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「はい。ですが一年後、イザックさんと一緒に食べるのが楽しみですね!」


「…………!」



イザックはマグリットの言葉に驚いているようだ。

何か変なことを言ってしまったか考えるものの特に思いつくことはない。

とりあえずは醤油と味噌が時間と共にうまく出来上がるのを祈るのみだ。

温度計と感覚を頼りに作っていかなければならないので失敗もあるかもしれないが、一応は予備に二つ製作して置く場所も変えている。


マグリットに転生してから覚えているうちにと書き込んだレシピ。

そのおかげで調味料の作り方を十年以上経っても思い出すことができている。

覚えている限り書き込んで、いつかのためにと似た食材を探していた甲斐があったというものだ。


(これからもイザック様に手伝ってもらって色々な日本食を作ってみせるわ!)


それから一週間が経とうとしていた。

マグリットとシシーが晴れた空を見上げながら洗濯ものを干していた時だった。



「今日もよく晴れて洗濯物が乾きそうですね!」


「そうですねぇ……ですが本来、ずっとこの時期は嵐がやってきてひどい雨になるのですが」



マグリットは空を見上げた。

青々とした空は今日も雲一つなく晴れ渡っている。

嵐がきていないどころかマグリットがここに来てから雨が降ったのは数日の夜中だけだ。


(確かに地面が濡れていたことはあったけど……雨が降っていたことなんて)


マグリットが考えているとシシーはシーツを広げながら手際よく物干し竿にかけていく。



「ですが、漁をするための船が出せますから街の人たちも助かるでしょうね。この時期は嵐で船が出せずにいつも大変そうでしたから」


「そうなのですか?」


「この時期は何日も嵐で屋敷から出られなかったりするんですけどね。食糧を溜め込むんですよ」



ガノングルフ辺境伯邸は海が見える丘に建っているため、海を見下ろすと船が何隻も漁に出ている。

その時、マグリットの視界がぐにゃりと歪む。

目眩が収まると、どっしりと疲れが出たような気がしてマグリットは短く息を吐き出した。


(ふぅ……なんだか最近、体が重たいわ)


マグリットの額には汗がじんわりと滲む。

この症状は昔からで特に気にしてはいないが、今回は特にひどいような気がしていた。

時期はバラバラで、いつくるかはわからないが疲れやすくなったり体が重たくて動かし辛いことがある。

眠ればよくなるのだが、その状態が何日も続くこともあれば、すぐに終わることもある。


やや体がだるいだけなので問題ないのだが今日はかなり疲れが襲ってくる。

シシーがそんなマグリットに気がついたのか優しく声をかけてくれた。



「マグリット様、なんだか顔色が悪いですわ。少し休んでください」


「でも……」


「あとは私がやっておきますから」


「シシーさん、ありがとうございます」


「いえいえ、ゆっくり休んでくださいね」



マグリットは迷ったがシシーに洗濯を任せて屋敷の中へと足を踏み入れた。

味噌や醤油作りがひと段落したことで気が抜けてしまったのかもしれない。

シシーやマイケル、イザックにもあとはかき混ぜて待つだけだと伝えていた。

皆、出来上がりを楽しみにしてくれている。


(今日も醤油をかき混ぜて味噌の様子をチェックしないと……でも、いつもより体が動かない。なんでだろう)


マグリットは自室に戻ろうとするが、床下の食糧庫に置いてある醤油の容器が気になり扉を開けて下へと降りる。

ゆらゆらとかき回しているとドッと襲われる疲労感。


(風邪かしら?昼食を作るまで少し休ませてもらいましょう……)


そう思い、マグリットはダイニングのテーブルにうつ伏せになるようにして体を休ませるとすぐに瞼が落ちていく。



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