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マグリットは話しかけやすそうな令嬢を見つけては声を掛けていた。

やはりマグリットのように婚約者がいるのに参加している令嬢も少なくなく、その人たちの輪に入れてもらうことに成功。


前世含めて、色々な人たちと関わってきたおかげでコミュニケーションと人を見る目には自信がある。

声を掛けた令嬢たちは優しくて、マグリットのことも最初は警戒していたようだが、どんな人物かわかると心を開いてくれる。

とても有意義な時間を過ごしていた。



「マグリット様とお話してみたかったので、わたくし嬉しいですわ」


「わたしも嬉しいです!」


「ですが、マグリット様は元ネファーシャル子爵家のアデル様とは正反対ね」


「本当よね……彼女は確かに美しかったけど、ねぇ? マグリット様も大変だったでしょう?」


「はい、とても!」


「ウフフ、まぁ……!」



彼女たちは社交界に出ていた頃のアデルをよく知っているのだろう。

わがままな性格や美しく令息たちにちやほやされていたこともあり、令嬢たちにはあまり好かれていなかったようだ。

マグリットがアデルの妹だということは、王家主催のパーティーに出席していた貴族たちならわかっているはずだ。


さりげなくアデルの話題を流していく。

流行りのお菓子や演劇、どこでドレスを仕立てているか。

婚約者とどこに出かけて何をしていたのかなど、マグリットには縁遠い話ではあるが、そこは話を合わせて浮かないように相槌を打つ。

気持ちよく会話してもらうこと、それを無意識にできてしまう自分が恐ろしい。


しかし普段から好き放題している影響が出てしまう。

にこやかな笑みと正しい姿勢をキープするのは辛すぎる。

腹部を締め付けるコルセットのせいで、テーブルに並べられたお菓子をまったく楽しめないのは残念である。


(二、三個食べただけで苦しい……! こんなに美味しいのに)


だけど、城のシェフたちが作ってくれる料理はどれも絶品だ。

少し時間を空けて、また一口食べるがやはりお腹が苦しい。


(……でも美味しい。この野菜はこんな調理もできるのね。今度味噌炒めにしてみましょう)


マグリットの目や口の筋肉が痙攣してきた頃、王妃は何十人もの令嬢と次々と会話している。

彼女が涼しい顔をしているのを見て、マグリットは感動すると共にまだまだ頑張らなければと気合いを入れ直す。


お茶会が後半に差し掛かった後、じっとりと視線を感じていた。

さりげなく誰なのかと確認すると、それはフランソワーズだった。

大人びたワインレッドのドレス、髪もきっちりと結えていて隙がない。

先日の一件があったため、こちらからはさすがに話しかけづらい。


会場の端にいる辺り、ギルバートの婚約者になることには消極的に見える。

やはりフランソワーズはギルバートの婚約者になりたいとは思っていないのだろう。


そうしてマグリットはお茶会を再び楽しもうとしようとしたのだが……。


(フ、フランソワーズ様に明らかに見られている……!)


マグリットがどこに行っても、フランソワーズは明らかに目で追われているのがわかる。

じっとりとした視線に焦りを感じていた。

先ほどからテーブルに並べられたお菓子が食べづらい。

話しかけてくるわけでもなく、柱の影から観察されるように覗かれているではないか。


(フランソワーズ様、普段からそうなのかしら)


マグリットは近くにいた令嬢にフランソワーズのことを問いかけてみることにした。



「あの、フランソワーズ様について知りたいのですが……」


「フランソワーズ様……ああ、メル侯爵家の?」


「はい、そうです。どんな方なのでしょうか」



他の令嬢たちの方がフランソワーズのことをよく知っているだろうと思っていたのだが、令嬢たちから返ってきたのは信じられない言葉だった。


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