5 綺麗な声だね。君の声。大好きなんだ。
綺麗な声だね。君の声。大好きなんだ。
こはくの声はとても綺麗だった。
出会ったときから(高校生のころだ。なつかしいな)そう思っていたけど、白虹こはくになって、こはくの声はますます綺麗になった。(いっぱい歌のトレーニングをしたし、のどにもきをつけた生活をするようになった)
その歌声は、本当に美しかった。(ちゃんと人気もちょっとずつだけど、きちんとでていた)
ぼくは自分の声があんまり好きじゃなかった。(まあ、別に気にしていたわけじゃないけど)
でもこはくは「私、ことりの声。すっごく好きだよ。変な声だなんて思ったことないよ」と子供っぽい顔で笑いながら言っていた。
(教室でよく二人でだらだらしてた。あのころは本当に楽しかった)
高校生のときは、本当かな? って思っていたけど、今はこはくは本当に『ぼくの声が好きだって』、そう思っていたんだってわかるようになった。
こはくが好きだよって、言ってくれたから、ぼくは自分の声が嫌いじゃなくなった。(本当の本当は少し気にしていたんだ)
だから、ありがとう。こはく。
「ほ。よっと」
と言いながら、こはくはジャージを着て、ダンスの練習をしている。運動神経が悪いから、それはとってもぶかっこうな風景だった。(思わず、少し笑ってしまった。それでこはくに怒られた)
「コスプレ? こはくの?」と汗をタオルで拭きながら、こはくは言った。
「うん。動画にしようよ。絶対に人気が出るよ」とぼくはいった。
それからぼくは自分で作った白虹こはくの衣装をこはくに見せた。するとこはくは「おー。すげー」と言って、目をきらきらとさせて、驚いた。
本人が映る動画ははじめてだったので、かなりどきどきしたけど、こはくは白虹こはくの衣装を着て、顔は写さないままで、画面の中ではしゃいでいた。
「では、少し恥ずかしんですけどね、歌を歌っていきたいと思います。なにがいいですかね? リクエストとかありますか? うん。はいはい。なるほど」
といいながら、白虹こはくのコスプレをしているこはくが、楽しそうな声でみんなとお話をしている。
そんなこはくをみて、頑張って、白虹こはくの衣装を作って(すごく大変だったけど)よかった、とぼくは思った。