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「フランソワーズ様……?」



名前を呼ぶと彼女は一瞬だけ泣きそうな顔をした。

しかしローガンの視線に気がついたのか、彼女は慌てて頭を下げる。



「……失礼いたします」



フランソワーズは背を向けて、足早に去って行ってしまった。

マグリットとローガンは首を傾げながら彼女を見送る。


フランソワーズが何を思ったのかわからないが、彼女のことが気になって仕方がない。

何かやらかしてしまったのかもしれないとハラハラしているマグリットだったが、ローガンの頭を撫でている手に気がついて丁寧にどかしていく。



「イザックさんに怒られますので……!」


「マグリットの気持ちも半年間で随分と変わったよね。イザックは気づいているのかな?」


「どういう意味ですか!」


「ははっ、そのままの意味だよ!」



ローガンはそう言いつつも嬉しそうだ。

イザックの婚約者になってから令嬢として成長したということだろうか。

ふと、彼に婚約者がいない理由が気になりマグリットは素直に聞いてみることにした。



「ローガンさんは婚約者を作らないのですか?」


「僕だって婚約者が欲しいよ? イザックと君を見ていると羨ましいと思うくらいだ」



マグリットはローガンにそう言われて、ほんのりと頬を染めた。



「でもさ……僕の数々の行動を理解して受け入れてくれる令嬢がいるとは思えないんだ」


「あー……」


「そこはさ、気を遣って否定するとこじゃないの?」



ローガンはマグリットから見てもかなり変わっているように見えた。

そんな彼に研究所の人たちは振り回されているが慣れた様子だが、それが貴族の令嬢となると話は変わってくる。

公爵家の当主で研究所の所長だ。


将来有望で普通なら婚約者が殺到しそうだが、それを上回る変わった性格。

端正な顔立ちはボサボサの髪と眼鏡で隠されてしまっている。

彼はダークブラウンの髪をガシガシと掻きながらため息を吐く。



「ほら、マグリットと僕ってタイプが似ているでしょう?」


「わたしとローガンさんですか?」


「イザックの力で作る食材に対する執念とか、夢中になるとそのことしか考えられなくなるところとかさ……世間知らずで図太いところとかも僕にそっくりじゃない? 素晴らしいよね」


「……もしかして褒めてます?」


「褒めてるに決まっているじゃないか」



ローガンの言葉に不満を露わにしたマグリットは唇を尖らせていた。


フランソワーズのことが気になりつつも、ローガンと共に研究所の中へ。

すると子どもたちが走り回り、はしゃいでいるのが見えた。



「この子たちはまだ魔法属性が見つかっていないんだよ」


「こんなにたくさん……!」


「これでも半分に減ったんだよ。いやぁ……本当に珍しい魔法がこの国には溢れているよ。今までどれだけの損失をしていたんだろう」



ローガンはそう言ってカチャリと眼鏡を動かした。

国にとってかなり有益な魔法もあるらしく、なかなか大きな損失だったらしい。

魔力コントロールを身につけたら家に返されるのだが、今まで虐げられてきた子が多く、家に帰りたがらないこともあるそうだ。



「ですが、みんな笑顔で幸せそうですね」


「そうだねぇ……それもイザックとマグリットのおかげだよ。半年前の一件が大きく動かしたんだ」


「役に立てたのならよかったです」



その場合は王家で保護して彼らを育てていくそうだ。

本人の話を聞き、彼らの意思を優先することをベルファイン国王は決めた。

あまりにもひどい場合はネファーシャル子爵家のように重い罰が与えられた。


彼らを魔力がないと虐げていた貴族たちにとっては珍しい魔法属性を持つ子どもを手放すため大損になる。

しっかりと罰を受けることになると言えるだろう。


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