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06

もしマグリットが望まれなければどうなるのか……考えたくもない。

そんな時、タイミングよくマグリットのお腹が鳴った。

マグリットはお腹が空くのと同時に、いつも日本食の味を思い出す。


(腐敗魔法……腐敗、腐敗って、つまりは?)


マグリットが腐敗魔法について考えているとレイの顔はどんどんと険しくなっていき、泣きそうになっている。



「アデルお嬢様っ、どうして私を裏切ったのですか!」


「……」


「あんな男についていっても幸せになれるはずがないと何度も言ったのに……もう少しでこんな生活から抜け出せると思ったのになんでよっ!クソッ」



心の声が漏れ出ている侍女のレイとは屋敷で働く同僚のようなものだったが、ご覧の通り向上心が強く計算高い性格をしている。

いつもマグリットのことを見下していて、このように世話をすることも彼女にとっては屈辱だろう。

レイは没落した男爵家の令嬢で魔法も少しなら使える。


まったく魔法を使えないマグリットを下に見るのも無理はない。

それにレイにはずっと馬鹿にされていたのに今更、お嬢様扱いされても困ってしまう。


いつの間にかマグリットのオレンジブラウンの髪は整えられてオイルでサラサラになっていく。

日焼けした肌やガサガサの指先は一週間でどうにもならない。

少しでもマシになるようにとクリームを塗り込みながらレイの話に耳を傾ける。



「私はアンタについていくつもりはないからね!」


「別に構わないけど、あなたはこれからどうするの?」


「新しい就職先を探すに決まってんでしょう!?アデルお嬢様に賭けていたのに、もううんざり。どんなところだってここよりマシよ」


「そうかもね」


「こんなところさっさと出て行ってやる……!」



彼女はネファーシャル子爵たち同様にアデルを妹のように可愛がっていたしアデルに期待していた。

アデルの侍女として嫁ぎ先についていけば自分の地位が保証されるからだろう。

それにここの労働環境はお世辞にもいいとはいえない。

レイはアデルがいなくなりネファーシャル子爵家から出ていくつもりのようだ。



「あんたもこの家から出られてある意味、幸せなんじゃない?」



レイの怒鳴り声を聞きながらマグリットは「まぁね」と頷いた。



「私が言うのもなんだけど旦那様や奥様、アデルお嬢様にあんな扱いされてよく耐えられるわね。あなたおかしいんじゃない?私ならとっくに逃げ出すのに……っ」



レイは今まで溜めていた不満を吐き散らしている。

マグリットは黙ってその話を聞いていた。

どうやらアデルが勝手な行動を取ったことでネファーシャル子爵家には波乱が起きそうだ。


マグリットは慣れないコルセットに内臓が飛び出してしまいそうになっていた。

パニエに重たいドレスを着用すると、あまりの動きづらさに吐き気を覚える。

これでニコニコ笑ってパーティーに出たり、食事をするなんてマグリットには考えられなかった。


(苦しい……やっぱり貴族の令嬢なんてなりたくないわ)


マグリットはネファーシャル子爵たちに呼ばれて溜息を吐きながら馬車に向かった。

この一週間の間、ネファーシャル子爵たちとこんな風に関わり会話をしたのははじめてかもしれない。



「粗相だけはしないで、ただ黙っているだけでいいの!」


「お前が魔力なしの役立たずだとバレてしまえば我々はっ!それだけは隠し通せよ!もしくは腐敗魔法で死んだことにしろ!いいな?」


「わたくし達に迷惑をかけることだけはするんじゃないよ!お前は今日からネファーシャル子爵家とは一切関係ないのよ!わかった!?わかったといいなさい」


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