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マグリットのように魔法の力が発現せずに虐げられている子どもはまだいるかもしれない。

もし魔力なしと言われて苦しんでいる子どもがいるならマグリットも救いたい。

マグリットがイザックと共に表舞台に出ることで、それを知らしめることができる。

マグリットの答えは決まっていた。



「わたしでよければ協力します!」


「……ありがとう。感謝する。それにマグリットの力は雨に苦しむ地域にとって喉から手が出るほどに欲しい力だ」


「わたしの力が……?」


「是非、ベルファイン王国の貴族として困っている民たちを助けて欲しい」



ベルファイン王国で魔法を使えるのは貴族だけ。

そしてマグリットもその仲間入りを果たした。

ベルファイン国王の言う通り、助けられる人がいるならば力を使いたいと思う。


マグリットはベルファイン国王の伸ばされた手を取った。

固く握手をしているだけなのだがマグリットに触れているベルファイン国王の手はイザックによって弾き飛ばされてしまう。

国王にも容赦ないイザックに驚くばかりだが、ベルファイン国王はデレデレと顔を綻ばせて嬉しそうである。


そこから三人で話し合い、少しずつ社交の場に慣らして学んでいくことになった。

この年齢からまさか令嬢として振る舞うことになるとは思わずに驚いていた。

しかしパーティーに出るのだとしても、ネファーシャル子爵家で使用人として育ったマグリットには難しく思えた。

アデルは幼い頃からずっとマナーを習っていた。

一カ月でマグリットがどこまでできるかはわからない。


(まだ魔力コントロールもできないのに……大丈夫かしら)


今すぐマグリットが他の令嬢と同じように振る舞うのは不可能だろう。



「ですがパーティーに出てイザックさんの迷惑になってしまうかもと思うと不安です」



マグリットが何か粗相をすることでイザックに恥をかかせるわけにはいかないと思っていた。



「そんなことは気にしなくていい。俺もほとんどパーティーには出たことはないからマグリットと同じだ」



イザックはマグリットを安心させようとしているのだと思った。

それは食べ方や立ち振る舞いを見ていてもわかることだ。

王族として育ったイザックの所作は美しくて無駄がない。


するとベルファイン国王はガノングルフ辺境伯領の隣にあるメル侯爵領、メル侯爵夫人にマグリットのマナーや立ち居振る舞いを指導してもらうことを提案してくれた。

これからマグリットは使用人から少しずつ貴族として過ごすように慣らしていくことになる。



「それからマグリット、話は逸れるのだが……」


「なんでしょうか?」


「君ほどイザックに相応しい人間はいないっ!是非、前向きにイザックとのケッコ……んぐっ!?」



ベルファイン国王の口をすぐさまイザックが塞ぐ。


(ケッコ……?イザックさんと何か作れということかしら)


マグリットは首を傾げていると、ベルファイン国王はマグリットに何かを伝えようと必死にもがいている。

イザックの手から抜け出したベルファイン国王は叫ぶように言った。



「──マグリット、イザックとの未来を前向きに考えてくれないだろうか!?」


「え……?」


「私はマグリットとイザックが結ばれたらとても嬉しいと思っているんだ!是非、結婚を……っ!」


「──兄上ッ!」



マグリットは改めてイザックを見た。

ベルファイン国王はマグリットをイザックが受け入れる前提になっているが、イザックは本来、嫁ぐはずだったアデルではなくマグリットがガノングルフ辺境伯邸に居座ることになってよかったのだろうか。



「イザック様はわたしのことをどう思っているのですか?」


「……ッ!?」



マグリットの問いかけにイザックは大きく目を見開いている。

「いや、それは……」と、顔を真っ赤にして吃るイザックを見てマグリットは表情を強張らせた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 兄貴が言っちゃうか まだ、妹たちと再会もしてないのに
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