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18 誓いの言葉

 放課後、二人でジュエリーショップにきた。

 指輪を受け取るためだ。

 お店に入りコウ君が受け取りに来たことを伝えると担当した店員さんが来る。

 依頼されたものはできています。少しお待ちをって、もう一度奥に戻った。

 そして白いケースを載せたトレイを持ってくる。

 ケースの中身は指輪だってわかっている。でもドキドキが止まらない。

 私たちの前でケースを明けて二つ並んだ指輪を見せてくれる。

 綺麗。本当に光り輝いてる。

 指輪に見とれているとお姉さんがサイズをご確認されますかと聞いてくる。

 はいと返事をしたコウ君が、ケースから小さい方の指輪を取り出して「先輩」と声をかけて、左の手のひらを上に向けて私の前に差し出す。

 私は黙ったまま、コウ君の左手に自分の左手を載せる。私の手を取ったコウ君は指輪を薬指に差し入れる。

 先週、左手の薬指でサイズを測ったから、薬指につけることはわかっていた。それでも今コウ君につけてもらうと結婚式のように気持ちなる。そして、


「先輩、これからもずっと一緒ですよ」と言われる。


 涙がこぼれる。

 うれしいはずなのに笑顔もできない。ただただ涙が流れる。

 私だってずっと一緒だよって伝えたいけどしゃくり上げて言葉も出せない。

 コウ君はサイズはどうですかと聞いてくるけど、話せないから頷くだけ。

 ティッシュを取り出して涙を拭いていると、コウ君は自分で指輪をはめていい感じですと店員さんに伝える。

 店員さんは、それではお包みしますねと言うけど、コウ君はこのままつけてくからいいですって断る。

 そしてコウ君が清算して、ケースの入った手提げバッグを受け取ってお店を出る。

 そのあとはいつものフードコートに向かった。


「コウ君、高いのにありがとう」

「いいんです。それより泣くくらい喜んでもらえて、俺もうれしいです」

「もう」


 恥ずかしくて右手を握って肩まで上げて叩くまねをする。


「喜んで貰えてますよね?」

「あたりまえじゃん」

「よかった」

「コウ君、私だってずっと一緒だからね」

「はい」


 それからたくさん写真を撮った。

 指輪を付けた手を顔の近くに持ってきたもの。二人そろって指輪を付けているところ。

 指輪を一度外してケースに並べたりもした。




 コウ君と別れて家に着くとお母さんが夕飯の用意をしている。


「お母さん、見て」


 顔の横に左手を持ってきて手の甲が、薬指の指輪が見えるようにする。


「どうしたの?買ったの?」

「コウ君に貰った」

「貰ったって、薬指じゃない。それも左手の」

「結婚指輪だって」


 ペアリングだなんて言わない。


「結婚指輪だなんて」

「内側にダイヤもついてるの」

「ダイヤって、じゃぁ高いんでしょ?」

「うん」

「うんって」

「だってコウ君がずっと一緒だって言うから」

「……ほんと、彼ってすごいね」

「すごいよねー」


 って言いながら貰ったばかりの指輪を見つめる。


「あんたわかってるの?」

「何が?」

「その指輪の意味」

「知ってるよ。永遠の愛でしょ?」

「そうじゃなくって……」

「なに?」

「結婚とかプロポーズとか……」

「うん、わかってる」

「ほんとに?」

「うん」

「なら、お父さんが帰ってきたら報告しなさい」

「うん」


 しばらくして弟とお父さんが帰ってきて夕飯になる。その時に指輪を貰ったことを伝える。

 一番初めに声を出したのは弟だった。やっぱりコウ君はすごいって言う。

 うん、すごいよね。

 次にお父さんも、彼はすごいなって言う。

 もう、すごいのはわかってるって。

 最後にお母さんが、


「今日はなんの日。特別な日なの?」

「えっ、なに?」

「だって指輪を貰うって、何かの記念日とか意味があるんじゃないの?」

「なんだろ。何かあるのかな。えっ、どうしよう。わかんない」

「何か約束したとか」

「ぜんぜんそんなことないよ」


 何か意味があったのかな。どうしよう、貰った私がわかんないだなんて考えていると、


「やっぱ姉ちゃんだな。コウが知ったらがっかりするな」だって。


 まずいまずい、私がわからないって言ったら、がっかりするどころかあきれられちゃう。

 悩んでいる私に弟が追い打ちをかけてくる。


「せっかく指輪をもらったのに、喧嘩になって別れないといいな」って。


 息をのんだ。

 喧嘩になるのも嫌だけど、別れるのはもっと嫌。

 どうしよう。

 考えても理由に心当たりがない。

 付き合って一カ月で別れちゃうって……ん?もしかして一カ月の記念?でもそれなら先週のはず。それに先週お店に行った日でもない。

 いてもたってもいらなくて、夕飯の途中だけどコウ君に連絡をする。

 わからないままでズルズルしていてバレたら、取り返しのつかないことになるって思った。

 それにコウ君なら、本当のことを言っても怒らないような気もする。

 みんながいるテーブルから離れて階段に腰をかける。


「コウ君、今ちょっといい?」

「いいですけど」

「あのね、指輪のことなんだけどね」

「なんかありました?」

「何もないよ」

「じゃぁなんで?」

「あのね、よく考えたらね、なんで何もない日に指輪をくれたのかなって。誕生日とかでもないし」

「えっ」


 やっぱり?


「なに、何かあるの?」

「そんなのぜんぜんないです」

「ほんと?」

「はい。そんなこと考えませんでした」

「ほんとに?」

「はい」

「じゃぁなんで?」

「指輪はいつか贈りたいなって考えていたんですよ」

「うん」

「それで、文化祭で手を繋いだじゃないですか」

「うん」

「その時に思ったんですよ」

「なにを?」

「先輩の指に指輪をはめたいなって」


 あの時そんなことを考えていたんだ。


「そうなんだ」

「やっぱり何かのイベントとかサプライズがよかったですか?」

「そんなことないよ、十分びっくりしたし」

「それで、こんなことが聞きたかったんですか?」

「まぁ」

「すみません。なんの理由もなくて」

「いいよいいよ。ちょっと気になっただけだから」


 通話を終えてテーブルに戻ると、みんなは食べ終えていた。

 それでたった今コウ君から聞いた指輪が贈られた理由を伝える。と言うか、理由がなかったことを伝える。

 あっという間に解散になった。

 お母さんは洗い物。お父さんはお風呂。弟は二階に。

 もっと私に興味を持ってもいいと思うけど。





お読みいただいてありがとうございます



指輪の確認ですが、本来はサイズより刻印の確認が求められます。

どうしても指輪をはめさせたかったので端折りました。

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