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マグリットが微笑むとイザックの口から出たのは信じられない言葉だった。



「手紙はネファーシャル子爵からだったんだ」


「お父様からですか?」

 

「ああ、アデルを嫁がせるからマグリットを返して欲しいと書かれていた。正しい形に戻したいと自分たちの希望が書かれていた」


「まさか……そんな」



マグリットは耳を疑った。

まさか今になってネファーシャル子爵から連絡がくるとは思わなかったからだ。

話を聞いてみるとマグリットの代わりにアデルを嫁がせたいとの内容だったそうだ。

そのことからわかることはただ一つ。

アデルは現実を知り、オーウェンと別れてネファーシャル子爵家に帰ってきたということなのだろう。


(やっぱりアデルお姉様の駆け落ちはうまくいかなかったのね)


ガノングルフ辺境伯領に王都や貴族たちの情報はなかなか入ってこない。

特定の貴族の情報となれば尚更だ。


(ネファーシャル子爵家に何があったのかしら。ましてや元に戻したいだなんて……)


今までまったく連絡がなかったのに、ここにきてのネファーシャル子爵家からの手紙。

マグリットの心臓はドキドキと音を立てていた。

ネファーシャル子爵は、アデルをガノングルフ辺境伯に嫁がせようとしている。

そうなればまたマグリットはネファーシャル子爵家に戻らなければならないのだろうか。


(またあの家に戻るなんて考えたくないわ)


マグリットは無意識に唇を噛んだ。

もしここを離れることになってしまったら……そう考えるだけでゾッとする。

マグリットは絶対にネファーシャル子爵家に帰りたくないとそう思ってしまう。



「この件は改めて兄上にも連絡するつもりでいる」


「……!」


「それからマグリットを魔法研究所に向かわせるための準備をしている。ネファーシャル子爵家にもそろそろこのことを追求しなければと思っていたんだ」



イザックが兄上というのはベルファイン国王のことを指すのだろう。

いつも親しく接しているため、忘れがちだがイザックは王族でベルファイン国王の弟なのだ。


それに自ら使用人として雇ってくれと頼んでおいてなんだが、マグリットはアデルの身代わりにイザックの元に嫁いできたことを思い出す。

イザックはまだ書類を提出していないと言っていたので、まだマグリットとイザックは夫婦ではない。

つまりイザックが書類一枚提出していればマグリットはイザックと夫婦になっていた。


(イザックさんと夫婦だったら楽しそうなのに……)


そう思う反面で、マグリットはイザックに釣り合わないとも思っていた。

それをネファーシャル子爵は知って、このようなことを言ってきたのだろうか。


(そっか……わたしはまだイザックさんと夫婦ではないのよね。本当はアデルお姉様が嫁ぐ予定だったから)


だからこそネファーシャル子爵はマグリットとアデルを交換して元の形に戻そうとしている。


(アデルお姉様がイザック様と夫婦に……?)


そう考えるとマグリットの胸がチクリと痛む。

もし自分ではなくアデルがここに嫁いできたら、イザックとこうして暮らしていたのだろうか。


(できるならわたしはここにいたい。ネファーシャル子爵家に戻るなんて絶対に嫌よ)


以前は朝から晩まで当たり前のようにこなしていた仕事も過労で倒れなかったのが奇跡だ。

さらに文句を言われながらだと思うと最悪の生活だった。

今が幸せすぎて居心地がいいから尚更、そう思うのかもしれない。



「安心しろ、マグリット」



イザックの言葉にマグリットは顔を上げる。

彼は荷物を一旦地面に置くと体を固くしていたマグリットを優しく抱きしめてくれた。


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