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「眩しいのはマグリットの方ではないか?」


「~~ッ!?」



そう言ったイザックは柔らかい笑みを浮かべた。

まるで恋愛映画のワンシーンを見ているような気分になった。

エメラルドグリーンの美しい瞳がマグリットの驚いた表情を映し出している。

キラキラとした美しさが凄まじい威力でマグリットを襲う。

イザックがイケメンだということは十分に理解した。


(イザックさんはイザックさんよ!いつも通り何も変わらないわ!)


外見が変化したとしてもイザックの中身が変わったわけではない。

マグリットは自らを落ち着かせるように深呼吸した後、イザックを見上げて力強く頷いた。



「大丈夫か?」


「はい、大丈夫です!イザックさん、行きましょう」


「……ああ」



イザックの表情が再び曇る。

マグリットはイザックの手を握り返すと屋敷の外へ出る。

もちろん今から街に戻るためだ。

シシーとマイケルも付き添うと言って少し離れた後をついてくる。

いつも二人で街まで続く道を歩いていく。

木々が生い茂っている道を抜けていくが、陽の光が葉の隙間から見えて綺麗だと思いながら足を動かしていた。

今日も空はよく晴れている。



「イザックさんと何度もこの道を歩きましたね」


「ああ、そうだな」


「今度からは堂々と街に行きましょう!」


「そう、なるといいんだが……」


「なりますよ、絶対に」



マグリットと繋いでいるイザックの手からは緊張が伝わってくる。

そしてもうすぐ街だというところで、騒がしい人の話し声が聞こえてきた。

街の人たちが集まっていると気づいた瞬間にイザックの足が止まってしまう。

きっと彼は心ない声に傷ついてきたのだろう。



「イザックさん……大丈夫ですよ」



マグリットがそう言ったとしてもイザックの足は重い。

シシーとマイケルも心配そうに見つめている。


(シシーさんもマイケルさんも大丈夫だって言っていたし、わたしも大丈夫だと思うわ)


マグリットが一歩踏み出そうとした瞬間、街の人たちがマグリットたちに気がついたようだ。



「マグリットちゃん!」


「シシーさんやマイケルさんもいるぞっ」


「本当だ!」



ずっとガノングルフ辺境伯邸で暮らしいていたシシーやマイケルとは顔見知りのようだ。

そして視線はイザックへと移っていく。



「も、もしかしてあなたがガノングルフ辺境伯じゃないのかい?」



魚屋のおばちゃんがそう言うと、あんなにも騒がしかった人たちがピタリと話すのをやめる。

マグリットが顔を伏せてしまったイザックの前に立つ。



「はい。わたしも先ほどガノングルフ辺境伯に会うことができました」


「そうなのかい?」


「この方が領主様か……?」


「おーい、領主様がいるぞっ!」



次第にザワザワと騒ぎが大きくなり、イザックに無数の視線が集まっている。



「ガノングルフ辺境伯は皆様が怖がらないように今まで姿を現さなかったようです。なので……!」



マグリットが説明しようとするとイザックがマグリットの肩に手を置いた。



「今まで顔も出さずにすまなかった」


「……!」


「マグリットの言う通り、皆を怖がらせたくなかったんだ」



イザックの言葉にシンと周囲が静まり返る。

彼が手のひらをグッと握ったのがわかった。

マグリットが緊張感漂うこの空気をどうにかしなければと口を開こうとした時だった。



「──領主様、本当にありがとうございますっ」



その言葉をきっかけに周囲にいる人たちは口々にイザックにお礼を言っていく。



「……!?」


「アタシたちがこんなに快適に暮らせるのは全部ガノングルフ辺境伯のおかげです!」


「いつか直接お礼を言えたらって思っていたんですよ……!まさかこんな綺麗な顔をしていたとは驚きだなぁ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 活気があり、優しさがある町の領主が悪政を敷いてるわけ無いわけですな!
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