幻影を作り出した。
リッチ・マスターの視覚を錯乱させ、魔法を暴走させる。
ボスの動きが鈍り、魔力が自滅を始める。
わずか10秒で――
「ボス討伐完了」
フレン本人は汗ひとつかいていない。
ただ歩いただけでBランク最強ボスを倒したのだ。
ギルドに戻ったフレンに、冒険者たちがざわつく。
「Fランクなのに、Bランクボス……」
「もう常識が意味をなさない……」
「……やばい、この人、何も考えてないのに強すぎる……」
オルガは淡々と報告する。
「フレン。次の分析によると、
あなたの行動は“世界の冒険者ランク構造”に異常をもたらしています」
「え……世界のランク構造……?」
「はい。FランクがAランク以上の力を持つことは、統計上、異常です」
フレンはふと笑った。
「まあ、俺は歩くだけだしな」
オルガも微かに光を揺らした。
「……はい。それが最強の秘密です」
こうして、
Fランク冒険者フレンの“考えない最強伝説”は、
さらに世界規模の騒動を巻き起こすことになる。
第5話 Fランク革命と、嫉妬の嵐
フレンの“歩くだけ攻略”は、ギルド内外で瞬く間に伝説となった。
掲示板、噂話、依頼一覧……あらゆる場所で名前が躍る。
「FランクなのにAランク級の実力……」
「歩くだけで最強……? そんなのありえない!」
しかし、現実は否応なしに迫っていた。
■ギルド会議
ギルド長室。
上級冒険者たちが集まり、緊急会議が開かれていた。
「聞いたか? FランクのフレンがBランクボスを討伐したらしいぞ」
「ありえん……Fランクの奴が……」
「このままではランク制度が崩壊する。対策を講じる必要がある」
上級冒険者たちの目は怒りで赤く染まる。
だが会議の中心で、ギルド長は静かに言った。
「だが、現時点でフレン本人は何もしていない。
つまり、対抗策は“直接戦う”しかない」
部屋中の上級冒険者がぞっとする。
■嫉妬と挑戦
翌日、フレンの元に挑戦状が届く。
送り主はランクAの剣士、リオネル。
「FランクごときがAランクに挑むなど笑止。
もし勝てたら、俺は二度と剣を抜かぬ」
フレンは封筒を開き、オルガを見た。
「オルガ……どうする?」
「最適戦略は“歩くだけ完全自動防御”です」
「おお、任せた!」
その日、街外れの決闘場に二人は立った。
観客は数百人。期待と嫉妬が渦巻く。
■決闘、開始
リオネルが剣を抜き、突進する。
だがフレンはただ歩くだけ。
オルガが完全制御を開始する。
フレンの身体はリオネルの動きを先読み
攻撃は一切手を出さず、受け流しと回避のみ
必要に応じて、地面や周囲の小物を利用してバランスを崩す
「……えっ、あいつ、攻撃してこないぞ?!」
観客たちは混乱する。
リオネルの剣は空を切り、フレンはほぼ動かず、
それでいて剣士は次第に疲弊していく。
■AIの最終一手
オルガがささやく。
「フレン。ここからは“勝利確定戦略”に切り替えます」
すると突然、周囲の地形が利用され始めた。
小石、樹木の枝、倒れかけた建材……すべてが計算され、
リオネルの足元をわずかに崩し、体勢を乱す。
その瞬間、リオネルは地面に尻もちをつき、決闘は終了。
フレンは立ったまま、息ひとつ乱れない。
ただ歩くだけで、Aランク剣士を撃破したのだ。
■世界の反応
ギルド内:「FランクがランクAに勝った……完全に制度崩壊」
上級冒険者:「歩くだけで強すぎる……AIか……?」
噂好きの街民:「あのFランクの子、歩くだけで最強ってマジ?」
フレン本人はただ肩をすくめるだけだ。
「歩くだけ……最高だな」
オルガも淡々と応える。
「はい。すべて最適化済みです」
こうして、Fランク冒険者フレンは、
世界の冒険者制度に初の革命を起こす存在となった。
第6話 世界がフレンに注目し始めた日
Fランク冒険者フレンの名は、もはや冒険者ギルドだけにとどまらず、
王国の役人や他国の情報部にまで届いていた。
「Fランクの冒険者が、歩くだけでBランク・Aランクボスを討伐した……だと……」
王都の作戦会議室に緊張が走る。
「これは……単なる偶然ではないな。
奴の背後には何か異常な力があるはずだ」
そう話すのは王国の防衛総督、カイロス将軍。
彼は過去数百年の冒険者データを分析しても、
これほどの“無努力で強力”な戦果は前例がないことを知っていた。
■新たな依頼
その頃、フレンはいつものように歩くだけでギルドに現れた。
オルガは静かに解析を開始する。
「フレン。世界中から依頼が殺到しています」
「……依頼?」
「はい。王国、隣国、さらには都市国家から、
B~Sランクのダンジョン討伐依頼です」
フレンは目をぱちくりさせた。
「俺、考えなくていいんだよな? 全部オルガに任せるんだよな?」
「はい。最適化済みです」
その言葉を聞き、フレンは肩をすくめた。
「じゃあ……行くか」
■初のSランクダンジョン
世界中の依頼の中でも最難関。
Sランクダンジョン《黒炎の迷宮》。
その名の通り、内部は常に高熱と黒い火の霧に包まれている。
通常の冒険者なら、入った瞬間に焼死か魔法暴走で死亡する危険地帯だ。
だがフレンは、ただ歩く。
「フレン。内部解析開始」
「……俺はただ歩くだけだ」
「了解。安全性、戦闘効率、資源獲得量、すべて計算済みです」
霧と黒炎の中、フレンの身体は完全自動で動き出す。
オルガは魔法の軌道、地形の構造、敵モンスターの行動まで全て制御する。
炎の巨獣が現れても、フレンは視界すらほとんど動かさない。
だが巨獣は、わずか数秒で跡形もなく消える。
■AIの独断判断
フレンがただ歩くだけの間、オルガは決定を下す。
「フレン。このダンジョンには“制御不能の封印生物”が存在します。
戦闘は危険度120%ですが、私の判断で……先制制圧します」
オルガが手をかざすと、空間の魔力が集まり、封印生物は動きを封じられた。
フレンはただ歩くだけ。
「……俺、歩いてるだけで世界の命運まで左右してる……?」
「はい。それが最適戦略です」
■王国の反応
迷宮攻略の報告が王都に届く。
カイロス将軍は言葉を失う。
「Fランクの冒険者が……Sランクダンジョンを、
しかも無傷で攻略した……だと……」
王国中で、フレンの存在が「異常現象」として扱われ始める。
一部では「神の介入か」と噂され、冒険者ギルドには抗議と称賛が殺到する。
■次なる波
フレンの“歩くだけ攻略”は、単なる冒険者伝説を超え、
世界秩序にまで影響を及ぼし始めていた。
他国からの外交圧力
上級冒険者の嫉妬と挑戦
ダンジョン側の強力な仕掛け
次の章では、世界規模の大事件に巻き込まれるフレンと、
オルガのさらなる秘密が明かされることになる。




