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「お腹が空いて食べてみたんですが、ほんのりと甘いような気がするんですけど、石みたいに固いしパサパサだし……とても食べれなくて」


「オリバー、あんたって奴は……! どうしてわからないものをこんなに買ってるのよ!」



ミアの苛立った声に肩を跳ねさせたオリバーは、眉を寄せながら人差し指を合わせる。



「こ、これを売っていた子の身なりがボロボロで可哀想になってしまって……」



それを聞いたマグリットは眉を寄せる。

ガノングルフ辺境伯領ではイザックの手厚い支援で孤児院で暮らす子どもは幸せそう生活をしていた。

マグリットは孤児院にミアと作ったクッキーやマドレーヌを作って訪れたことがある。

子どもたちとはよく遊んでいるが身なりがボロボロな子どもは会ったことがない。


イザックは屋敷に引きこもっている間、やることもなかったため領地の発展に尽力していたそうだ。

そのおかげで領民の生活は潤って、他の領に比べるとかなり治安もいい。

そのなかでボロボロの服を着ているとなると、それだけで気になってしまう。


(後でイザック様に知らせましょう)


マグリットはそう思いつつ、茶色のカゴに入った謎の白い物体を空に掲げながら観察していた。

ミアもオリバーが齧ったように口に含むが、やはりなんとも言えない味がしたのだろう。

その表情は苦々しい。



「オリバー、その子に食べ方は聞いていないの?」


「それがどんなに話しかけても、何も喋ってくれなかったんです!」


「どうしてそんな子が売っているものを買おうと思ったのよ」


「可哀想だったからつい……」



ミアもオリバーのお人好しっぷりに呆れた表情だ。

けれどマグリットは丸められてコチコチの固い物体を手に取る。

まず匂いを嗅いでみるがほぼ無臭。

マグリットも口にしてみるとコチコチと固い外側。


ザラザラのなんとも言えない嫌な舌触り。

確かに甘みも感じるが食べ物だと思えないだろう。

だがマグリットにだけは、この塊があるものにしか見えない。


(まさか……まさかね、そんな都合がいい展開があるわけないじゃない)


マグリットはありえないと言い聞かせつつ、白い塊を眺めていた。

しかし我慢できずにあることを提案する。

マグリットは中身をすべて処分しようとするオリバーを引き止める。



「オリバー、ちょっと待って!」


「マグリット様……?」



マグリットに名前を呼ばれたオリバーは落ちこんでいるのか再び涙目になっている。



「オリバー、これを焼いて欲しいんだけどできるかしら?」


「え……? これを焼くんですか!?」



オリバーは火魔法、ミアは水魔法を使うことができる。

この力を使ってマグリットやイザックの生活を助けてくれていた。



「マグリット様、これを焼いても食べられないのではないでしょうか?」


「でもミア、どうせ捨てるならやってみてもいいでしょう?」


「まぁ、そうですね。わかりました」



マグリットはミアに皿と魚を焼く用の網を持ってくるように頼む。

どうしても焼き魚を綺麗に焼きたいと思い、合わせ焼き網をオリバーに作ってもらっていた。

これでどんな魚もこんがりと焼き目がついて挟んで焼くことができる。


前世の知識が役立って嬉しく思っていた。

ミアはマグリットの指示通りに皿と合わせ焼き網を持ってくる。


丸く白い塊を間に挟んで準備をする。

オリバーも火魔法を使い、手のひらの上でぼうぼうと火が燃えている。

マグリットは網を持ちながらソワソワしていた。


(もしこれが膨らんだりしたら……いえ、だめよマグリット! 期待してがっかりするなんて目に見えているじゃない。でも……っ)


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