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梢ラボラトリー(株) 世界樹の守護者って正気ですか!?  作者: 鷹雄アキル
第一章

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第38話 守護精霊


 どれくらいの時間が経っただろう。


 突然の強烈な輝きに、反射的に目を閉じたが、瞼越しにも輝く光が視界を埋め尽くしていた。


 まるで光が視界の隅々にまで染み込むような感覚。 

 その強烈な輝きは、肌にまで刺さるような輝きだった。


 しばらくして、光が和らぎ始める。

 瞼を開けると、視界はぼんやりと白いまま。


 頭もくらくらして、足元がふらつく。


 徐々に視界が戻る中、目の前には膝をつき俯くオフィーの姿が浮かび上がる。


 その向こうでは、光に視界を奪われた兵士たちが顔を抑え、悶え苦しんでいる。


 そして、神戸総一郎。


 なぜか右手を抱え込むようにして床に蹲り、低いうめき声をあげていた。


 ——何が起こったんだ?


 その時、不意に頭の中に声が響く。


『ユーイチ、遅い!』


 その声は、まるで少女のようだった。幼さが残り、舌足らずな喋り方。


『何度も何度も呼んだんだぞ! 遅いんだよ! いったい何してたのさ!』


 ——守護精霊の声か?


 もっと荘厳で落ち着いたイメージだと思ってたけど、さっきからずっと僕に文句を言い続けている……なんか違う気がする。


『君ってそういうとこあるよねー。愚図でのろまなとこ! ちょっとはキビキビ動けないかなー? さっきも見てたけど、ユーイチだけ全然活躍できてないよね、ね?』


 声はどこか楽しげで、明らかに煽っている。

 休むことなく僕を責めるように言葉を重ねてくる。


 ——本当にこの声、守護精霊かよ?


 僕はふらつきながら立ち上がり、声のする方を探そうと視界を巡らせる。


 しかし、ぼんやりとかすむ視界の中で見つかるのは、蹲る総一郎と顔を押さえ苦しむ兵士たちだけだ。


『それはそれとして! 目の前にいるオフィーリア?だっけ、その子に、魔術障壁はもう解除したよって伝えて!』


 声に促されるまま、僕はオフィーに声をかけた。


「オフィー、大丈夫か?」


「あー、大丈夫だ。ちょっと目がくらんだだけだ」

 頭を振るオフィー。


「さっきから頭の中で、もう魔術障壁は解除したって言ってくるんだけど‥‥‥」


 オフィーは一瞬、表情を曇らせるが、すぐに何かを察したように立ち上がり、目の前の見た目には変化のないガラスの前に立った。


 そして、ためらうことなく大剣を頭上に掲げると、そのまま振り下ろす。


 ガシャーン——!


 砕け散る音とともに、目の前のガラスが光の粒となり消えていく。


 ——魔術障壁が解けた……?。


 オフィーは何事もなかったかのように歩き出し、蹲る総一郎の前で足を止めると、無言で思い切り蹴り上げた。


 総一郎はまるでボールのように吹き飛ばされ、壁に激突して崩れ落ちる。


 その後、オフィーは構えることすらせず、大剣を振り回しながら兵士たちを次々と殴り倒していく。


「ウーッ!」「ギャーッ!」と叫び声を上げる兵士たちは、ゴミくずのように床へ散らばった。


『あの子、強いねー』

 頭の中に響く声が楽しげにそう言った。


 僕はもう一度声の主を探し、視線を巡らせる。


『あれー、もしかして僕が見えないの?  契約主のくせに』


 声が少し呆れたように言ったかと思うと、続けて『これなら見えるかな?』と問いかけてきた。


 耳元でポン、と何かが弾けた音がした。


 振り向いた先には、小さな光の粒がゆっくりと集まり、次第に形を成していくのが見えた。

 そして、手のひらほどの大きさの存在が現れた時、僕は思わず息を呑んだ。


 その姿は……鳥? いや、蝶か?


 いや、もっと違う……童話や漫画で見たことがある姿だ。


「……妖精?」


 そこに浮かんでいたのは、手のひらほどの大きさで、背中に蝶のような透明な羽を持つ小さな存在だった。


 羽は不思議なことに動いていない。

 それなのに、僕の顔の高さでふわりと浮いている。


 緑色の大きな瞳に、緑色の髪。ツインテールっていうんだっけか? 長い髪を二つのおさげにして縛ってる感じ…そんな髪型。


 服はどこか古代ギリシャ風で、まるで彫像から抜け出してきたかのようなデザインだ。


『かわいいーだろー!』

 声が誇らしげに言う。


 ——まぁ、かわいい。

 でも……ちっこい。そして、なんだかウザい。



「いったいどうなってるんです? すごい光で一瞬意識が飛んじゃいましたよ」

 神戸氏が頭を振りながらこちらに歩いてきた。


「それに、その女の子……もしかしてその子が例のお目当ての子ですか? 私には浮いてるように見えるんですが」


 ——見えてるんですね、このちっこいの。


「どーやら、そうみたいです。ちなみに、見ての通り浮いてます」


『おい! 言い方!』


 妖精が僕の頭を軽く蹴り上げる。

 ちっこいから痛くないかと思ってたけど、意外とクラクラする。


「なんか怒ってるみたいですね」

 神戸氏は呆れたような顔をしてそう言い、オフィーが蹴り飛ばした総一郎の方へ歩いていった。


「そういえば、ブレスレットを探しに来たんだけど……君がそれなの?」


『僕がブレスレットに見えるなら、君には目の治療もおすすめするね。それと、頭の治療は必須だよ』


 ——この子、口悪いなー。


「で、ブレスレットはどこにあるか知ってる?」


『さっき、あの男の手首を吹き飛ばした時にどっか飛んでった』


 手首……吹き飛ばした?


 僕は、壁に吹き飛ばされた総一郎の方を見る。


 そこでは、オフィーと神戸氏が総一郎を足でつつきながら、見下ろしているのが見えた。


「こいつ、手首が血だらけじゃないか?」

 オフィーが首を傾げながら言う。


「まるで爆発で吹き飛んだみたいですね」

 神戸氏が奴の服を破り、血だらけの腕を処置している。


 ——吹き飛ばしたんだ、本当に。


『あ! 見つけた! そこにあるじゃん。もう二度と無くすなよ!』


 妖精が足元を指差す。そこには、あのブレスレットが転がっていた。


 僕はそれを拾い上げ、無意識に手首に嵌める。


 ——やべ、つい嵌めちゃった。


 ブレスレットを嵌めた瞬間、しっくりと手首に馴染む感覚があった。だが、同時に思い出してしまう。


 ——これ、嵌めると二度と外れなくなる仕様だったよな。手首を切る以外には……。


「‥‥‥嵌めなきゃよかった」



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