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梢ラボラトリー(株) 世界樹の守護者って正気ですか!?  作者: 鷹雄アキル
第二章

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第67話 ボウ!!


 前に立つのは、甲冑を着て剣を腰に差した三人の兵士。

 どうやら彼らが門番のようだ。

 

 三人は、いかにも筋肉の塊と言った体つきをしていて、バイクを押す僕らを見下ろしている。


「身分証を出せ」

 そのうちの一人が無愛想に言い、手を差し出す。


 僕はバイクのサイドスタンドを立て、首にかけていた身分証を渡した。

 門番は書類と僕らの顔を交互に見比べる。


 そして、両手で支えているバイクに目を止める。

「これはなんだ?」


 そう言うと、門番は無遠慮にバイクを触り始めた。


 そんな様子を見て、サブリナが口を開く。

「これは最新型の魔動車でーす。精密機械なので、むやみに触ると爆発しますよ? 気を付けてくださいねー」


 門番はちらりとサブリナに目をやると、「フン!」と鼻を鳴らし、再びバイクに手を伸ばした——その瞬間。


「ボウ!!」


 サブリナが奇声を上げる。


 門番は驚いて後ろに跳び退る。


 ——あーもー、やめなさいって!


 サブリナは声を出さないまでも、口を押さえて肩を震わせている。


 この娘、完全に面白がってます。


 門番は顔を真っ赤にし、「おまえら!」と睨みつけてくる。


 そりゃそうなるよね。どーすんだよ、サブリナ!


 こいつはホント、後先考えずに面白い方向に振っちゃうんだから、まったく困ったもんです。


 気づけば、周囲を剣を抜き構えた兵士たちに囲まれていた。


「ごめんなさーい! だって門番さんが危なかったからさー」

 サブリナが取り囲む兵士たちを見回し、クスリと笑う。


「危ないってどういうことだ!」

 門番の一人が剣を構えて声を上げる。


 僕は慌てて説明する。

「いやー、こいつの言う通りなんです。この魔動車、盗難防止装置が付いてて、無暗に触ると大きな音が鳴るんですよ」


 ——嘘だけど……


 すかさずセルを回し、エンジンをふかす。

 バイクが咆哮を上げる。

 兵士たちは音に驚き、一歩下がる。


「何もしなければ大丈夫です。ただ、あんまり近づくと……」


 僕はアクセルを捻り、エンジンをリズミカルにふかす。


 ドルゥン! ドルゥン! ドルゥン!


 エンジン音が爆音を立て、回転数を上げる。


 その音に合わせて、兵士たちが一歩、二歩と後退していく。


 ——見たか! この内燃機関の雄叫び!


 この世界では魔力が幅を利かせていて、内燃機関で動く機械がないことを殿下に聞いていた。

 それに、価値観の違いか、大きな音を出す機械自体が存在しないとも言っていた。


 ——特にこのバイク。

 なぜかマフラーが改造されてるんだよね。

 

 前のオーナーさん、結構やんちゃ系の人だったのかな?


 仕方ない。実力突破か? そう思った瞬間——。


 バイクの音をかき消すほどの大声が響き渡った。


「てめーらー! なにしとんじゃ!!」


 気が付くと、目の前に背の高い女性が仁王立ちしていた。


 黒地に銀の刺繍が施されたチャイナドレス風の服をまとい、腰まであるウェーブのかかった黒髪の美人だ。


 片手には長いキセルを持ち、鋭い目で僕らを睨みつけている。


 女性は真っ直ぐこちらに大股で歩いてきて、僕らの目の前で立ち止まり、恐ろしく凶暴な目で睨みつけたかと思うと——。


「このシャバ僧が!!」


 突然、僕とサブリナの頭を思いっきりはたいた。


 一瞬、目に火花が散り、思わず崩れそうになる。

 サブリナは「ギャー!」と大声を上げ、頭を抱えてうずくまってしまった。


 そんな僕らを横目に、女性は兵士たちの方へ、くるりと向き直ると、深々と頭を下げる。


「わりー! 調子に乗ったうちの舎弟が迷惑かけた! 本当に申し訳ない」


そして、今度は僕とサブリナの頭をしっかりと掴み、無理やり押し下げた。


「こいつらには、よーく言っておくんで、ここはひとつ! あたしの顔に免じて許してやっとくれ」

 もう一度、彼女は腰を深く折った。


 すると、兵士の一人がおずおずと口を開いた。

「なんだい、こいつらウメさんとこの関係者かい?」


「そーなんだよ、管理局のお偉いさんに頼まれてねぇ、魔動車をこの街まで運ばせてたんだよ。それが調子に乗りやがって!」


 そう言うや否や、再び僕とサブリナの頭を思いっきりはたいた。


 そして、僕が呻きながら前のめりになったところで、容赦なく腹に蹴りを入れる。


「ぐえっ……!」


 ——こ、この人、容赦なさすぎる……!


 僕はそのまま地面に崩れ落ちる。それでも彼女の攻撃は終わらず、うずくまった僕に何度も蹴りを入れてくる。

 挙句の果てには、頭を思いっきりヒールで踏みつけられた。


 その様子を呆然と見ていた兵士たちが、さすがに止めに入る。


「ウメさん、わかった、わかったから! もういいよ、そんな奴ら早く連れてってくれ!」


 ゼエゼエと息を切らした彼女は、兵士たちにもう一度、「手間かけさせてすまんな」と深々と頭を下げると、地面に転がる僕の襟首を掴んで立たせる。

 そして、耳元で「さあ、とっとと行くぞ」と小声で言った


 兵士たちも「もういいから、早く連れてってくれ」と手をひらひらと振った。


「邪魔したね! 今度一杯奢るから、また声かけてくれよな!」

 そう言いながら彼女はバイクを押しつつ、僕とサブリナの尻を蹴って前に進ませる。


 兵士たちはまるで汚いものを見るような目で僕らを見送りながら、シッシッと手を振った。


 門をくぐり、腹を押さえながらよろよろと歩く僕。

 サブリナも頭を抱えながら並んで歩いている。


 一方、彼女は慣れた様子でバイクを押しながら、じろりと僕らを睨んだ。


「聞き覚えのあるエグゾーストノイズだと思って来てみりゃ、お前ら一体何してんだよ、バカたれが!」


 僕は、ズキズキ痛む腹を押さえながら彼女を見る。

 すると、彼女は「まったく、とんでもねえ奴が入ってきたもんだ」とクスリと笑う。


「お前ら、梢ラボの人間だろ? 私は兵頭梅子、梢ラボラトリーの現地社員だ。いまはこっちの世界に住んでるけどな」


 そう言って、彼女はニッと笑った。



お読み頂きありがとうございます!

ブクマークや、★でご評価いただければ嬉しいです!

何卒よろしくお願いいたします。


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