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国王や王妃、ローガンと王都で暮らすマイケルやシシーなど、錚々たるメンバーがお祝いに来てくれたのだ。

そこで次々に渡される豪華な誕生日プレゼント。

煌びやかなドレス、宝石、花束や可愛らしい小物が渡された後、イザックが持ってきたニワトリ……庭山さんを見て会場の空気は凍る。


しかしマグリットだけは、イザックが持つニワトリを見て大喜びだった。

興奮しながらイザックから庭山さんを受け取るが、イザックの方がいいと言わんばかりにマグリットの腕をコツコツと突き続けていた。

マイケルとシシーは密閉できる保存容器や専門的な調理器具をプレゼントしてくれた。

国王たちも次からは料理器具や珍しい食材を持ってきてくれると言ってくれた。


誕生日を祝われたのはマグリットに転生してからは初めてだった。

ネファーシャル子爵家ではアデルの誕生日会だけは豪華絢爛に開かれていた。

見栄を張り続けていたネファーシャル子爵家は、その時だけ使用人を雇っていた。


マグリットも裏方に徹して、慌ただしく過ごしていたことを思い出す。

前日から大量の料理の仕込みで大忙しだった。

アデルの元侍女のレイも怒鳴りながら『こんなところ、絶対にやめてやる……!』と、エプロンを投げ捨てるレベルの忙しさだ。

パーティーが終わった後は、疲労でぐったりとして動けなかった。


そのためマグリットは自分の誕生日をすっかりと忘れており、マイケルとシシーの孫でガノングルフ辺境伯邸の新しい侍女、ミアとの何気ない会話から思い出したくらいだ。



「マグリット様の誕生日はいつなのですか?」


「えっと……いつだったかしら」


「えっ……?」


「あっ、たしか二週間後くらいだった気がするんだけど……」



マグリットは誕生日を祝われたことがないことや、自分の誕生日を忘れかけていたことを話す。

ミアはマグリットの育ってきた環境について知ってはいたが、ここまでひどいとは知らなかったようだ。


ワナワナと震えて「今年は絶対に誕生日パーティーをしましょう!」手を握って訴えかけていた。

あまりの勢いにマグリットは何度も頷いた。


そう話した後のミアの行動は早かった。

すぐにイザックに報告して、人を集めるように手配してくれたらしい。

初めて祝ってもらった誕生日パーティーは嬉しくて気恥ずかしくて、不思議な気分だった。


誕生日プレゼントは何がいいか聞かれたマグリットは、素直にニワトリと答えたという流れだ。


イザックも辺境に来てからは誕生日パーティーを開いていなかったそうだ。

いつもマイケルとシシーにささやかに祝ってもらっていたらしい。


庭山さんにつつかれながら、マグリットはイザックを見上げた。



「今度はイザック様のお誕生日もお祝いしましょうね」


「……!」


「イザックさんは何か欲しいものがありますか?」



イザックは大きく目を見開いた後に、じっとマグリットを見つめている。

マグリットが首を傾げてイザックを見つめ返すと、フッと視線を逸らしてしまう。

何故かほんのりと頬が赤くなっているのは気のせいだろうか。



「イザックさん、どうかしましたか?」


「…………考えておく」



名前を呼ぶとイザックはポツリとそっけなく答えた。

彼が照れていることにも気がつかないままマグリットは首を捻る。


(イザックさんの欲しいものって何かしら)


自分が一番欲しいものはもらえて嬉しかったため、イザックにもそうしてあげたいと思った。

マグリットがニワトリ小屋から出ようとすると庭山さんは不満そうに声を上げる。

マグリットが卵を大切に持ちながら、ニワトリ小屋の鍵を閉めようとした時だった。



「──マグリット様」



慌てた様子でこちらにやってきたミアの顔は真っ青だ。

何かと思い彼女に駆け寄っていくと、肩を揺らしたミアは相当急いでいたのだろう。

激しく咳き込んでしまう。

マグリットがミアの背を擦りながら落ち着くまで待っていた。

呼吸が落ち着いた頃に、何があったかと問いかけると……。



「マグリット様、ショウユッ、ショウユが……っ!」


「……ッ、ミア! 醤油に何かあったの!?」




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