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しかしいつものように動こうとしても常に汗が浮かんで動きも鈍くなってしまう。

意識は魔力を抑えることに向いてしまう。

今までのように動くことができずにモヤモヤしているとイザックが声を掛けてくれた。



「マグリット、魔力を抑えるには体力を使う。あまり無理はするな」


「イザックさん……!」


「俺にも覚えがある。このままだと倒れてしまうぞ?この生活に慣れるまで暫くはシシーとマイケルに任せた方がいい」



シシーとマイケルにも協力してもらい一週間は魔力のコントロールをしつつ生活をすることに集中していた。

マグリットはイザックに色々なことを教わりながら力をつけていく。


そして生活が落ち着いたタイミングで、ガノングルフ辺境伯邸にメル侯爵夫人が訪ねてきた。



「ごきげんよう、マグリット様。よろしくお願いしますわ」


「ご、ごきげんよう!メル侯爵夫人、よろしくお願いしますっ」


「お姉様から詳しく話は聞いているわ。そんなに緊張しなくても大丈夫よ。ゆっくりやっていきましょう」



メル侯爵夫人は王妃の妹らしく今から三週間後に開催されるパーティーまでに少しでも立ち振る舞いやマナーを身につけるためにマグリットのマナー講師をしてくれることになっていた。


メル侯爵夫人はおっとりとしていてとても優しく、マグリットにもわかりやすく社交会でのマナーを教えてくれた。

マグリットは前世の知識を持っていても貴族のマナーはさっぱりだ。


無意識に嵐を抑えようとしたことで魔力が発覚し、貴族として生きていくことになったマグリットは、今回のパーティーにイザックの婚約者として参加する。

これからはマナーも必須になってくるだろう。


(まさかこんなことになるなんて思わなかったわ)


まさか貴族の令嬢として十六才で社交界デビューすることになるとは夢にも思わなかったが、ネファーシャル子爵たちの元を離れて縁が切れることになったのは清々しい気分だ。


(もうあの人たちと関わることはないのよね)


それもすべてマグリットのために動いてくれたイザックのおかげだろう。

マグリットは思い描いていたような理想の未来に進んでいるような気がしていた。


休憩の間、マグリットはシシーと共に果実酢作りにハマっていた。

穀物酢を作るために奮闘していたマグリットは麦を原料に酒を作るところからはじめていた。

酢の元になる『種酢』作りである。


酢は世界最古の調味料と言われているため、この世界にもなくはないのだが、折角ならばご飯に合わせて美味しいすし酢も作りたい。

ガノングルフ辺境伯領には新鮮な魚もある。

となれば寿司を食べられるチャンスではないだろうか。

アルコール発酵も酢酸発酵もイザックに手伝ってもらい、今は熟成期間である。


イザックに出来上がりが一カ月後になりますと言うと「また一ヶ月かかるのか!?」と驚かれてしまう。

果実酒も同じくらいかかるため、マグリットは熟成するのを楽しみにしている。

マグリットはまだ年齢的には飲んではいけないが、イザックは酒が好きだそうだ。


それから肝心の米に近い食材が見つからないので、色々な人に声をかけて情報を集めている最中である。


そんなある日のこと、マグリットは豆で納豆を作っていた。

いつものように様子を見ていたイザックは糸が引いている豆をかき混ぜるのを見た瞬間、顔面蒼白でマグリットを引き止めた。

これを食べるのだけはやめた方がいいと大反対されてしまう。



「マグリット、お腹を壊すぞ!」


「壊しません!納豆は健康にいい素晴らしい食べ物ですよ?」


「いや……よく見ろ。この豆は間違いなく腐っている!」


「大丈夫ですから」


「いいや、腐っている!」



納豆の匂いも独特だからだろう。

結局、シシーとマイケルの三人に全力で止められてしまい、マグリットはさすがに目の前で食べるわけにもいかず…………外で捨てるフリをして隠れて食べたのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 稲わら無しでも納豆菌ってできるのかな?
[気になる点]  ちゃんと「納豆と言う食べ物を知らないのに食べられないと決めつけないで下さい」って説明しないと一生堂々と食べる事が出来なくなるんだからどういった物なのか説明諦めないで続ければ良いのに。…
[一言] 見た目匂いのインパクトと栄養作りやすさ最強の納豆きたわね 主人公納豆菌で味噌醤油全滅させて泣きそう
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