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あまりにも自信満々に言われると大丈夫なのかと思えてくる。

強張っていた体から少しずつ力が抜けていく。



「……ありがとうございます、イザックさん。少しだけ落ち着きました」


「よかった。行こう」



マグリットの心臓はイザックに触れる度にドクドクと音が鳴っている。


会場に一歩足を踏み入れると豪華絢爛な色とりどりのドレスが目に入った。

マグリットは背筋を伸ばして笑顔を作る。

イザックのエスコートを受けながら会場を進んで行った。


四方八方から降り注ぐ視線に緊張してしまうが、イザックの先ほどの言葉を思い出して心を落ち着かせようとしていた。

優しい笑みを浮かべながらマグリットを見るイザックと目が合った。


(大丈夫……!イザックさんが隣にいてくれる)


イザックとマグリットは貴族たちの注目を一身に集めているとも知らずにベルファイン国王たちの方へと向かう。

ベルファイン国王はイザックとマグリットを見て、目に涙を浮かべながら大喜びしている。

マグリットはベルファイン国王や王妃と抱き合い挨拶をしながらイザックと共に隣に立つ。

会場はザワザワと騒がしいが、その視線はイザックとマグリットに集中している。


(何かしら……どこかおかしいところが?やっぱり立ち振る舞いに問題があるのかもしれないわ)


そんなマグリットの心配をよそにベルファイン国王の下には次々と挨拶に訪れる貴族たちの姿があった。

話は何故かイザックとマグリットのことが中心だった。

マグリットはあまり深く考えることなくイザックの婚約者になると言ってしまったが彼が王族であることを実感する。


イザックも優しい笑顔を浮かべながらマグリットを紹介していた。

今のところパーティーを楽しむ余裕もない。


(笑顔、笑顔……!)


表情筋がピキピキと痛むが、挨拶をする列の中にネファーシャル子爵の姿はないことに気付く。

今回のパーティーには参加しないのかもしれない、そう思っていた。


一段落してからイザックと休憩をしつつ、会場を見て回る。

貴族たちが話しかけてくるが、すべてマグリットの代わりにイザックが対応している。

少しよそよそしい人もいる気もするが、イザックも普通に話している。

それがすべてマグリットのおかげだとはまったく気づくことなく相槌を打ちながら、昨日王妃と王太后とお茶を飲んでいた時に言われたことを思い出していた。

『マグリットと出会う前のイザックと今のイザックは別人よ』

『こんなに優しい雰囲気になるなんて驚いたわ。あなたを信頼しているのね』

マグリットと暮らし始めてからイザックの態度や声色がかなり柔らかくなったと聞いた。

そして何より驚きなのはイザックが笑うようになったことだそうだ。


マグリットはイザックがどれほど恐れられていたかは貴族社会に出たことないので知らないが、よくよく考えると侍女や侍従たちが逃げ出してしまうほどなのだから相当だったのだろう。

彼らはベルファイン国王により罰を受けたそうだ。

ベルファイン国王はイザックのこととなると容赦がない。


(今のところ誰もイザックさんのことを怖がっていないようだけど……)


無知ゆえに元から怖がっていないマグリットとは違って皆は以前のイザックをどう思っていたのだろうか。

マグリットがイザックを見上げると、彼の笑みが深くなる。



「どうした?マグリット」



甘いマスクにこの笑顔だ。

マグリットが見惚れていると、周囲にいたご夫人たちや令嬢たちから甲高い声が聞こえた。

どうやらイザックのことについてのようだ。


(イザックさんのどこが怖いのかしら。こんなにモテモテなのに……)


社交界に出ていたら、さぞモテたことだろう。

そんな時、会場の一部が静まり返りマグリットがいる場所までの道がひらけていく。

そして人影が徐々にこちらに向かっていることに気づく。


険しい表情をしたイザックがマグリットの肩を掴んで引き寄せた。


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