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梢ラボラトリー(株) 世界樹の守護者って正気ですか!?  作者: 鷹雄アキル
第二章

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第89話 邪魔でーす


「本気ですか? 外にはドラゴンがいるんですよ!」


「さっき見たから知ってるよー!」

 軽く手を振りながら答える梢社長。

 

「オフィーもいるしさー、あんな空飛ぶトカゲなんか、ちゃっちゃとやっつけちゃうと思うよ」


 ——空飛ぶトカゲって……いや、苦戦してるんだけど!?


「森川、大丈夫だ。さっき、あいつの大剣も渡しといたから。それがありゃ戦えるだろ」


 ウメさんまで簡単に言うけど、相手はドラゴンだよ!?  ……いや、待てよ。そうだった。この二人、さっきドラゴンの下をバイクで突っ切ってきたんだった。それも平然とした顔で。

 

 ——この二人、感覚がおかしすぎる。


「何だったら、手伝ったほうがいいのかな?」

 梢社長は軽い調子で言うと、まるで散歩でもするかのように、壁の大穴へと向かって歩いていく。


 その間にも、ゴブリンと狼モドキが彼女に飛び掛かるが、社長はチラリと目を向け、手を軽く払う。


 シュッ——!


 無造作に放たれた斬撃が、魔物たちをまとめて切り裂いた。


 そして、梢社長は壁の大穴から身を乗り出し、外を見渡す。

 

「あー、飛んじゃってると剣が届かないんだね」


 呑気な感想を漏らすと、ドラゴンに向けて手をかざした。


「グラビティ・バインド」


 短く呟く。その瞬間——


 空中で悠然と滞空していたドラゴンが、突如バランスを崩す。

 両翼を必死に羽ばたかせるが、抗いきれず、まるで上から押さえつけられたかのように、ずしん! と地面に墜落した。


「わたし、重力魔法ってあんまり得意じゃないんだけど……上手くいってよかったー」


 そう言って微笑みながら、外に向かって手を振る。

「オフィー! 頑張ってねー! よっ、ドラゴンスレイヤー!」


 拍手をしながら囃し立てる梢社長。


『セーシアか! 助かった、あとは任せろ!』

 インカム越しにオフィーの声が入る。


 次の瞬間——


「トルネードスピア!!」


 オフィーの叫びとともに、渦巻く風の槍が轟音を立てて発射される。

 それは、先ほどとは比べものにならないほどの威力で、ドラゴンの巨体を真正面から貫いた。


 ——ドォォン!!


 地響きを上げて倒れるドラゴン。


「おー、すごーい!」

 梢社長は壁の大穴から見下ろし、満足げにぱちぱちと手を叩いた。

 そして、クルリと振り返ると、埃をパンパンと払いながら言った。


「じゃ、王様を探しに行きましょうか」

 

 何事もなかったかのように、社長はすたすたと歩き出した。

 その先には、えんじ色の大きな扉——そして、群がる魔獣たち。


 「ちょっとゴメンねー、邪魔でーす」


 梢社長は前に向けて手をかざす。

 その手を基軸に、空気が渦を巻くように風が動き、いくつもの尖った氷の粒が現れる。

 

「ほい」

 

 掛け声とともに、その氷のつぶてが魔獣たちを一気に殲滅する。

 瞬く間に魔獣たちの体を貫き、次々と凍りつかせていく。


「す、すごい……!」

 隣のツバサさんが驚きの声を漏らす。


「まったく、守りがいがねーな。社長様は」

 ウメさんが肩に剣を担ぎながらぼやく。

 

 梢社長はくるりと振り返り、満面の笑顔を浮かべる。

「久々なんで、張り切ってます! さ、行きましょう!。王様どこにいるかなー?」


 ウメさんは大きくため息をつき、魔獣の亡骸を蹴りのけ、無造作に道を開けながら前へ進む。

 その後ろを、ぴょんぴょんと跳ねながら後を追う梢社長。

 

「森川さん! 梢社長って凄いですね!」

 ツバサさんは目をキラキラさせ、胸の前でギュッと拳を固める。

「私も頑張らなくちゃ!」 と意気込む。

 

「……あんな人になっちゃダメです」

 ツバサさんに心からお願いしてから、崩れた扉をまたいだ。


 扉の向こうには広々とした空間が広がっていた。


「ここは、謁見の間ですねー」

 先を行く梢社長が辺りを見渡しながら呟く。

 

 中央には深紅の絨毯が真っ直ぐに敷かれ、その先の壁には重々しい大きな幕が掲げられている。たぶん国旗か何かだろう。

 

 中ほどには数多くの兵士たちが、壁を作るようにこちらに向けて剣を構え、厳しい表情で立ち並んでいる。

 さらに奥には、数段高くなった玉座のような場所があり、そこにも兵士たちがずらりと並んでいた。

 

「あの奥に座ってるのが、この国の王様ですかねー。私も初めて会うけど。なんでこんなところにいるんでしょう?」

 梢社長が耳打ちしてくる。


 ——王様!?

 

 そんなことを気にする素振りもなく、いつものようにスタスタと前へ進む梢社長。


 目の前にいた、鎧を身に着けた厳つい男が剣を向け、怒鳴る。

「何者だ貴様ら! 魔獣は! 魔獣どもはどうした!」

 

 兵士たちが一斉にこちらを睨み、玉座を庇うように兵士たちが壁を作る。


「あー、扉の前の魔獣は殺しちゃいましたよ。たぶん庭のドラゴンもやっつけちゃったと思いますー」


「なんだと!?」

 兵士たちの間に動揺が広がる。


「ちょっと、王様にお会いしたいんですけど、どこにいらっしゃるんですかねー?」

 梢社長が兵士に尋ねる。


 一瞬、兵士たちの視線が奥に集まる。


「陛下はここにはいらっしゃらない!」

 一番前にいた兵士が叫ぶが、梢社長はにっこりと笑う。

 

「じゃあ、あの玉座にお座りになってる人は、だれですかー?」

 その瞬間、目の前にいた兵士が目を真っ赤にして「無礼者が!」とこちらへ詰め寄ってくる。


 ウメさんが社長の前にスッと出て、剣を肩から降ろす。


 そんなウメさんの肩越しに、梢社長はひょっこり顔を出し、手を振る。


「待って待ってー! 私たち異世界の会社から来た……」


 その言葉に、奥の方から「異世界だと!?」という叫び声が響いた。


 声の方に目を向ける。

 玉座の方だ。


 そこにいたのは——


 最も見たくない男が、兵士たちを押しのけ立ち上がり、こちらを睨んでいた。


「ありゃりゃー。王様じゃなくて皇太子様じゃないですか」

 梢社長ががっかりしたように言う。


 そう、そこにいたのは全ての元凶であり、今もっとも殴り倒したい男。

 カルビアン第二皇太子だった。



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