表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

第一小節「部活、やめました」

スポットライトが当たり、みんなが私の姿に注目する。緊張とワクワクの混じった複雑な気持ちの中、演奏をやり切った時の達成感が私はとても大好きだった。みんなから拍手が沸き上がる。そして思う。私はやり切ったんだと。






お客さんが店の中へ入ってきた。

「いらっしゃいませ。こちらの席へどうぞ」

と笑顔で挨拶、案内をする。

挿絵(By みてみん)

「雪音ちゃんいつもありがとうね」

女性の常連客さんにお礼を言われる

「いえいえ。仕事ですから」

「そういえば、雪音ちゃんって今もサックスやってるんだっけ?」

「いえ、今はもう引退して家業の手伝いと学業に専念しています」

「そうなんだね。また聞きたかったのになぁ」

「そう言っていただけて嬉しいです。でももう演奏する機会はないと思います」

そう、私・味沢雪音は少し前まで吹奏楽部でサックスをやっていた。この話は4年前に遡ることになる。





私は中学の時の部活動紹介の吹部の演奏で楽器に憧れを持ち、その勢いで入部。親戚から使わなくなった比較的状態のいいアルトサックスをもらい、そのままサックスパートへ入った。ピアノも少しひけたし、音楽の知識はそこそこあったものの技術的な面はいまいちだった私は、先輩に手取り足取り教えてもらいながらなんとかそこそこの演奏が出来るようになり、中三の頃には同級生の中で二番目に実力のある奏者となり、ソロパートも何度か任されるようになった。そして中学吹部引退後、私は顧問から一番目に上手かった同級生と共に吹奏楽強豪校への推薦をもらったが、私は学業で公立高校に進学したいと推薦を断った。そして昨年、高校に入学した。私の入学した学校はそこそこ偏差値の高い学校だった。しかし吹奏楽部はそこまで活発に活動しておらず、もはや楽しめればそれでいいというようなお遊びクラブのような雰囲気だった。コンクールも、地区で最下位を争うレベルで、そんな雰囲気に嫌気のさした私は文化祭が終わったタイミングで退部届を提出し、吹奏楽部を退部。また学業のほかに、今まで部活が休みの日にしか手伝えなかった家業であるイタリアンレストランの手伝いをするために、サックスもやめた。今、私の使ってたアルトサックスは、自部屋のクローゼットの中に封印されている。


少し寂しい気もするが、私は今素敵なお客さんたちに囲まれてとても幸せだし、学校生活もそこまで悪くはない。学業の方もなんだかんだ上手くいっているし。だから、別に今更サックスを再開するつもりもない。ちなみに、私は楽器や音楽と完全に疎遠になったかというとそういう訳ではない。実は店の中にピアノがあるので、たまに客からの依頼で弾くことはあるし、店の中で流す曲の選別も実は私がやっている。流す曲には、店の雰囲気に合っているものの完全に私の趣味みたいなものもあるが、お客さんたちは気に入ってくれている。

オーダーの聞き取りを終え、母に注文を伝えたところで店のドアが開く。

「いらっしゃいませ」

私はさっきと同じように笑顔で挨拶をした。

「雪ちゃん久しぶり」

ん、誰だろう。あ、この子は、まさか

「え、瑞佳ちゃん」

「久しぶりだね」

中学時代、同じ吹部でトランペットをやっていた藤原瑞佳ちゃんだった。ちなみにこの子が吹部で一番上手な子で、推薦で吹奏楽強豪の高校へ入学した人であり、私の親友でもある。突然やってきて私はびっくりしたが、立ち話するのは客の迷惑になるし業務怠慢だと親に怒られると思ったので、とりあえず私はテンプレ通り座席へ案内した。

「卒業式以来かな」

「そうだね」

「どうして突然」

「あのさ、多分話長くなるんだけど」

「あ、じゃあさ、閉店まであと一時間ちょっとだから閉まるまで待ってくれるかな」

「うん、いいよ。あとこれ頼んで良い?」

「かしこまりました」

私がマニュアル通りの返事をすると

「へぇ、まだ高校生なのに社会人の立ち振る舞いがもう体に染みついてるんだね」

ニヤニヤしながら瑞佳はからかった。私はムッとして

「そういうこと言ってると出禁にするからね」

「ごめんごめん」

私の忠告に対し瑞佳は謝った。


 閉店後

「ごめんお待たせ」

私は詫びながらコーヒーの入ったカップを置き、瑞佳の目の前の席に座った。

「いいよ全然」

そう瑞佳は言ってくれた。

挿絵(By みてみん)


「で、話って」

コーヒーを飲みながら私が聞くと

「実は私、部活辞めたんだ」

と瑞佳は答えた。

こんにちは。同人サークル葉鍵伝承会の会長"宮島485"です

Pixivで公開していた二次創作作品に登場するオリジナルキャラクターの前日譚「Girls Band Evolution」の執筆継続を諸事情により断念しまして、こちらの執筆を開始することにいたしました。

Pixivで公開している二次創作を含めると七作目、オリジナルのみでは二作目の作品となります。

作家としてはまだまだな部分もあるかと思いますが、もし興味を持っていたたけたのであれば今後とも宜しくお願い致します。

また感想、アドバイス等頂けると幸いです。お手間でなければぜひお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ