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梢ラボラトリー(株) 世界樹の守護者って正気ですか!?  作者: 鷹雄アキル
第二章

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第60話 異世界に行く!?


 その後も、梢社長とドン殿下があれこれ言葉を尽くして説得してくる。


 しかし、サブリナはまったく臆することなく、次々と反論を繰り出す。


 最初こそ猛反対していた二人だったが——最終的には、サブリナにあっさり論破されてしまった。


「そういうさ、何々のためとか、こうしなきゃいけないとか、そんなのは二人を助けてから考えればよくない?」


 社長とドン殿下は言葉を失い、サブリナを見つめる。


「私とモリッチにとっては、連れ去られた仲間を取り返す。ただ、それだけだもん。もしかしたらさー、うちの大樹様も同じこと思ってるかもね」


 いつもの彼女とは違う。

 その姿が、やけに眩しく見えた。


 ……カッコいい! 気がする、たぶん。


 そうだ。今は四の五の言ってる場合じゃない。

 二人を探して助ける——それだけだ!


 僕はグッと拳を握りしめた。

 その横で、サブリナは——


「異世界だぜ~! 楽しみすぎる! ウヒヒヒヒ!」


 ……残念。やっぱり、いつものサブリナだった。


「いやしかし、あまりに無謀すぎる」

 ドン殿下が砂を噛むような顔で呟く。


「そうだよ! 二人とも、何も知らないんだよ!」

 梢社長が悲鳴のような声を上げる。


 それでも、サブリナは平然としていた。


「だからいいんじゃん! そっちの常識なんて、私たち知らないんだもん。怒られたら、『知りませんでした〜、ごめ~ん、テヘ♪』で済ませる」


 いつもの軽い調子でそう言うと、社長を見てニヤリと笑う。


「それでさ、ヒトミッチが何か言われたら、『うちのバカたちがすいません何も知らずに暴走しました。ゴメン』って謝ればいいじゃん! それが社長の仕事でしょーよ!」


 そんな簡単に済むとは思えない。

 だけど、迷っている時間がないのも事実だ。


「ドン殿下、そっちの世界へはどうやって行くんですか?」

 僕は尋ねる。


「根界の門を通れば、あちらの転移門につながっています」


「僕らでも行けます?」


「行けるか行けないかで言えば——行けるね」


「二人が、どこにいるのかも、ある程度あたりがあるって言ってましたよね」


「そうだね。大体の予想はついてる。だけど、そこは安全な場所とは‥‥‥」

「じゃあ行こうぜ! モリッチ、準備があるから“こかげ”行くぞ!」

 サブリナがドン殿下の言葉を待たずして叫んだ。


 そこからの動きは、あっという間だった。

 まるで何かに背中を押されるように、とんとん拍子で話が進んでいった。


 とはいえ、サブリナが強引に話を進めていっただけだけど。


 ……というわけで、まずは“喫茶こかげ”に向かうことになった。


「シオッチー! でっかいキャリーケースあるー?」

 店に入るなり、詩織さんに声をかけるサブリナ。


「なになにー、どうしたのー?」

 そう答えた詩織さんを、そのまま店の奥へと連れ去っていった。


 カウンターに腰かけた僕に、淳史くんがコーヒーを淹れてくれる。

「なんかあったんですか? サブちゃん、やけに張り切ってますけど」


「まあ、いろいろあってね。後で梢社長に聞いてみてよ」

 僕は首を振り、大きくため息をつく。


「……なんか、大変そうっすね」

 苦笑いする淳史くん。


「モリッチ! これとこれ、車に積んどいてー!」

 サブリナが、大きなキャリーケースとコンテナケースを抱えて戻ってきた。


 僕はそれを持ち上げる——

「重っ! こんなの持ってくつもりかよ!」


「これでも絞ったんだよ!  いやー、自分の優秀さが怖い!  一応、こっちに持ってきといてよかったわー!」


「いや、そもそも持って行けんのかよ、こんなに」


「オフィーだって自分の剣持ってきてたし、大丈夫っしょ! これは私にとっての剣なの! ほら、さっさと積めって!」


 そんなサブリナを見て、詩織さんが首を傾げる。

「ねーねー、どっか行くの?」


「ちょっとねー、異世界行ってくる!」


「「 はぁ!? 」」


 淳史くんと詩織さんが固まる。


 僕はそんな二人に向かって言う。


「しばらくデリバリーできないかもしれません。すみません。何かあれば、社長に伝えておいてください」

 唖然とする二人を残し、僕らは会社へ戻った。


 そこには、ドン殿下が待ち構えていた。


「本当に行く気かい?  正直、何が起こるか保証できないよ」


「保証なんていらんわ!」とサブリナが叫ぶ。


「行くしかないでしょ! ああなったサブリナは止まらないです」


 僕が言い切ると——


「言い方!」


 サブリナのキックが思いっきり尻に入った。


 その横で、持ってきた荷物を見た梢社長が眉をひそめる。


「……これ、全部持ってくつもり?」


「えー、持ってけないのー?」


「いや、まあ……持っていけるけど……」


 たしかに。

 持って行けたとしても、その先での移動を考えると——


「向こうでは、結構移動することになるんですか?」

 僕はドン殿下に尋ねた。


「転移門からは、そこそこ距離があるね。私の竜馬は預けてあるけど……馬車か魔動車を手配するとなると、少し時間がかかるかな」


 竜馬! 魔動車! なにそれ、すごい興味ある! 

 でも、そんな余裕あるのか?


 ふと、倉庫にあるアレを思い出し、向かう。


 ——そう、最初に見たとき、何か違和感があった。


 その時は、まあ、趣味人がいたのかなー程度で納得していたけど、もしかして……。


 僕はイグニッションにカギを差し込み、セルを回す。


 単気筒のエンジンが、咆哮を上げた。



お読み頂きありがとうございます!

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