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「え……?」



マグリットの前には以前のようにドレスアップしているネファーシャル子爵たちの姿があった。


その中で一際目を惹くのはアデルだ。

いつもよりもずっとずっと豪華に着飾っているではないか。

それはマグリットが今まで見たことがない華やかなドレスだ。

胸元や耳に光る大ぶりな宝石と自信に満ち溢れた表情を見てマグリットは驚いていた。

そしてあることが頭を過ぎる。


(まさかだとは思うけど……借金をしていたのはアデルお姉様が身につける宝石やドレスを買うため!?)


もしそうだとしたら驚きを通り越して呆れてしまう。

アデルは艶やかなブルーのドレスを纏い、一歩一歩こちらに向かってくる。

そしてマグリットに見せつけるようにカーテシーを披露するとハニーゴールドの髪が絹糸のようにさらりと流れた。

艶やかな髪や宝石、華やかなドレスがライトに照らされて光り輝いている。



「お会いするのは二度目ですわね。わたくしの旦那様」


「……ッ!?」



アデルは今日、マグリットの隣にいるのがイザックだとわかっているようだ。

マグリットのことは初めから眼中にないらしい。

アデルはマグリットをいないものとしてイザックだけを見つめている。


(アデルお姉様は今更、一体何をするつもりなの?)


にっこりと微笑んでいるアデルの真意はまったく読み取れない。

その後ろにいるネファーシャル子爵も自信満々に笑っている。

アデルの素晴らしい立ち振る舞いはマグリットが三週間だけ学んだ拙いマナーではまったく敵わないものだとわかる。

両親は貴族の令嬢としてアデルの魅力を最大限に引き出すようにしたのだろう。



「以前は取り乱してしまって申し訳ございませんでした。お見苦しいところを……」



アデルは上目遣いでイザックに触れようと手を伸ばす。

しかしイザックはアデルが触れられないように体を引いたためアデルは彼に触れることなく腕が落ちていく。

顔が歪んだのは一瞬だけでアデルはすぐに笑顔を作り、表情を取り繕った。



「……どういうつもりだ」


「あら、わたくしはあなた様の妻になるのですから」



アデルの言葉を聞いたイザックはマグリットの肩を掴んで庇うように抱きしめた。

しかしアデルは気にする様子はない。



「見た目だけではございません。わたくしの力を見てくださいませ……!」



そう言ってアデルは手を伸ばす。

薄水色の透き通った大きな壁がアデルを守るように現れる。

アデルはイザックの前で結界魔法を自慢げに披露している。

周囲からはアデルの珍しい結界魔法を見て「おー」と声が漏れたがイザックは何の反応も示さない。



「イザック様と結婚するのはわたくしのはずだったのです。あなた様に相応しいのはその子じゃないと気づいてくださいませ!」



アデルの言葉にネファーシャル子爵と夫人は大きく頷いて同意している。

アデルたちはマグリットよりも自分の方がイザックに相応しいとアピールして彼と結婚するつもりなのだろうか。

何人かの令息が美しいアデルに釘付けになっているようだが、イザックはアデルのアピールを物ともしない。まったく興味がないようだ。


イザックの反応は予想と違ったのだろう。

ネファーシャル子爵たちやアデルにも焦りが滲む。

子爵はアデルを庇うように前に出て声を張り上げた。



「──本来ならばアデルが嫁ぐはずだったんですっ!マグリットがでしゃばり、我々を謀り勝手なことをしたせいでこのような事態になってしまった」


「……!?」


「そうなのですわ。この子は狡賢くアデルを騙して出し抜いたのです……!美しいアデルを妬んでこのようなことをっ」



ネファーシャル子爵夫人の目には涙が滲む。

あまりの出鱈目にマグリットは言葉が出なかった。

アデルがオーウェンと駆け落ちしたことをなかったことにして、マグリットがネファーシャル子爵やアデルを騙して出し抜いて、イザックの婚約者の立場を奪い取ったと言っているのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] きたきた、来ました! ザマァの時がやっと! 極悪非道のこの腐れ両親と外道姉貴に特大の鉄槌を!
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