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梢ラボラトリー(株) 世界樹の守護者って正気ですか!?  作者: 鷹雄アキル
第二章

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第93話 ちょっと待てぃ!


 謁見の間を出ると、前方から猛スピードで駆け寄ってくるオフィーと、その兄・アリキア公爵の姿が見えた。


 二人に気づいた梢社長が、両手をバタバタ振りながら叫ぶ。


「ダメダメ! 入っちゃダメー!」


「セーシア! 何が起こってるんだ!」

「第二皇子が変身して大暴れしてるんだよー!」


 ……ん?  合ってるようで、微妙に違う説明。


 オフィーがジト目を僕に向け、 ちゃんと説明しろと目で訴えてくる。


「えーと……カルビアンの悪事を王様の前で暴いたまではよかったんだけど、アイツが隠し持ってた『悠枝の冠』が暴走して、そのまま奴はそれに飲み込まれて……でっかい木になって今は暴れている。わかった?」

 オフィーが隣のツバサさんに目を向ける。

 彼女も僕に合わせて、コクコクと頷いた。


 それを見て、オフィーは額に手を当て、首を振る。

「……まったく分からん」


 一方、アリキアさんは「殿下が?」と呟くや否や、そのまま謁見の間に飛び込んでいった。

「ちょっ、危ないよー!」

 梢社長が慌てて声を掛けるが、アリキアさんはそのまま謁見の間に消えていった。


「それで、カルビアンはどうなったんだ?」

「どうなったも何も……木のバケモンになったんだよ。そんで、『俺が王様だー』とか言って、みんなを襲っている」


「あの馬鹿野郎が……」

 オフィーが低く呟く。

 

 その顔には侮蔑や怒りだけじゃなく、どこか寂しさや哀れみが滲み、その目はどこか遠くを見つめていた。

 梢社長は、俯くオフィーの肩を慰めるようにポンポンと軽く叩き、優しく微笑んだ。


 ゴゴゴ……


 壁や天井が不吉な軋み音を立てる。

 その度に、足元が揺れ、周りに埃が舞い上がる。

 

 謁見の間からは、ひっきりなしに人々の悲鳴や怒号が響いてくる。


「……ねえ、ここ、ヤバくない?」

 梢社長が腕を組みながらぽつりと呟いた。

 皆が顔を見合わせ、無言でうなずく。


 その反応を見て、梢社長はしばし考え込み——

「……よし」

 ポン! と手を打つ。


「じゃ、みんな! 用事は済んだし、危ないから会社に帰ろっか!」


「「「「は?」」」」

 

 全員が、ポカンとした顔で梢社長を見る。


 その視線にたじろぎながら、梢社長がキョロキョロと周りを見回す。

「え、なに?」


「お前……このまま帰るつもりか?」

 ウメさんが、呆れたように言う。


「はい! ツバサちゃんも救出できたし、森川くんも無事だったし、帰りにサブちゃん拾って帰ればよくないですかー?」


「……」

 ウメさんが、おいおいおい、と頭を抱える。


「ドンはどこ行ったんだ?」

 オフィーが聞く。


「中で戦ってるよ! でも大丈夫! ドンちゃんなら無敵だから!」

 梢社長がにっこりと笑う。


「それにね、ガンちゃんが待ってるから、早くツバサちゃんを返さないと! 私、めっっっちゃ怒られるんだよ!」


 ——いや、気にするベクトルおかしくない!?

 

 とはいえ、本格的にヤバそうだし、ここは社長の意見に乗っかったほうがいい気がしてきた……。


 ……ウン、帰ろう!!


「ですね! じゃあ撤収しましょう!」


 そう言うと、梢社長も「でしょー」とにっこり笑う。

 

「よし帰ろう帰ろう!」

 大きく手を振りながら、さっさと歩き出そうとした——その瞬間。



「ちょっと待てぃ!!」


 怒号が響いた。


 振り向くと、腕を組んで仁王立ちする“のじゃロリ大樹卿”と、その隣で頬を膨らませるルリアーナさんが立っていた。

 ……しかも、ちょっと怒ってる?

 

 「まさか、このままとんずらしようとしてるんじゃなかろーの」


 ——とんずらって……


「セーシア! ここはあなたの生まれた国でもあるんですよ! なんで帰ろうとしてるんですか!」

 ルリアーナさんが顔を真っ赤にして詰め寄る。


「えー、だって危ないしー? あれヤバイですよー、大樹の力だよー?」


「だからといって、逃げちゃいかんじゃろう。このままだと、この国が滅ぶぞい」

 目を見開き、慌てて言う大樹卿。

 

「いや、大樹卿様もお姉ちゃんも逃げてましたよね?」

 梢社長が口をとがらせ指摘する。


「わしらは……作戦タイムじゃ! 逃げたわけじゃにゃいい!」


 ——焦って言うもんだから、噛んでる……。

 

「……で、大樹卿様。何か止める方法はあるんですか?」

 オフィーが詰め寄ると、大樹卿は「うーん」と目を瞑って考える。


「基本は……燃やすしかないのう。しかし、お主らの魔法では炎が届かんじゃろうて」


「大樹卿様なら……?」

 オフィーが言いかけた瞬間、大樹卿が手を挙げて制した。


「わしの力は、大樹様の加護によるものじゃ。それをもって、あの力を抑えることはできんのじゃ……」


 

「では、普通に火を放つしかないか……」

 オフィーが拳を握りしめる。


 その時、半壊した扉の向こうからアリキアさんが顔を出し、こちらに向かって叫んだ。


「オフ! 手を貸してくれ!」

 

 オフィーはグッと頷き、

「今行きます、兄様!」

 と即答すると、さっと梢社長の手を取り、そのまま駆けだした。


「えー」と不満そうに声を上げる梢社長だったが、そのまま引っ張られていく。


「森川さん! 私たちも行きましょう!」

 キラキラした目で僕の服を掴むツバサさん。まるでニチアサのヒロイン気分だ。


 ——ツバサさん。魔法は使えても変身はできないですよ……


 盛大にため息をつき、彼女に従って扉をくぐった。


 

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