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63.ネファーシャル子爵side10


そう命令してもマグリットは大きく首を横に振っている。

こうしてマグリットに反発されることは今までなかったため頭に血が上っていく。

無理矢理にでもマグリットを連れて行くしかないと思った時だった。



「……やめろ」



オリーブベージュの髪の男が前に出る。

苛立っていることもあり彼を思いきり睨みつけた。



「なんだね、君は……!」


「お前たちにマグリットは渡さない。彼女に触れるな」


「なんだと!?」



マグリットを守るように立つ男に掴みかかろうとするとアデルが前に出て遮られてしまう。



「お父様、わたくしこの方と結婚するわ!」


「ア、アデル!?一体何を言っているんだ……!」


「だってとてもかっこいいんですもの!わたくしにピッタリじゃない?」



妻も驚きから「何言ってるの!?」と、アデルの肩を掴む。

こちらを睨みつけてくるよくわからない男に惚れ込んでしまったようだ。

しかしオーウェンの時のようにこの男にアデルが奪われて駆け落ちされてしまえば作戦が台無しになってしまう。

アデルの耳元で「このままの生活が続いていいのか!?」というと正気を取り戻したようだ。



「わかってるわよ。わたくしがガノングルフ辺境伯の元へ嫁げばいいんでしょう?」


「……!」


「いい加減なことを言わないでくれ。マグリット、行こう」


「えっ……はい!」



男がマグリットの背を押して歩き出す。



「気分が悪い。ローガン、あとは任せた」


「了解」



周囲の草木が枯れていることも気づかないまま、マグリットを連れて男は去っていく。

追いかけようとしたがリダ公爵が立ち塞がる。

リダ公爵の名前を呼び偉そうに命令する男の立場がわからない。



「ネファーシャル子爵にも一応、知らせておくけどマグリット嬢は素晴らしい魔法を使えることが判明したんだ」


「は…………?」


「マグリット嬢はガノングルフ辺境伯と同等の膨大な魔力量とアデル嬢よりも大きな力を持っている」


「……な、なんだと」


「わたくしよりすごいですって!?アハハッ、そんなの絶対にありえないわ!」



リダ公爵が何を言っているのか理解することができない。

マグリットに大きな魔法の力があるなんて信じられなかった。

アデルも妻もそう思っているのかリダ公爵の言うことを信じていないようだ。



「マグリットに大きな力だと!?馬鹿馬鹿しい……ありえませんな!」


「この僕が証言しているのですよ?ありえないのはあなただ。ネファーシャル子爵」


「……っ!?」


「アデル嬢に新しい力があるというのも嘘なんだろう?」



黒縁メガネを人差し指で上げたリダ公爵は目を細めてこちらを見ている。

まるですべてを見透かされているようだ。

確かにアデルに新しい結界魔法などない。

しかしこのまま引き下がるわけにはいかなかった。



「それから本来は魔法の力がわからない令息令嬢はこの魔法研究所で検査を受けることとなっている。そのルールを破ったことは、もう国王陛下やガノングルフ辺境伯にも知られているよ?」


「っ、それは……だ、だが皆もそうしているではありませんか!」


「そのように隠蔽する貴族が多い故にこうした規則を設けていたんだ。そのルールを破っておきながら今更、マグリット嬢を……まぁ、いいか」



リダ公爵はそう言ってため息を吐いた。

そしてあることを告げる。



「マグリット嬢はガノングルフ辺境伯に愛されている。もうすぐ婚約が発表されるでしょう」


「なっ……!?」


「まだ結婚しないのはガノングルフ辺境伯がマグリット嬢の心情を汲んでいるからだ。それにガノングルフ辺境伯はマグリット嬢しか受け入れるつもりはない。アデル嬢を嫁がせられるわけがない。何をしても無駄だよ」



信じられない言葉がリダ公爵から告げられたことにより妻も呆然としている。

マグリットがガノングルフ辺境伯に大切にされている……アデルではなく、身代わりに嫁がせたマグリットがだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] それにガノングルフ辺境伯はマグリット嬢しか受け入れるつもりはない。アデル嬢を嫁げるわけがなガノングルフ辺境伯からの視点での言い方ですので、嫁を貰う、になるかと。この場合娶るかしら?嫁ぐだとマ…
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