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イザックは給仕から運ばれてくる皿をマグリットの元に次々と渡してくれる。

魔力切れで意識を失っている間に何も食べていなかった反動だろうか。

マグリットは次々に並べられる料理をペロリと平らげていく。

ご機嫌で頬を押さえているとイザックが呟くように言った。



「こんなに食事が美味しいと感じるのはマグリットと一緒に食べるようになってからだ」


「そうなのですか?」


「ああ……ありがとう」



イザックはそう言ってワイングラスを傾けている。

横顔は綺麗で鼻筋がスラッと通っており、まるで絵画のようだ。

マグリットはゴクリと食べ物を飲み込んだ。


優雅な夕食をお腹いっぱい食べた後は、再び魔法研究所に戻り魔力コントロールの訓練に入る。

イザックがマグリットに夜通しで付き合ってくれたおかげでなんとか魔力を抑え続けることに成功する。


次の日はどんよりとした曇り空だった。

ローガンの『次は魔力を抑えながら日常生活を送ってみよう』との提案を受けてマグリットは外に出ることにした。

マグリットが力を抑えなければ、この辺一体の空は晴れてしまうそうだ。

マグリットは魔力を抑えながら激しく動いてみたがそれだけでかなり負担になる。

ちなみにローガンの黒縁の眼鏡は特殊らしく魔力の流れがわかるそうだ。



「マグリット、少し魔力が漏れ出ているよ」


「は、はい!すみません」


「マグリットならできる。がんばれ」


「ありがとうございます!イザックさん」



雲の隙間から日が差し込むたびにローガンからマグリットに注意が入る。

マグリットが気を緩めたタイミングで空が晴れはじめてしまうのだ。

自分の魔法の力が本当に天候に影響を及ぼしているのだと実感して驚いていた。


その日の晩、クタクタになったマグリットとイザックが食事をしていると「来ちゃった」と、お茶目に言いながらラフな格好をしたベルファイン国王が会いにきた。

初めは誰だかわからずに首を傾げていたマグリットだったが、イザックの「……何の用ですか。兄上」と言ったことで飛び上がる。

挨拶をしつつ深々と頭を下げていると、今は正式な場ではないから構わないと言われて一緒に食事をすることとなった。


何故かはわからないが、ベルファイン国王はマグリットに対してとても友好的だった。

終始不機嫌なイザックとは違い、マグリットとベルファイン国王は打ち解けるのがとても早かった。

ローガンからマグリットの夢の話を聞いたらしくイザックと共に作った味噌と醤油の話で盛り上がる。



「ははっ!まさかイザックにそんなことを頼むとは驚いたな」


「ですがイザックさんにしか、わたしの夢は叶えられないんですよ」


「そうか、そうか……っ!これからもイザックを頼むぞ、マグリット」


「兄上……!」



瞳を潤ませて何度も何度も頷いているベルファイン国王は満足そうである。

イザックが王都に来るのは本当に珍しいことらしく、大きな式典の時以外は滅多に訪れることはない。

手紙を送り続けてもイザックからの返事は少なく寂しい思いをしていたそうだ。

こうしてイザックの元気な姿を見られることは何よりも嬉しいのだと語った。


(ベルファイン国王は本当にイザックさんのことが好きなのね。それに優しいところがイザックさんにそっくり)


ベルファイン国王とイザックの雰囲気はまったく違うが、笑った顔や仕草が似ていると思った。



「マグリット、一カ月後に開かれるパーティーにイザックと共に招待したいのだがどうだろうか?」


「ベルファイン国王陛下、大変嬉しい誘いですがわたしは……」


「イザックからマグリットの育った環境や境遇を聞いた。これは私の責任でもある。すまない……マグリット」


「いえ、そんな!」


「今のままでは対策不足だと強く思った。これ以上、魔力の有無に振り回されて不幸になる子どもたちを増やしたくない。今回のパーティーで貴族たちに改めてそのことを知って欲しいんだ。マグリット、協力してくれないか?」


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― 新着の感想 ―
[一言] >来ちゃった! って、女子高生かいなw
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