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次の日、ローガンは具合が悪いと一日休んで体力が回復。

王都に帰るかと思いきや、ラフの魔法が気になって仕方ないようだ。



「ヤダヤダヤダーッ! ラフの魔法が何かわかるまで絶対に帰らないから!」


「……ローガン、いい加減にしろ」


「イザックは僕のあの姿を見て、また乗り物に乗せようというのか!?」


「…………」


「一生、乗らないからな!」



迎えの馬車が来ても頑なに帰ろうとしないローガン。

しかしそれを見越したかのように、もう一台の馬車から降りてくる研究員たち。

ローガンはあっという間に複数人の研究員に囲まれてしまい、行きと同じように布で全身を固められて縛られてしまう。

「ひとでなし~! 離せっ、離せぇー!」

ローガンの抵抗虚しく、すごいスピードで連れていかれてしまった。



「イザック、マグリット、また遊びにくるからねー! ラフのことで何かわかったら教えてね。それから今度くる時は干し餅を持ってきて、オカキを作って! 僕、オカキ気に入っちゃったよ。それから…………」



馬車が遠のいているのに、ローガンは最後まで喋り続けている。

騒がしいローガンがいなくなり、屋敷は一気に静まり返ったような気がした。


この日からマグリットは島民の通訳として大忙しだった。

ガノングルフ辺境伯領の農家の人たちを連れて、島民たちに作物の育て方を伝える。

島民たちは領民に餅の食べ方を教えた。


だがネチョネチョした食感はパサッとしたパンが主食の人たちには合わないため、そこはマグリットの出番だと、干し餅を細かく切って、油で揚げることでおかきを提案した。

形を薄くしたり、小さな四角にしたりすれば、色々な食感が楽しめる。

調味料で味も変えられるので万能だ。


カリカリのおかきにして販売したところ、ガノングルフ辺境伯領で大ブームが巻き起こっている。

市場で島民たちが座るとその後ろに大行列ができるほどだった。


おかきブームは商人たちから広がり、貴族たちの間でも流行り始めているそうだ。

おしゃれなグラスに色付けしたおかきを入れて食べるらしい。

この時のマグリットは豪華絢爛なパーティーでおかきを見ることになるとは思わなかったのだった。


ガノングルフ辺境伯領はこのことをきっかけにさらに栄えることとなる。


島とガノングルフ辺境伯領にある港はイザックが用意した船が停まっており、船が行き来する定期便が出ている。

そこで島民たちと領民たちは交流していた。


そしてすぐにラフの魔法についても進展があった。

マグリットはラフの心を傷つけないように、慎重に話を聞いていく。



『ラフ、あなたは魔法が使えるのよ』


『オレ……魔法、つかえない』


『でもね、ラフの体には魔力が流れているの。だから使い方を学ばなければいけないの』


『……使い方?』



やはり彼は自分が魔法を使えるということに気づいていなかった。



『話しづらいだろうから無理しないでいいの。少しずつでいいからあなたのことを教えて、ラフ』


『……うん』



それから今までの生い立ちはマグリットよりもひどいものだった。

なんと五歳までずっと家の地下牢に閉じ込められていたらしい。

誰も助けてはくれない。ただ食べ物を投げ入れるだけ。

だからラフはベルファイン王国の言葉を知らなかったのだ。



『……本当の名前はラファエルだと思う』


『ラファエル?』


『うん……そう呼ばれていた気がする』



ラファエルから話を聞いたマグリットはその情報をすぐにローガンに伝える。

するとローガンはすぐにラファエルのことを調べてくれたようだ。

彼はガノングルフ辺境伯の隣、シナルード伯爵家出身の子どもで五歳の時に病死とされていたそうだ。


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