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マグリットが今の状況について話していくとイザックは自分の経験談を元に丁寧に説明してくれた。


魔力が爆発しないようにするためにはどう力を抜けばうまく魔力を外に流せるのかなど、魔力コントロールのコツを丁寧に教えてくれる。

そのおかげかマグリットは魔力コントロールの感覚を掴めたような気がした。


イザックのおかげで前向きになれたマグリットはその後も懸命に魔力を抑えながら練習を繰り返していた。

ローガンにそろそろ休憩した方がいいと言われた時にはもう夜になっていた。


訓練はここまでだと言われて、マグリットはホッと息を吐き出す。

汗を拭っていると部屋の外で待っていたイザックに夕食に誘われて部屋を出た。


長い廊下を抜けるとそこには豪華な装飾が施された壁と天井。

どうやら魔法研究所とベルファイン城は長い廊下で繋がっているらしい。

まるで映画の中に入り込んだようだと思った。

マグリットが辺りをキョロキョロと見回している横で、イザックは慣れた様子で真紅のカーペットの上を歩いていく。


大きな扉の前に着くと男性が深々とお辞儀をしてから扉が開く。

絵画でしか見たことがない長いテーブルにシャンデリア。

美しい花や食器よりも豪華な装飾品の数々に目を奪われる。


イザックは椅子が引かれるのを待ってから慣れた様子で席に着く。

マグリットも慌ててイザックの真似をしながら椅子に腰掛けた。


イザックと一緒にいると忘れてしまいそうになるが、彼は王弟なのだ。

マグリットになる前も縁がなかった高級な料理たちはどう食べていいのかサッパリである。


(えっと……カトラリーは外側から使っていくのよね?)


貴族としてのマナーも教育も受けていないため、食事に手が出しづらい。

しかしお腹は空腹だと必死に訴えかけながら鳴っていた。

目の前に置かれていく料理の数々は見た目も美しくどんな味がするのか食べてみたい。

マグリットはソワソワしているとイザックから声を掛かる。



「マグリット、今日はマナーなど気にせず好きに食べていい」


「ですが……」


「気になるなら人払いをしよう」



そう言ったイザックが片手を上げると給仕が一礼して去っていく。

マグリットのことをいつも気遣ってくれるイザックに感謝していた。

ゴクリと喉を鳴らした後に美しく並べられている食器に手を伸ばす。



「いただきますっ!」



遠慮よりも好奇心の方が勝ったマグリットはフォークとナイフを持って前菜に手をつける。

上品なソースと野菜の甘味が引き立っていてとても美味しい。

イザックに美味しさを視線でアピールしていると、どんどんと食べるように言われてスープやパンと次々と手を伸ばす。


(なんていう贅沢……!幸せすぎるわ)


いつもの手作りの素朴で飽きない料理も美味しいが、たまに食べる高級な料理の数々は最高の刺激になる。


(このソースは魚にとても合うのね!どんな作り方か知りたい……!お肉も柔らかいし焼き具合も最高っ!このサラダに入っている歯応えのいい野菜……種をもらってガノングルフ辺境伯邸の畑で育てられないかしら。塩や昆布で漬物を作ったらきっと美味しいわ)


少し前からガノングルフ辺境伯邸にある畑では、生ごみを利用してイザックに肥料を作るのを手伝ってもらっていた。

マグリットはイザックの腐敗魔法の力に感謝しっぱなしである。



「イザックさん、とても美味しいですね!これもこの料理も最高に美味しいんですよ!」


「そうか、よかったな」



マグリットを見つめながら微笑んでいるイザックを、ベルファイン国王が扉の隙間から嬉し涙を流しながらこちらを見ているとは知らずに、マグリットは美味しいご飯を食べる幸せを噛み締めていた。


魔力コントロールは気が逸れて自分が何かに熱中しているといいと教えてもらったがその通りだと思った。

こうしていると抑え込んでいる魔力のことを忘れられる。


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