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ローガンは『僕は子どもは苦手なんだけどなぁ……』と、言いつつも、新しい魔法が見つかるたびに大興奮。
やはり魔法属性がわからない場合、今までにないものが見つかる可能性が高いそうだ。
『今までこれが明かされなかったなんて国の損失だ……!』
先月、魔法研究所に行った際、ローガンはそう叫んでいた。
マグリットの一件があってからの半年間で、魔法が使えない子どもたちはすぐに魔法研究所にやってくるようになった。
これは半年前では考えられないことだった。
今までは家の恥だと隠すことが当たり前だったのだから。
マグリットも自分が表に出てきたことで救われる子どもたちがいることを喜んでいた。
マグリットが家族とは決別したパーティーの日。
アデルの結界を溶かした熱圧縮ビームは使用を禁止されているが、ローガンの前でやろうとしても意識的にできることはない。
マグリットの感情の昂りによって、奇跡的に出たものだろうと結論が出た。
つまり怒りの気持ちに反応して魔力が凝縮して放たれたらしい
『下手すると、なんでも貫けちゃうから気をつけてね……なんでも、ね?』
そう思うと自分の力が恐ろしい。
危険物扱いされていたが、メカニズムが解き明かされれば安全だ。
感情を昂らせなければいい。
先ほど醤油を失ったことによって悲しみのどん底だったのだがマグリット。
だが感情は大きく動きはしたものの、熱圧縮ビームが放たれることはなかった。
つまり反応するのは怒りの感情だけなのだろう。
(今回の件、ローガン様にしっかりと報告しなくちゃ……!)
まだまだ解明されていないことも多いが、普段から魔法をコントロールしているせいか、マグリットは今までと変わらない生活を送れている。
それ以降、新しい魔法も出ていないため、今回特に変化がなければ王都を訪れるのは二カ月に一度でいいかと提案するものの、あっさりと却下されてしまう。
それにベルファイン国王や王妃はマグリットたちに会いたいから一カ月に一回でいいと言っているのだそう。
「兄上はいつになったら落ち着くのだろうか」
「ベルファイン国王はイザック様が大好きですから。それにローガン様もイザック様が大好きですし、皆様に愛されてますね!」
「…………」
そんな話をしていると、顔色の悪いミアがフラフラとダイニングにやってくる。
いつも涼しい顔をしている彼女だが、今は荒く息を吐き出しながら肩を跳ねさせていた。
しかしミアと一緒にいたはずのオリバーの姿がない。
マグリットはそのことを不思議に思っていた。
「ミア……オリバーはどこにいるの?」
「マグリット様、イザック様、僭越ながら私から提案があります。あの馬鹿を今すぐ闇に葬り去りましょう。優秀な従者を王都から呼び出しますから」
ミアは乱れたダークブルーの髪を掻き上げながら怒りを滲ませる。
度々、ミアとオリバーは言い争いをすることはあったが、ここまでひどいのは初めてだった。
「ミア、落ち着け」
「イザック様、申し訳ございません。ですが私はオリバーを解雇することをおすすめいたします」
「「…………」」
ミアは無表情でそう言った。
額には青筋が浮かんでおり、かなり激怒している。
どうやらオリバーは顔を洗った後に、泣きながら街へと飛び出して行ってしまったらしい。
それほどまでに彼が自分を責めていると思うと可哀想になってしまう。
(帰ってきたらオリバーにもう大丈夫だって言わないと……)
それから数時間経ったのだが、まだオリバーは帰ってこない。
ミアも少しは気分が落ち着いたのか苛立ちつつも、オリバーを心配しているようだ。