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04

だが勝手に駆け落ちしてしまうほどに愚かな行動を取るなどマグリットも思わなかったが。


アデルを間近で見てきたマグリットだが何一つ自分でしたことがないアデルがどう生きていくのか気になるところだ。

とにかく美しさにこだわりを持っていたネファーシャル子爵夫人は怪我をするからという理由でアデルに刺繍針すら触れさせなかった。


子爵家は決して裕福ではない。それは屋敷の中を見れば明らかだ。

それは両親がアデルのことにかかりきりで領地をおざなりにしていることが原因の一つだろう。


自分たちのことは少しならば自分でできる子爵や子爵夫人だったがアデルだけは別だった。

ずっと侍女のレイがつきっきりで世話をしており、お姫様のように育てられた。

二人にとってアデルは希望だからだ。


(……アデルお姉様、どうやって生活するのかしら)


アデルに結婚の話がきたのは驚きだったが、相手は王子ではないことは確かだろう。


(もし王子だったらお祭り騒ぎになるはずだもの)


アデルの結婚相手は一体、誰なのか……ネファーシャル子爵達の反応を見る限り格上の令息であることには間違いない。

あれだけ甘やかしてきたアデルを説得してまで子爵たちが動いたとなると相当、重要な約束だったのではないだろうか。

社交界に出ていないマグリットが結婚相手の名前を聞いたところでわかるはずもないが。


とりあえずは食事をしてくれないと片付けることもできない。

マグリットは取り乱す二人を観察しながら壁の端で待機していた。

数十分経っただろうか。

アデルはオーウェンに誘拐されたということにして捜索することにしたようだ。

しかしアデルは自分から出て行っており置き手紙は子爵の手に握られている。

そんな嘘をつけばベーイズリー男爵家に報復を受けそうな気もするが……とマグリットは考えていた。


朝早く起きて働き通しのマグリットはうとうとと眠気に抗っていた。

ふと視線を感じて顔を上げると、なぜかネファーシャル子爵たちに見つめられていることに気づく。

気のせいかと思い、マグリットは後ろを振り向くが当たり前ではあるが背後には壁しかない。

何か嫌な予感を感じながらも、ゆっくりとネファーシャル子爵たちに視線を戻す。



「仕方ない、我々にはもうこの方法しかないんだ!」


「もしアデルが見つからなかったら……それしかないのね」



ネファーシャル子爵の言葉に頷いた夫人を見て、マグリットは無意識に首を横に振る。



「──マグリットをアデルの身代わりに嫁がせるぞ!」



マグリットはその言葉に大きく目を見開いた。


(わっ、わたしがアデルお姉様の代わりに嫁ぐですって!?)


反論する間もなくマグリットを抜いて話はどんどんと進んでいく。

この二人がマグリットの話に耳を傾けることはないだろう。

マグリットは溜息を吐いた。


そしてマグリットが身代わりに嫁ぐことが決まってから一週間が経とうとしていた。

アデルたちの捜索が行われたが彼女が見つかることはなかった。

ベーイズリー男爵家にも説明を求めたが我々は関与していない、責任はないと主張しているそうだ。

つまりベーイズリー男爵もアデルたちの行先も知らない。

ネファーシャル子爵家から光が失われて、子爵たちの食欲はなくなり痩せ細っていく。


マグリットはというとアデルが見つからなかった際に身代わりの花嫁になるため一週間、嫁ぐ準備を行っていた。

しかしずっと働いてガサガサな指先に手入れのしていない肌は貴族の令嬢とは程遠い。

アデルを一目見たことがある令息ならばすぐにバレてしまいそうではあるが意外にもそうはならないらしい。


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