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何着か服が置いてあったので品のいいワンピースに袖を通してエプロンをつけてから、洗濯のためにシーツを持って外に出る。



「よければイザックさんの部屋のシーツや溜まった洗濯物があれば持ってきてください!」


「俺の……?」


「こんなにいい天気なんですから。今日は洗濯日和ですよ!」


「ああ、わかった」



頷いたイザックはマグリットが隠れてしまうほどの洗濯物を持ってきた。

やはり洗濯や料理はまったくできていないようだ。

井戸から水を汲んで石鹸と洗濯板で洗濯物を一つ一つ手洗いしていく。


イザックには水を運ぶのを手伝ってもらった。

彼は初めは戸惑っていたものの、黙々と井戸とマグリットがいる場所を往復している。

錆びた物干し竿を綺麗にしてからシーツを干していく。

マグリットは大量の洗濯物と戦って、いい汗をかいたと額を拭う。


水分補給をしてから昼食を作るかとイザックに厨房に案内してもらおうとするが、何故か浮かない表情で視線を逸らしてしまう。


マグリットの圧に屈したのか、渋々厨房へと案内してもらう。

キッチンには積み上がった汚れた皿にゴミも仕分けされておらず、小さな虫がたくさん飛んでおりプーンと嫌な音が耳に届く。



「こ、これは……!?」


「……すまない」



イザックの申し訳なさそうな声を聞きながら、マグリットは口をあんぐりと開けていた。

マグリットはすぐに腕まくりをしてイザックの方を見る。



「大丈夫ですよ!イザックさん」


「……え?」


「汚れたら綺麗にすればいいんですから。また手伝ってくれますか?」


「い、いいのか?」


「はい、もちろんですよ?」



料理をする前にまずはキッチンを綺麗にしなければと、マグリットは腕まくりをする。

イザックと共にゴミを掃除して袋に詰めてから水を運んでカップや皿を洗っていく。

料理した形跡はほとんどなく野菜の皮やかろうじて何かを焼いた焦げたフライパンなどが転がっていた。


(本当に料理人や侍女はいないのね……)


マグリットは一通りゴミを綺麗にしたあとに食糧庫を覗くが空っぽで何も入っていない。



「イザックさん、買い物に行きたいのですが案内していただけますか?」


「……!?」


「まだ道も覚えてないですし……それにお腹がすきましたよね?」


「…………まぁ」



イザックの歯切れの悪い返事を聞きながらも、そばにあった焦茶色のカゴを掴む。

しかし買い物をするにはお金がないと気づくが、まるで催促しているように思われたかもしれないとハッとする。


(も、もしかして図々しいと思われたかもしれないわ。ズカズカと屋敷を綺麗にしてお腹が空いたからって買い物にいこうだなんて)


改めて自分の行動を思い返してみると、非常識だったのではないだろうか。

興奮して突っ走ってしまうのは昔からの悪い癖だ。

マグリットが反省して、イザックになんて謝ろうかと考えていた時だった。


イザックは背を向けてどこかに行ってしまう。

折角、働き口が見つかったのにクビになってしまうかもしれない。

諦めたくないマグリットが良い言い訳がないか考えを巡らせていた時だった。



「お金ならあるが、買い物にならどのくらい持っていけばいい?」



イザックが持ってきたのは麻袋に入っているお金だった。

それも両手に四袋も持っている。

イザックはそれをマグリットの手のひらに乗せたのだが、あまりの重さに手のひらがガクンと下がる。


まさかと思いイザックから受け取った麻袋をテーブルに置いて中を確認してみると、中にぎっしりと詰まっていたのは金貨だった。

ネファーシャル子爵家に住んでいた時だって、触れたことはないし、こんな量の金貨は見たことがない。



「あ、あの……これ」


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