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興奮していたマグリットは自分が何を言っているか気にしている余裕もなかった。 

イザックはマグリットの衝撃的な発言に口をあんぐりと開きっぱなしである。



「本来ならば長い時間を掛けて作らなければならないのですが今まで忙しかったり、時間がなくて作れなかったのですがイザックさんの力を使えばもしかしたら、もしかしたらわたしが長年追い求めていた美味しい調味料を作ることができるのではないかと思ったんですっ!是非ともわたしにその素晴らしい魔法の力を貸してくださいませんか!?」


「……あ、あぁ」



早口で今までの経緯を語るマグリットの勢いにイザックの後ろにいたシシーやマイケルも引き気味である。

マグリットがワクワクする気持ちを抑えて、その場で小さく足踏みしているとイザックはフッと笑った後に腰を屈めて小さく震えている。



「くくっ、まさか俺の魔法を調味料に使おうと思う奴が現れるとはな」



イザックはくつくつと喉を鳴らして笑っているようだ。



「その調味料を作ることがわたしの夢なんです!」



マグリットは期待を込めた瞳でイザックを見つめながら返事を待っていた。



「もちろんマグリットに協力しよう」


「ありがとうございます!イザックさんっ」



マグリットはまず何から始めようかと手を擦り合わせる。



「そのための材料を今すぐに買いに行かないと!雑貨屋さんに寄って大きな瓶も買いたいんです」


「……!」



イザックの表情が曇ったことを不思議に思っていたマグリットだったが、先ほどガノングルフ辺境伯の名前が出た際に逃げるようにして屋敷に帰ってきたことを思い出す。

マグリットの表情で察したのかイザックは説明するように口を開いた。



「俺は領民にも恐れられているはずだ。マグリットもここにいると知られて嫌な思いをしてしまうかもしれない」


「イザック様、そんなことありませんよ」


「そうですよ、坊ちゃん!皆様はいつも……」


「シシー、マイケル。いいんだ、もう諦めている」


「……坊ちゃん」


「皆様は是非、イザック様のお顔を見てお話しをしたいとおっしゃっていますから」



シシーとマイケルはイザックの考えを勘違いだと必死に訴えかけている。

マグリットは先ほどの領民たちを思い出していた。


(店主も奥さんもイザック様に必死に何かを伝えようとしていたような気がするわ)


マグリットもシシーやマイケルと同じ気持ちだった。

彼らは罵倒したりガノングルフ辺境伯を悪く言うために声を掛けたのではない気がした。



「あの……イザックさん、わたしもシシーさんとマイケルさんと同じように思います」


「……マグリット?」


「なんだか皆さん、イザックさんとお話ししたいように感じました」



マグリットの言葉にイザックは考えるような素振りを見せた。

シシーとマイケルの表情が明るくなる。



「だが領民たちは魔法を使えない。俺は貴族たちにもずっと恐れられてきたんだ。彼らは……」



イザックは領民たちを怯えさせないように彼らの気持ちを考えて表に出ないようにしているのだろうか。



「ですがわたしも魔法は使えません。でもイザックさんが怖くないことを知っています」


「……!」


「一度だけ話してみませんか?きっと何かが変わるような気がするんです」



マグリットは鼻息荒くイザックに訴えかける。



「もし何かあったらわたしが慰めますからっ!」


「……!」



イザックのエメラルドグリーンの瞳が大きく見開かれる。

マグリットも散々、アデルの残りカスと言われていたが領民たちはちゃんとマグリットを名前で呼んでくれていたし、マグリットを一人の人間としてみてくれた。

それが心の支えになっていたことも事実だ。


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