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しかしイザックと友人になり、自身が魔法研究所に一緒に出入りするうちに前魔法研究所の所長と出会い、その能力を見出されることになる。
『これは君にしかできない特別な仕事になるはずだ!』
その日をきっかけにローガンの人生はガラリと変わったそうだ。
「そして僕はクソ親父を踏み潰して、ここまで成り上がったってわけだ。やられたことはそのままやり返す主義なんだよね〜」
ローガンの真っ黒な笑みを見つめながら、マグリットはそれ以上何も聞くことができなかった。
イザックが「相変わらずだな」と隣で呟く。
とにかくローガンはよく喋った。
マグリットもよく話す方だ。
話題は尽きることなく、相槌を打つイザックを挟んでお喋りは続く。
話題は失った醤油のことへ。
マグリットはローガンに醤油が食べられなくなったことを伝える。
味噌に続いて、醤油の完成を楽しみにしてくれていたローガンががっかりした表情だ。
「あと数カ月で醤油作りに適した時期になりますから」
「なら完成はまた一年後……? 嘘だろう?」
「気長に待っていてください。けれど、その代わりに新しい食材が見つかったんです!」
「それはどんなものなんだ?」
「白くて硬くてパサパサしているんですけど、熱を加えると色々な形に変化する万能食材なんですよ!」
マグリットは王都に行っている間にミアとオリバーに、市場で餅の出所を調べてもらっている。
今回はミアがいるため、オリバーと共に情報を得てくれているだろう。
イザックも地図をもらってきてくれたことで、その場所がわかればいいと思っていた。
「へぇ……! それは楽しみだね」
「ですが本当の目的はそちらではなく、似たようなものからできあがるものなんです! もしかしたらガノングルフ辺境伯領で育てている可能性があるかもで、お餅の原料のもち米が手に入ってお米に似たものがもしも手に入ったら! わたしが生まれてからずっと追い求めていた食材が揃うかもしれないんですよ!? ご飯に焼き魚、庭山さんの卵で卵焼きを作るんです。それなら海藻のお出汁やお野菜をいっぱい使った味噌……一年後に出来上がった醤油は卵焼きにかけても焼き魚にかけてもおいしいですし、煮物が作れるようになったら、また懐かしい味に……! もちろん餅にだって合いますから!」
「「…………」」
マグリットの頭には和食の定食が思い浮かべていた。
二人は喋り続けるマグリットを眺めていた。
「ねぇイザック……僕もこんな感じなのかな?」
「ああ、魔法を語らせるとこうなるな」
「……だよねぇ」
マグリットの熱い日本食語りは、ガノングルフ辺境伯領に到着するまで続いたのだった。
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