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【01/15 書籍①巻発売】姉の身代わりで嫁いだ残りカス令嬢ですが、幸せすぎる腐敗生活を送ります【10/17 コミカライズ】  作者: やきいもほくほく
味噌編 一章

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マグリットに視線が集まり、明らかに固くなった雰囲気と街の人たちの険しい表情に戸惑うばかりだ。



「どうか、したのですか?」


「見ない顔だと思ったら……そういうことだったのか!」


「ガノングルフ辺境伯にはもう会ったのか!?」


「いいえ。今は出かけているそうで、まだ会っていませんけど……」


「そうか!なら、マグリットちゃんに話しておきたいことがあるんだ」


「どうしても伝えたいと皆で思っていてね……!それはっ」



店の奥さんがそう言った時だった。

背後から腕を思いきり引かれてマグリットの足がもつれてしまう。

イザックに支えられたことで倒れずには済んだものの、状況が把握できずに彼を見上げていた。

マグリットは驚く暇もなくイザックに腕を強く引かれて歩き出す。

咄嗟に買い物カゴを掴んで、大声で「ありがとうございました!またゆっくり~」と挨拶をして必死に足を動かしていた。



「ちょっ……イザックさん、急にどうしたんですか!?」


「…………」



いつもと様子が違うイザックは来た道をぐんぐんと進んでいく。

屋敷までもう少しというところで、やっとイザックの足が止まる。



「何かあったんですか?」


「…………」



イザックはマグリットの方を見て振り向いた。

長い前髪で表情は見えないが、なんだか追い詰められているように見える。



「マグリット……すまない」


「イザックさん?」


「実は俺はっ……」



イザックが何を言うのかマグリットが言葉を待っていた時だった。



「──イザック様、イザック様ッ!どこにいるのですか」


「国王陛下の弟であるイザック様になにかあったら我々はっ」



遠くからイザックを探す男女の声が聞こえた。


(国王陛下の弟であるイザック様!?一体、どういうこと)


マグリットが呆然としているとイザックは悔しそうに唇を噛む。

その間にもどんどんとこちらに声が近づいてくる。



「イザック、さん……?」


「マグリット、聞いてくれ!俺は……っ」


「──イザック様、ここにいらしたのですか!?」


「ああ、よかった!」



イザックの言葉は遮られてしまう。

彼が何を言いかけたのかわからないまま、年老いた男女がイザックを見てホッと息を吐き出したのが見えた。

白髪の女性は嬉しそうに涙を浮かべているではないか。



「シシー、マイケル……どうしてここに?王都に帰ったはずではないのか?」


「新しい使用人が皆、帰ってきていたと国王陛下に聞いて驚きましたわ!私たちには安心して引退してくれと言って、一カ月もどうやって生活されていたのですか!」


「本当に心配したのですよ……っ」


「わかったから落ち着いてくれ」



二人がイザックのことを心から心配しているのがわかる。

マグリットがわかったのは女性はシシー、男性はマイケルという名前のようだということだ



「イザック様……これは一体どういうことですか?こちらのお嬢さんは?」


「こちらはネファーシャル子爵家から……」


「ネファーシャル子爵家!?まさか一ヶ月前に嫁いでこられたアデル様でしょうか」


「聞いていた噂とはだいぶ違うようですが」



イザックの言葉を遮ったシシーとマイケルがマグリットを見て怪訝そうな視線を送っている。

今、マグリットは街娘の格好をしている。

社交界の華として名前を馳せるアデルとは違うどころか、貴族の令嬢にはとても見えないだろう。

マグリットは自分がここに来た経緯を説明しようと口を開く。



「わたしはアデルではありません」


「な、なんですと!?」


「アデル様ではないのですか!?坊ちゃん……まさか」


「シシー、変に勘潜るのはやめてくれ」



そう言うとシシーはつまらなそうに唇を尖らせている。



「マグリットが一カ月の間、俺のために働いてくれたんだ」


「まさか屋敷がこんなに綺麗になったのも?」


「ああ、マグリットがすべてやってくれた」


「イザック様、どういうことなのかキチンと説明してください!」



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