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「……!」



イザックは頑張っているマグリットの邪魔にならないようにと今まで黙っていたそうだ。



イザックの険しい表情を見て、何かよくないことが起こったのだと悟る。



「ネファーシャル子爵家はそこら中から借金をしているらしい」


「借金……どうしてですか?」


「理由はわからないが、あまりいい予感はしない」



辺境の地で自然に囲まれながらのびのびと暮らしているとネファーシャル子爵家のことなどすっかり忘れてしまう。

マグリットがイザックと正式に婚約したことで、アデルが嫁ぐことが不可能になり、マグリットはもうネファーシャル子爵家の人間ではなくなったことも大きいのかもしれない。


魔法研究所で会った三人は以前の面影はなくボロボロだった。

ネファーシャル子爵が無理して借金までして何をしようとしているのかはわからない。


(大金を使ってどうしようというの?)


どう頑張ったとしてもネファーシャル子爵家にチャンスはなさそうだ。



「今回のパーティーで何かあるかもしれない。マグリットも気をつけてくれ」



マグリットはわずかに目を見開いた。

貴族が集まるパーティーなのでネファーシャル子爵たちとも顔を合わせることになる。

再びネファーシャル子爵たちと対峙してマグリットは何を思うだろうか。



「なるべくでいい。一人にならないようにしてくれ」


「……はい!」



イザックの言葉にマグリットは大きく頷いた。


(イザックさんの言う通り、警戒した方がよさそうね)


休み休みとはいえ二日間も馬車に乗りっぱなしだと体が痛くなる。

けれどイザックと共に色々な町に寄って気ままに店に赴いて、見たことのない食材や料理に触れられるのは勉強になるし楽しくて仕方ない。


そんなマグリットに感化されたのか、最近ではイザックも積極的に外を見て回るようになった。

シシーとマイケルから聞いたが、イザックはガノングルフ辺境伯邸から滅多に出ていなかったそうだ。

そんな彼が今では領民と積極的に交流して外に出ている。

幼い頃からイザックを知る二人にとって、こんなに嬉しいことはないと語った。

イザックはネファーシャル子爵邸にずっといたマグリットと同じで知らないことも多いそうだ。



「マグリットといると新しい発見ばかりで飽きないな」


「わたしもイザックさんといるととても楽しいです!」


「そうか……なら、よかった」



イザックの優しい笑みを見て、また心臓が音を立てる。

思えばイザックはいつもマグリットを温かく見守ってくれた。


途中の街で国王や王妃へのお土産を買い込んだマグリットたちは王城に向かう。

イザックと共に馬車を降りてすぐにマグリットは魔法研究所へ向かった。

ローガンはマグリットの魔力がコントロールできていることを褒めてくれた。

今は魔力の流れも綺麗で安定しているそうだ。

膨大な魔力を今では違和感なくしまうことができている。

この溜め込んだ力を解放する時にどれほど大きな力になるのか楽しみだとローガンが言っていた。


(空がカラッと晴れるだけなような気がするけど……)


マグリットの魔法について興奮気味に早口で語るローガンの首根っこを掴んでイザックはどこかに連れて行ってしまう。


その後は王妃や王太后とお茶をしながらお喋りしたり、皆で集まって食事をしたりと忙しくも楽しい時間を過ごした。

王城のシェフが作った豪華な料理は外食気分で最高である。

何より皆、何かを食べるたびに美味しいと感動するマグリットの反応が珍しいのか様々なものを食べさせてくれた。


次の日、マグリットはパーティーの準備を朝早くからはじめていた。

三人の侍女に囲まれ、眠たい目を擦りながら起き上がる。

温めたお風呂に浸かりながらオイルマッサージにパック、髪にも香油をつけて艶々になったマグリットは鏡で自分の姿を二度見してしまった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 気をつけるのはなるべくで良いということで、それほどの心配はなさそうなのかなとも思ったけれど、本人がそれほど気をつけなくても良いようにするということなのかもしれませんね。
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