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ローガンが眼前に迫ってきたことでマグリットが背を仰け反らせた。

しかしイザックがすぐに間に入ってローガンを止める。

そしてそのまますごい勢いで吹っ飛んでいくローガンにマグリットは口元を押さえた。


ドンッという重たい音と共にひっくり返ったローガンは「いたたた……」と言って、頭を押さえてからすぐに起き上がる。

そして何事もなかったかのように立ち上がり、ヘラヘラと笑いながら歩いてくるではないか。



「イザック、嫉妬はよくないよ!」


「……ローガン、お前」


「まさかあのイザックがこんな風になるなんて驚きだよねぇ。いくらマグリットのことが大好…──ブフォッ!」



今度はローガンの口元を塞ぐようにイザックが片手で鷲掴みにして体を持ち上げているではないか。

他の研究員も慌てる中、ローガンは「むごご、むごむむごー」と言いつつも身振り手振りで何かを訴えかけている。



「あ、あの……イザック様。ローガン様が」


「マグリット、こいつは危険だ。近づかない方がいい」


「でも苦しそうですし……」



イザックは今までにないほどに不機嫌になっている。

しかしマグリットが心配そうにローガンを見ていると、ゆっくりと手を離していく。



「ローガン様、大丈夫ですか?」


「……ん?ああ、心配ありがとう。いつものことだから気にしなくていいよ」


「マグリット、ローガンと必要以上に話すな」


「は、はい!」


「ひどいなぁ、イザックと僕の仲じゃないか!」



あれだけの衝撃を受けておきながら、平然としているローガンはタフだ。

イザックもローガンには容赦がない。それだけ仲がいいということだろうか。

ローガンは斜めになった黒縁眼鏡を掛け直して説明を再開する。



「とりあえずはこの部屋で過ごしてマグリットの魔力が戻れば問題はないよ」


「……ということは、ガノングルフ辺境伯邸に帰れるんですよね!?」


「「……!」」



マグリットの言葉にローガンとイザックは目を合わせた。

他の研究員へも、あれだけ恐れられているイザックと親しげに接しているマグリットが只者ではないことは十分伝わっていた。

そしてマグリットがガノングルフ辺境伯領に帰りたいと言ったことにイザックが密かに喜んでいるとも知らずにマグリットはあることで頭がいっぱいだった。


(味噌、醤油、味噌、醤油、味噌、醤油、味噌、醤油……ッ!)


マグリットは早くガノングルフ辺境伯領に帰りたくて仕方ない。

何故なら味噌と醤油が待っているからだ。

しかしローガンから返ってきたのは予想外の返事だった。



「うーん、君を今ガノングルフ辺境伯領に帰すわけにはいかないよ」


「ど、どうしてですか!?」


「魔力コントロールを習得しないとまた同じことの繰り返しになってしまうからね」


「魔力コントロール、ですか?」


「まずは自分に魔力がない、魔法が使えないという思い込みもやめなければならないね」


「……!」


「君の生い立ちはイザックから簡単に説明を受けている。それと……ネファーシャル子爵は国が定めたルールを守らなかったこともね」



今までにこやかに笑っていたローガンの雰囲気が厳しいものに変わる。

もしマグリットが早い段階で研究所に来ていれば使用人ではなく貴族の令嬢としての別の未来があったのかもしれないと語った。



「今まで辛かったね」


「……はい」



ローガンがマグリットの頭を撫でようとした時だった。


──パシッ


イザックがローガンの腕を弾くとマグリットを守るように手を伸ばす。

それにはローガンが大きく目を見開いている。



「わぁ……!イザックがここまでなるなんて君は本当にいろんな意味で逸材だよ」



ローガンは手をパチパチと叩いて喜んでいるが、何故マグリットが逸材と言われているのか理由はまったくわからない。



「マグリットはここに留まって魔力のコントロール方法を学んだ方がいい。今、この状態でガノングルフ辺境伯領に戻るのは危険なんだよ」


「……ですが」



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