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第14話 怪しいって、何が?


 サブリナが戻ってきて、携帯2台を目の前のテーブルに置いた。


「はいよ、できたぞ。こっちがモリッチの個人携帯、で、こっちが会社用」


 ——モリッチって…。


「ああん、なんだよ。ありがとうは?」

 立ったサブリナが座る僕を見下ろして睨みつけた。


 ——はい。僕はモリッチです。


「‥‥‥ありがとうございます」


 取り敢えず、お礼は言っておく。社会人だから。決してサブリナが怖かったわけじゃない。断じて…。


「どうだった? 携帯の中身いじられてたか?」岩田さんが聞く。


「大丈夫だった。なんもない普通のケータイ。しいて言えば、着信なさすぎ、友達少なすぎなだけ」


 岩田さんと詩織さんが憐れむような目で僕を見つめる。


 ——サブリナ、その言い方!

 

「そういやー、昨日の夜、着信が一件あったな」

 サブリナの発言に、岩田さんが眉をピクリと動かし、僕に聞いてくる。


「森川君。誰からの電話だった?」


「大学時代のゼミ仲間です。こっちに引っ越す予定だから会おうって、久々に電話してきたんです」


 岩田さんは腕を組んで、ウーンと唸る。


「それ、怪しいな」

「怪しいよなー!」

「怪しいねー」


 三人揃って僕を見る。


「怪しいって、何がですか?」


「その相手は、普段から仲いいのか?」

 岩田さんが聞いてくる。


「いや、大学卒業以来話したことないですけど。てか、在学中もあんまり話した記憶もなくて、珍しいなとは思ったんですけどね」


「名前は?」


 岩田さんがポケットから手帳を出す。


「大谷です。下の名前は思い出せないけど」


「ゼミの名前は?」


「唐松ゼミです」


 岩田さんは「わかった」と言い、手帳にメモを取る。


「とりあえず、今はその男とは会わないように。なんだったら、電話も無視すればいい…。いや、無視するように」

 そう言うと手帳をぱたんと閉じ、胸ポケットにしまった。


「森川君。もし、寂しくなったら、うちの店においで。愚痴くらいなら聞いてあげるから」


 詩織さんが慈愛に満ちた目で僕を見る。横では、サブリナが腹を抱えてケラケラと笑っている。


「そんなに気にしなくてもいいよー。人は孤独を知るから優しくなれるんだから」

 ダメ押しをする詩織さん。


 これって、完全にかわいそうな子扱いされたません?


「そもそも()()()って、どういうことですか?」

 気を取り直して岩田さんに聞いてみる。


「何年も連絡してこなかった奴が、急に連絡してくる。しかも君が梢社長と会った日にだ。怪しいに決まってるだろう」


 そう言って、岩田さんは水筒からコップにお茶を注ぎ、一口飲む。

 サブリナもコップを突き出し、岩田さんにお茶を注がせる。


「たぶん、どっかの機関か、事情を知っている会社の奴だろうね…ヒトミッチの情報なら狙っている連中はいくらでもいそうだから」


 梢社長の事までヒトミッチ呼びって……しかも呼びにくくなってるし。


「でも、僕が梢社長と会ったなんて、誰も知らないと思いますけど…」


「モリッチはどこでヒトミッチと会ったの?」


「ハローワークで…」


「え! ヒトミッチのとこってハロワで募集してんの?」


 このパターン…ついさっきもあったような…。


「ハローワークの駐車場で直接声を掛けられたんです」


「ひとみちゃん、ハロワを冒険者ギルみたいなもんだと思ったらしいよ」

 詩織さんがアハハハと笑いながら言う。


 あんぐり口を開けて驚くサブリナは、「なんだよそれ…いやいや、合ってんのか?…違う違う!真逆だろ…」と一人でノリ突っ込みをしている。


 ——はい、そんな姿の人、さっきも見ました。


「まあ、ヒトミッチに監視が付いてても何の不思議もねーけど」


 サブリナが残ってたサンドイッチにかぶりつく。


「これでめでたくモリッチも監視付きだな。ウヒヒ、良かったじゃん?」


 嬉しそうに笑うサブリナ。僕はげっそりした気分で頭を抱えるしかない。


「たぶんな、それにしても森川君は無防備すぎるけど…」

 盛大にため息をつく岩田さん。


 ——事情を知らなかったので仕方なくないですか?


「監視されるって。結構、危険ですかね?」

 みんなの顔を見回して尋ねる。


「それ自体は、たぶん危険じゃないと思うぞ。今は相手も君がどういう関係なのか注視している段階だろう。プライバシー云々を気にするなら厳しいが、実害はないと思う。梢さんとこの社員だと判れば、手も出せなくなるだろうしな」


 岩田さんが一息ついて続ける。


「それに、実力行使されたとしても、その名刺とブレスレットがあれば、多少のことは防げるだろう」


 そんな効果があるの? このブレスレットに?


「悪意があるものに対しての隠蔽効果、遮蔽効果が名刺にはあるし、ブレスレットには悪さをしようとすると対抗措置が発動するらしい…。実際にどんな効果かは知らんが」


 岩田さんは、俺のブレスレットを指してニヤリと笑う。


「これに…そんな効果が? それってどんな仕組みなんですか?」


「化学や物理じゃねーよ。異世界テクノロジー! 魔法だよ魔法! 異世界すげーよな」

 サブリナが目を欄欄と光らせ、楽しそうに言う。


「今頃モリッチの部屋も監視されてるだろうなー、きっと。ウヒヒ」


「それも含めて一度来てサブリナにチェックしてほしい」


 岩田さんが言うと、彼女は「めんどくせーなー」と言いながら、ウーンと考え込む。


「いっそのこと、しばらくうちに遊びに来ればいいよ! あっくんもいるよ!」


 詩織さんがテーブルの上を片付けながら提案すると、「それ、いいかもなー」とサブリナが身を乗り出す。


「じゃあ、ちょと待ってて! すぐ用意するから!」と言い残し、部屋を飛び出していった。


「やったー!」と喜ぶ詩織さん。


 そんな二人を唖然と見つめる岩田さんと僕。


 来るの? 今から? マジか。



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